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イケメン剣士に一目惚れされた件

 異世界に来てから一週間が経った。その間の俺の生活は、午前、勉強。昼頃、お客さんが減った隙を見て店の奥から出て公衆浴場に入り、たまに散歩する。午後、帰宅してから再度勉強……この繰り返しだった。


学生だった頃を思い出すというか、ファンタジーとか女子になった事とか一つも関係無い日々が続いたが、ようやく一般教養がしっかりついた。


それと、果たして良いのかわからないが、女湯に入る事自体も次第に慣れてしまっている自分が居る。鼻血の回数も減ったし。


「……という訳で、エオル。明日は俺が店に立つよ」


営業時間が終了し、店内の清掃をしているエオルにそう伝えた。


「えっ、どうしてですか?」

「働き過ぎだ。常に店に立つか、商品を仕入れに馬車に乗って遠くの村に向かってるじゃないか。一十五歳の子供がやるにしてはハード過ぎる」

「で、でもっ」

「お兄さんに任せて、明日はゆっくり休め」

「むむむ……わかりました。給料はちゃんと渡しますし、お客様に聞かれた時の為に商品の特徴をちゃんと覚えてくださいね!」

「わ、わかったよ」


その後、エオルがスゴい熱量で商品を解説したのを覚えながら聞き、就寝した。


「ふわぁ〜!今は何時だ……?あぁ、良かった。ちゃんと開店時刻より早く起きれた」


朝食を食べて服を着替え、開店時刻になったら扉を開放する。


「ふぅ、昨日までと違ってずっと立ちっぱなしだし、気を引き締めていこう」


開店してしばらくすると、一人目のお客さんが入ってきた。


「いらっしゃいませー!」

「あれ、いつもの子じゃないのね?」

「新人店員のムクロンです」

「あら、そうなのね。あの子働き過ぎだと思ってたけど、人が増えたようで安心したわ」

「それはお……私も思います」


危なかった。エオル以外の人と話す時は一人称と女口調を意識しないといけないのを忘れてた。


「お会計頼むわね」

「はい。えーっと、こちらお釣りになります。ありがとうございましたー!」


始めのうちはわからなかった金貨の計算も、今ではへっちゃらだ。


「よし、ちゃんと出来たな。ちなみに何分経ったんだろう。……まだ全然時間経ってないし!」


もしかして、この仕事って大変なんじゃないか?以前、コンビニでバイトしていた事があるが、その時よりもやる事が少ないし……いや、よそう。考えると余計に時間の流れが遅く感じる。今は接客とレジの事だけを考えよう。


ガチャ


「いらっしゃいませー!」


あれ?このイケメン剣士の顔、どっかで見た事あるな。そうだ、ゲームのキャラだ!

確か、名前は……えーっと、そうそう。「マーレス」だ。男キャラに興味が無くて忘れていた。


そういやティエスカ編にこんな剣士居たなーって、感じでちょっとしか覚えていない。もう一人の登場人物が推しだからそっちに注目してたってのもあるけど……。


「えと……どうかされましたか?」


マーレスが俺の方を見たまま立ち止まっている。一体どうしたんだ?まさか、ゲームに存在する人に話しかけたらバグが発生したのか?


「入り口で立ち止まられると他のお客様のご迷惑になられますので……」

「あぁ、すまない。思わず見惚れてしまっていた」

「……え、今なんて?」

「どうしよう。オレは初めて会った君に恋をしてしまったようだ!オレの名前はマーレス。以後、お見知り置きを」

「……え、え。え?えええええ!!」


ふ、ふざけるな!気持ち悪い!なんで俺がこんな勘違いイケメンと付き合わなきゃならないんだ!えっ、冗談じゃないよな?……ダメだ。この目は多分ガチのヤツだ!ま、マジで言ってるのかコイツ?確かにイケメンだけど、俺は絶対に付き合いたくないからな!


「その、気持ちは嬉しいんですけど私は」

「君の名前は、なんて言うんだい?」

「(話聞けよ!)……ムクロンです」

「ムクロンさん……!素敵な名前だ!」

「それはドーモ。あの、冷やかしなら帰っていただけませんか?」

「そんな、冷やかしだなんて。そうだ!ここにはポーションを買いに来たんだった!……そうだな。せっかくだし、ここにある貴重そうな魔道具も買っていこうかな!」


コイツ、好きな女の前で良いところ見せようと露骨に高い物を買おうとしやがって……!


「良いですけど、それって魔法使い用ですよね?剣で戦うマーレスさんには必要無いと思うんですが」

「オレが剣士だって事を知ってくださっているんですね!でも、安心してください。これは、いずれ使うと思いますから!」


ダメだこりゃ。何言ってもポジティブに受け取るし、もはや無敵状態だ。


「はぁ……お買い上げありがとうございます。マタヨロシクオネガイシマスー」

「また今度会いに来るよ!ムクロンさん!」

「(二度と来るな!)あはは……どうも」


あー、アイツをなんとかして出禁に出来ないかな。でも、高価な魔道具を買ってった事を知ると、エオルは反対しそうだしな……はぁ。モンスターじゃなくて人間だから、力技でも何とか出来ないし厄介(やっかい)過ぎる……。しかも、善意でやってそうなところが余計にタチが悪い。


「大変だー!森の方から、クラッシュボアの群れが街に向かって来てるぞー!」


近くを通りかかった人がそう叫んでいた。


「なにっ、このままでは王都が危険だ。すぐに向かわなければ!じゃ、ムクロンさんもお気をつけて!」


……今のシリアスなセリフで思い出したけど、マーレスってゲームじゃ真面目だし正統派イケメンだった!それがなんで、あんなキザな態度を俺に取るんだ……?まさか、アイツって好きな人の前だとああなるのか?緊張するとかならわかるけど、むしろめっちゃ話しかけるタイプなんだ……。


「って、アイツの性格を分析してる場合じゃ無い!王都の危機が迫ってるんだった!」


俺はポーチを身につけ、店の鍵を閉めてから街の入り口へと走った。

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