第14話 異世界暮らし二日目スタート……?
「ふわ〜あ、よく寝たー。あー、仕事ダルいなー」
ベッドの上で大きな欠伸をしながら背伸びをした。
それにしても、変な夢を見た気がする。俺がアンリミテッド・フィールドの世界に入って女性になった夢だった。
あ、昨日でセービス終了したんだっけ。名残惜さのあまり、夢に見たのだろうか?
「ん……?ここはどこだ?俺の住んでるアパートじゃないな。」
何かがおかしい。一度ベッドから出て辺りを調べる。
なにかが胸に付いていて足元が見えない。……邪魔だし取るか。
「うわぁっ!?何だこれ、俺の体の一部なのか?触られた感触がある!?ね、念の為に服を脱いでどうなってるか見よう……うわっ!」
自分の胸におっぱいが付いてる。乳首もあって血管も薄く透けて見えてるし、本物にしか見えない。
「はぁー。何で俺、男なのにおっぱいがあるんだ。ううっ、トイレ行きたい。トイレトイレ……あっ、ここか」
トイレに入って下着を脱いだのだが、またしてもなにか普段と様子が違う。
「あれ?持てない。というか、アレが無い?むしろ、穴が開いてるような気が……。あっ、これも触られてる感じがある」
相棒が見当たらなかったが、トイレは無事にできたので流して部屋へと戻った。
「うーん、信じられないけど、この状況から考えるに、俺は女性になったんだな!」
俺はTSジャンルの漫画にいくつか触れてきているので瞬時にそう判断した。
「しかし、変な場所にいるし、会社に間に合うのか?とりあえず、職場に連絡しておこう。でも、寝て起きたら知らない場所に居て、しかも女性になってました!って言っても、信じてもらえないかな」
携帯はどこにあるのだろうと思って周囲を探すが、俺を拉致した犯人に取り上げられてしまったのか、全然見つからない。
「はぁー。連絡できないか。そもそも、ここは一体どこなんだ。外に出られるのか?」
扉を開けて別の部屋に進むと、広い部屋にたどり着いた。そして、そこにはいろいろと目覚えがある物が置いてあった。
「あ、全部ゲームで見たやつだ!スゴーい、このポーション本物かなー?ゴクゴクッ、うげー。独特な味。あと今体力満タンだから一つも飲んだ意味なかった。こっちは火傷直しに、凍傷治しか。まるで本物そっくりだなー」
どうやら、犯人はアンリミテッド・フィールド好きであるようだ。昨日の事は思い出せないけれど、これらのヒントから導き出される答えは一つ。
「昨日の夜にネットで知り合った人と「サ終したから思い出を語ろう会」みたいなのに参加したら、その相手が実はマッドサイエンティストで俺を女性の体にして監禁した」。これしか無い。
「おっ、ドアがある。閉まってそうだけど、一応開くか調べるか……おっ、開いた。なんだ、外に出られるじゃん。あ、でもパジャマで外に出るのはダメだな。ポーチから私服を取り出して着替えよう……よし、これで外に出られる」
テーブルの上に置いてあったポーチから服を取り出して私服に着替えた。
「ん?何で俺、こんな小さなポーチに着替えが入っていると思ったんだ?普通に考えたら入っているなんて思わないはずなのに」
大事な事を忘れている気がする。そういえば昨日、俺の側に敬語でツッコんでくる少年が居たような。
「おはようございまーす。ムクロンさん、起きてますか?開店の準備にやってきました。あれ、ポーションが一つ空になってるんですけど!」
「この声は……エオルか!」
エオルが元気に挨拶しながらプレイヤーまでやってきたので、昨日の事を完全に思い出した。
俺は昨日、ゲーム世界の中に入って男の子みたいな女の子を助けて、その子が経営している魔道具店に住む事になったんだった。
「あぁ、昨日の事は夢じゃなかったんだー!」
「あ、起きてたんですね!ポーションの事について何か知りません?」
「それは俺が寝ぼけて飲んだから、今からポーチから取り出して補充する。くっ、寝て起きたけど戻れてないじゃんか!」
完全に目が覚めた。一夜明けても帰れないって事は、俺はずっとこのままムクロンという女子として生きていくって事になる。
いよいよ、覚悟を決めるしかなくなった。
「このカバンの中に教科書が入っていますよ。勉強に役立ててくださいね。あれ、ムクロンさん、どうしたんですか?」
「いや、本当に帰れないんだなって思うと悲しくなって。本当にこの世界でずっと生きてかなくちゃならないんだなーってさ」
「一日経って、前の世界への想いが込み上げてきたんですね。僕だって、もしいきなり別の世界に一人で飛ばされたらとってもとっても不安になると思います。でも、僕はムクロンさんに寄り添いますよ」
「エオル!お前ってやつは……!」
出会ったばかりの俺に、こんなに優しく寄り添ってくれたので何だか涙が出てきた。未知なる世界でも、頼れる人が居るとこんなに心強いのか。
まだ異世界での暮らしも二日目。これからこの世界で生きていく為にも、今日は教科書を読んでしっかりと知識を頭に叩き込む。




