第19話 馬車が通る道の安全確保
数日後、エオルが商品を仕入れに取引先のいる村に向かうと聞いた俺は、馬車の荷台に乗って同行する事にした。
俺が馬達の代わりに目的地の村まで直接ワープして、ポーチに商品の詰まった木箱を詰めて持ち帰る方法を取らなかったのには、ある理由がある。
それは、最近のモンスター達の異変が気掛かりだからである。以前のクラッシュボアの事件の事もあるので、普段エオルが利用している道の安全が保証されてなければ、安心して外に送り出せない。
「むぅー、見た感じ異変は起きて無さそうだな」
「やっぱり、なにかモンスター達に異変が起きていると疑っているんですね」
「だって、あの後にクラッシュボア達の住んでいる場所を見に行ったけれど、普段と何も変わってなかったんだぜ?おかしいだろ。住処を追われたわけじゃないのに王都に向かうなんてさ」
昼休みの間にワープして少し調査をしたが、特に何も異常は見られなかった。
「生態系が変わった訳では無さそうですもんね。それに、なぜ、王都だったんでしょう?それに、リーダーを倒したら他のモンスターは大人しくなったというのも変な話です。まるで何かに操られていたみたいじゃないですか?」
「そうなんだよ。そもそも、気性の荒いクラッシュボア達があんなに団体行動していたのがおかしいよな。俺が思うに、「何者かが強い個体を洗脳して周りのモンスターを操ってたんじゃないか?」というのが、いかにもゲーム的でよくあるパターンだしあり得そうなんだけど」
洗脳する魔法や魔道具なんてゲームをやりこんだ俺ですら知らないが、何かが原因だった事には違いない。
「えぇ。ですが、凶暴なモンスターを手懐けて命令できる人なんて知りません。不思議な魔道具を使っていたとしたらその限りではありませんが……」
「アイテムに詳しい俺とエオルが知らないくらいだし、遠くから来たヤツの仕業かもな」
その時、草むらがガサガサと揺れたのでモンスターかどうか警戒する。
「何者だ……?」
見ると、スライムがポヨンッと跳ねながら飛び出してきた。
「何だ、ただのスライムか……」
「道の真ん中で止まっちゃいましたね。このままだと通れませんし……、バンライ、当てないように追い払って」
二頭の馬のうち一頭が、頭から放った雷をスライムの横に飛ばして驚かして森の方へと追い払った。
「その馬、バンライって名前なんだ」
「センキャクとバンライです。遠くの国で商売繁盛を意味する言葉から取りました」
「千客万来からか。……なんかエオルらしいや」
そして、特に何も起きる事がなく目的地に到着した。
やって来たのは魔道具作りが盛んな、スービエ村。 ここが普段エオルが商品を仕入れている場所との事。
村の大きさはそこまで広くないが、森の中にあるので、生えている薬草を取ってきて加工する作業がスムーズに行えている。
「へー、ゲームじゃ、カットされたのかこんな村なかったなー。ポーションの作り方ってどうなってるんだろう」
歩いていると、煙突から煙が出ている工場らしき建物があったのでひっそりと覗いてみる。
「へー、薬草をすりおろして、出てきた汁を抽出。それを釜で煮て殺菌しているのか。熱くて大変そう」
「もっと近くで見ても構いませんぞ?」
「うわぁっ!」
夢中で工場を見ていると、いつのまにか、立派なヒゲが生えたおじいさんが後ろに立っていた。
「ホッホッホ、驚かせて申し訳ない」
「あ、フォイユさん!今日も魔道具を買いに来ました!」
「おや、エオル君!よく来たねー。この子は新人かい?」
「はい、最近入ったムクロンさんです」
「ど、どうも……」
この人がエオルの取引相手か。なんだ、とっても優しそうな人じゃないか。
「舐められない様に男装してる」と聞いて、警戒していたが、別の取引相手のことだろうか?
……それとも、単にエオルが男装が好きなだけなのか?
「お仕事お疲れ様です。商品の様子はどうですか?」
「その事なんだけどね……。実は、最近村の冒険者が森に入るのを怖がってしまっていてね。あまり材料が取れていないんだ」
「なぜですか?」
「最近、木や植物が根こそぎ無くなっているだよ。昨日まであったのに、翌日になると消えてなくなっているんだ。長年ここに住んでいるが、こんな事は初めてだよ」
なぜそんな事が……。きっと、新しい異変に違いない。
「フォイユさん。その原因を、私に調査させてください!」
「ええっ、危険そうだけど……大丈夫かい?」
「任せてください!こう見えて、戦いには自信がありますから!」
「そうか。気を付けて行くんだよー」
フォイユさんから事件の起きている場所を教えてもらい、俺とエオルは二人で森の中へと入っていった。




