第17話 正体を隠して共闘する
門に到着したので街の外を見ると、遠くからイノシシの大群が街の方に向かってきていた。
「何だあのモンスターは?」
「ここから離れた森に居る強力なモンスターだ。やけに気が立っているし、あの数の多さ……正直戦うのが怖いな」
門の付近に集まっている冒険者達は怯えてしまい、出ていけない様子だ。
「そういえば、アイツらってこの辺りには出ないモンスターだよな。なんでここにいるんだ?」
基本的にモンスターは自分の生息エリアの外に出ないはずなのに、こんなに遠くまで向かってくるなんて。
「やけに賢かったオークキングといい……ゲームではあり得ない事態が次々と起こっているな」
「キャー!マーレス様が向かっていったわ!かっこいいー!」
マーレスは既に街から離れた場所で待機し、文字通り猪突猛進しているクラッシュボア達を待ち構えていた。
ワープを使って店から直接そこに移動したらしい。
女性のファンが多く、黄色い声援が上がっていた。
「羨ましい……じゃなくて、いくらなんでも一人じゃ無理だろ!」
一度、人目に付きづらい路地裏に行き、周囲に誰も居ない事を確認して黒曜の鎧を装着していく。
「一週間ぶりに黒曜の騎士の出番だ。行くぜ、"飛行"!」
誰にもバレずに着替え終わったので王都から飛び立ち、空からクラッシュボアの群れに向かう。
「あっ、アレは噂の黒曜の騎士じゃないか?」
「うそ、本当だ……!」
一週間経ったのに黒曜の騎士の噂は残っていたらしく、俺が現れた事で民衆はざわついていた。
「おおー、大人気だ。初舞台だしカッコいいとこ見せないとな。くらえっ、"大爆弾"!」
群れに向かって投げ付けた爆弾は爆発し、直撃をくらった何体かは倒せた。オークと違ってタフなモンスターなので、かすった程度では倒しきれなかった。
「効かないか……。なら、もっと強い技を使うか」
「む。誰かはわからないが、ご協力に感謝する!」
マーレスが上を見上げて俺の存在を確認したあと、まだモンスターが近くまで来ていないのに剣を構え、大技を放つ体勢に入った。
「"高貴なる閃撃"!」
剣が暴風を纏っていき、振り降ろすと遠くにまで飛んでいく。着弾すると広範囲に渡って風の斬撃が次々にモンスターを襲った。
たった一撃で、かなり多くの敵を撃破した。
「スゲェ……!そうか、俺も剣を使って攻撃したら威力上がるのかな」
ただでさえ強い剣の一撃に、元から強い魔法を合わせるんだから弱くなるはずがない。
ゲームでも強かったが剣を振ると同時に魔法を唱えるのは難易度が高いので、この世界に来てからは試してなかったが、俺もやってみる。
「"猛る暴撃"!」
俺が放った一撃は、マーレスが倒したより多くのクラッシュボア達を抉るような斬撃で倒した。
その攻撃が当たったところだけ、まるで穴あけパンチを使われたように丸の形で削られる、というエゲツない攻撃だ。
「おー!リーチもあって範囲も広いし、結構強いぞこれ!」
「なかなかやるな。そのまま上から戦ってくれると助かる」
「わかったぞー!ん、遠くに一回り大きなヤツがいる。あれがヤツらのボス。クラッシュボアキングか」
子分とボスを区別するために、オークキングに倣ってそう命名した。
後方に居たので、もしかしてヤツが周りのイノシシを操っているのかもしれない。以前は先に子分のオーク達を全滅させてしまったので、今回は先にボスを倒してみて、どうなるか確かめる。
「子分のクラッシュボア達を頼む!俺は大将の首を取りにいく!」
「なにっ、コイツらを全部オレが倒さないといけないのか?」
「マーレスなら行ける行ける。頑張れよー!」
「あっ、おい待て貴様!……仕方ない、"高貴なる閃撃"!」
もしボスを倒しても子分が止まらない場合も、マーレスがなんとかしてくれるだろう。多分。
ボスに「なぜ近くの村じゃなくてわざわざ王都まで走って来たのか」、という理由を聞けたらいいのだが、残念ながら話は通じないので倒すしかない。
迫り来るクラッシュボアキングの前に着地して、右腕を真っ直ぐに伸ばして魔法を放つ。
「よし、やるぞ……!"地獄の業火"!」
「ブモオオオオ!」
クラッシュボアキングは炎に包まれて焼かれいき、火だるまになり、しばらく時間が経つと動きが止まった。
これで、完全に倒せた。
さて、周りの他のクラッシュボアの様子に変化はあるだろうか?
「「ブモオオオオ…………?」」
キングを倒したら大人しくなったようで、自分たちが来た方向に向かって歩き始めた。
「どうやら、キングが周りのクラッシュボアを操っていたみたいだ。でも、なんでキングは王都に向かってきたんだ。誰かに誘導されたのか?」
考えられる原因は二つあり、別のモンスターに住処を追われたか、何者かが王都の方向に行くように仕向けたかのどちらかだ。
いずれにせよ、黒幕の存在を感じずにはいられない。
「ふぅ、これで一件落着だな。マーレス、お疲れ様ー」
「どうしたんだ?奴ら、急に森に戻っていくぞ?」
「どうやら、コイツらを操ってるボスを倒せば他のモンスターは正気に戻るようだ」
「そうか……。旅人の方なのに、手伝ってもらってすまない。お礼をしたいのだが、名は何と言うんだ?」
お礼と言われても、お前からは絶対に貰いたくない。
「黒曜の騎士、そう呼んでくれ。では、俺はここで失礼する。"飛行"!」
「おい待て、貴様!」
「またな〜!」
長い時間接し過ぎて正体がバレたら大変なので、すぐに店に戻る事にした。
飛んで街の上空に来てワープ可能地点に入れたので、すぐにプレイヤーにある自宅へとワープして帰った。




