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街に現れた怪物と死

 飛んで行った"逃さなぬ雷(チェイス・ボルト)"は逃げたアラタを追うようにして狭い隙間を通っていった。もちろんそこは人間が到底入れない場所なので出口まで回り込むしかない。


「頼む。間に合ってくれ……!」


この隙間の出口は一つしかないので、路地裏から出て全力疾走でそこに向かう。着ている服が血だらけなので通行人に驚かれたが、あいにく彼らの親切を受け取っている場合では無い。あれほど鋭い爪を持つ人間が街で暴れ出したら、どれだけの人が犠牲になるかわからないので何としても止めなくては。


バチバチッ!


「クゥーン!」


俺が回り込んで通りに出たその時、ちょうど道の真ん中でアラタが変身したオオカミが雷に撃たれた音がした。くっ、間に合わなかったか……!


「いてぇ!なんだ、一体どこからくらった!?」


マオウグンといえど、子供のオオカミという状態では耐久度が下がっていたのか、雷に撃たれたらすぐに人間の形態に戻ってしまっていた。オオカミがいきなり人間に変身したので、偶然それを目撃した周りの人々はとても驚いている。


「えっ。この人、犬から人にならなかった……?」

「なんだ?なにかあったのか?」


これはマズイ……!興味を持った野次馬がどんどんアラタの周りに集まっている。「ダメだ、ソイツはとても危険な存在だから近寄ってはいけない!」と言うべきなのはわかっているが、これを言ったら正体がバレてしまう気がしてなかなか言えない……!


「どいつだ……?誰が俺を狙ってきた?クソッ、やられる前にやるしかねぇ……!」


離れた位置にいるので俺には気付いていないようだが、近くに集まってきた人々に対して疑心暗鬼を強めている。そして、決意を固めたような発言を最後にした。これはまさか……!


「スゥー、ハァー」


アラタが深呼吸して集中し始める。ヤバい、絶対に本気を出すモードに入った!しかし、攻撃しようにもアラタの周りに人が多くて迂闊に攻撃できない。

すると、アラタの体が先ほどの変身とは打って変わって逆に体が徐々に大きく変化し始めた。可愛らしい子供のオオカミとは大違いの、身長が三メートルは超えている二足歩行で手には両手には鋭い爪、二足歩行で歩き全身に毛が生えた……巨大なオオカミ男に変貌した!


「ワオオオオオオン!!」


突如として街中に出現した怪物を唖然として腰を抜かすか、はたまた咄嗟に逃げるかしかできない人々達の前で、まるで悲劇の始まりを告げる合図のように大きな雄叫びをあげるアラタ。

そして次の瞬間、ヤツは見境なく周囲の人間を巨大な爪で襲い始めた!


「キャアアアアアア!」

「うわあああ!?」


俺がくらったのよりも更に長く深い一撃が次々と街の人々を襲っていき、辺りは血や肉が飛び散る地獄絵図と化していった。


「はぁ、はぁ、はぁ……!」


そんな、俺のせいでみんな死んでいく……。俺が失敗したせいで……!そう考えると、呼吸のリズムが崩れて息苦しくなってきた。は、はやく止めなきゃならないのに、パニックになって動けない!う、動け。動いてアイツを止めないと……!


「"重圧(プレッシャー)"!」


そう魔法を唱える声が響いた後、暴れていたアラタの動きが、まるで上から押さえつけられたかのように停止した。一体誰の仕業だろう?と思い、声がした上の方を見上げる。するとそこには、剣を振った後の姿勢で空中に立っているトピエさんの姿があった。良かった、来てくれたんだ……!


「大丈夫か?」


トピエさんは大怪我を負った人たちに駆け寄ってヒールを唱えて治していく。「頼むから全員無事で居ますように……」と心の中で願ったが、どうやら祈りは通じたようで、怪我を負った全員がなんとか死なずに一命を取り留めた。本当に良かった。みんな生きていて……!

しかし、ケガ人が多く一人一人の傷も深いので全員が完治した訳ではなく、あくまで応急処置という感じだった。次に、トピエさんは何か小さな物を持って口に近付けて話し始める。


「ケガ人が多い。四十九ブロックに応援を頼む。自然の魔力が乱れているらしくワープが使えないので、付近にいる者は速やかに向かってくれ」


おそらく、門番が使っていたのと同じ「ボイスシェル」を使っているのだろう。それを用いてトランシーバーで報告するよう、部下に集まるように伝えたのだと思われる。しかし、本性を表したマオウグンが近くにいる為ワープは使えないので、しばらくはトピエさんが一人で戦うしかない。

……この際、もはや仕方ないか。正体がバレてでも、加勢しに行かなくてはならないよな。何よりも人命が優先だ。「男として生きたい」だなんてくだらないプライドのせいで他の人が死んでしまったら俺はきっと自分が許せなくなる。


「もう、やるしかないか……!」


俺は重力に押し潰されて拘束されているアラタに向けて右腕を伸ばして技を撃ち込む準備をする。今なら周りに人も居ないし、範囲を絞ればアラタだけに大ダメージを与える事ができるはずだ。よし、トピエさんやケガ人に当たらないよう、しっかり範囲を絞って……。ん?

トピエさんが剣を構えてから集中し始めた。トピエさんも俺と同じで、なにか大技を撃つつもりなのだろうか?巻き込んではいけないので、俺が技を撃つのは一旦やめておこう。


トピエさんが剣を振って何かの模様を描くと、アラタの体が次第に握りつぶされるようにして横からもギュッと圧迫されだした。……いや、違う。少し浮き始めたので下からも圧を受けているようだ。なんだ?あそこ、肉が圧迫されて直角になっているぞ?もしかしてこの技、上、下、前、後、左、右と六方向から激しい圧をかけて圧縮……いや、圧殺する技なのか!?


「"死の正方形(キューブ・プレス)"」


技をトピエさんが唱え切ると、囚われたアラタが重力に押し潰されて正四角形のようになり、圧に耐えきれなくなった肌の表面は割れて血が漏れ出し、眼球も飛び出すなどかなりグロテスクな処刑が行われた。捕まったら、俺もあんな風な処刑方法をされてたのかな?……嫌だ。あんな殺され方だけは絶対にされたくない!

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