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異変の後処理

 トピエ団長が剣を鞘に収めると、巨大化したアラタを閉じ込めていた強力な圧力が解除されて、ザバァッ、とバケツをひっくり返したように大量の血とアラタだった肉塊が地面に落下した。どう見ても死んでいるが……しかし、まだ黒い煙が出ていない。

すると、肉塊が徐々に縮み始めて元の人間だった状態のアラタに戻った。アイツ、あんなにエゲツない攻撃をくらってもまだ生きているというのか?でも、戻ったという事は弱ってはいそうだが……。


「ぜぇ、ぜぇ……」


息も絶え絶えだが、目や体が元通りに再生してなんとか立ち上がったアラタ。


「なっ……!に、人間?」


トピエさんはオオカミ男の正体が人間である事に驚く。以前に異変の元凶は人である事は伝えたのだが、いざ直面するとどれほど心の準備はしていても驚くのは当然か。……それより、マオウグンの事を一切知らない周囲の人々の方がずっと強くショックを受けているだろう。


「人だって……?」

「本当だ!アイツが俺の妻を襲ったのか!」

「人がモンスターになるのってあり得るの?」


信じられない光景を目撃して民衆の頭が困惑と疑問でいっぱいになっている。異変の元凶が人間である事を公表したらパニックになるだろうと思って控えていたが、まさかこんな最悪な形でその事実が伝わってしまうなんて……!


「あ、あぁ……!手がぁ……!?」


すると、アラタの右手から黒い煙が出始めて次第に全身からところどころ同じ煙が出始めた。回復するのが精一杯で、肉体はすでに限界だったのだろう。あの煙が出始めたら、もはや消滅は免れない。


「そんな、俺はまだ……死にたくない!」


そんな悲痛な願いは誰にも届かず、アラタはたちまち全身が黒い煙になり消滅した。

その跡には顔を隠していた包帯と、俺とエオルの働く魔道具店から盗んだ魔道具だけが残った。……盗まれた魔道具はトピエさんの魔法のせいでボロボロに破壊されていたが。


「今のは……?あ、ワープ可能になったので、速やかに応援を頼む」


トピエさんはショックを受けつつもすぐに警備団長としての自覚を取り戻して仲間と連絡を取り、大怪我を負った人々を救う為に動き始めた。到着した仲間と共にみんなを全回復させていくが、対応が早かったのが功を奏したよつで、どうやらみんな奇跡的に死んでいないようだ。……俺の失敗のせいで罪の無い人が死ななくて本当に良かった。


あ、そういえば服が血だらけなんだった。今はもう傷は治っているけど、この格好は目立つし一度帰って着替えるかー。警備団員に見つかったら説明とかいろいろ面倒だし、そもそもこの服ももはや着れる状態じゃないしな。民衆はみんな慌てているし、バレないだろうからこっそりワープして部屋に戻ろう。


シュンッ


そうして部屋に帰ってきたが、店の方が何か静かな気がする。あんな騒ぎがあったからお客様がみんな見に行ったのかな?


「誰もいない……?おーい、エオルー!……あれ?居ないな」


声を出してエオルを探すが、勤務中なはずなのに姿が見当たらない。不安になったので部屋から移動して店内を探したが、この店の中には居なかった。


「どこに行ったんだ……?もしかして、騒ぎのあった方に向かったのかな?」


俺の事が心配で探しに行ったのかしれない。まぁ俺も現場の様子が気になるから着替えてまたトピエさん達のところに戻ろっと……ん?


脱ごうとした時に気が付いたのだが、服の破れて開いた穴が勝手に塞がっていた!何もしていないのに、勝手に治ったのである。そう、まるで黒曜の鎧が自己修復するのと同じで。


「なんだこれ……?」


しばらくするとベッタリ付いていた血もだんだんと色が薄くなっていき、最終的には透明になって消えてシミや後は一つも残らずに元通り、まるで新品かのように綺麗になった。


「あぁ、そういえばこの服を着てエイダと戦って結構血が出たのに脱いだら服はキレイだったな」


そんな事を気にしている場合じゃ無さすぎて今まで疑問に思ってこなかったけど、どうやら私服にも自己修復機能が搭載されていたらしい。これなら、もし戦いで鎧を貫通して刺されたりしても勝手に治ってくれる。


「直るなら着替えの必要も無いしラッキーだな。早速戻ってエオル探しにいこっと!」


わざわざ帰ってきたけれど、結局は着替えずに同じ格好でさっきまで居た通りに戻ろう。今度は流石に人に見られたく無いので足で走って向かう。その時に店の入り口のドアを確認したのだが、鍵が掛かっていたのでエオルが戸締りをしてから出て行ったのだろう。

そして、店を後にして走って現場に向かう途中で、キョロキョロと辺りを見渡して何かを探しているエオルを発見した。


「お、ここに居たのか」

「ムクロンさん……!無事だったんですね!」


どうやら、エオルは戻ってこない俺の事を探してくれていたらしい。アラタと結構長い時間話していたので心配になったのだろう。それと、近くで事件が発生したので俺が失敗してどこかで倒れてる可能性も考えてくれていたようだ。


「一体何があったんですか?」

「指名手配の男はマオウグンでいろいろ聞き出したんだが、怪しまれて攻撃されて逃げられた」

「えっ、大丈夫でしたか?」

「めっちゃ痛かったけど治ったから大丈夫。あと、情報は結構聞けたぞ」

「おおっ……!ナイスです!」


最終的に失敗したとはいえ、マオウグンに関する重要な情報は知る事ができた。エオルが驚き、賞賛してくれた事で、これでも充分に上手くやれた方だという事を再確認できた。アラタが何かしらの危険な兵器を完成させる一歩手前だったのを防いだのも良かった。なぜなら、完成していたらより多くの人が傷付き命を落としていそうだったから。

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