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第10話 ムクロン VS オークの群れ

「雑魚に構っているヒマはない!」


 こっちに向かって来ているオーク達の群れの方に、右腕を伸ばして魔法を唱える。

 所詮は数だけ多い雑魚の集まりだ。一撃で全員吹き飛ばしてやろう。


「"大爆弾(ビッグボム)"!」


 大きな爆弾を作り出して、ブンッとぶん投げてオーク達の群れにぶつける。すると、轟音と共に大爆発し、オーク達は全員まとめて粉々に吹き飛ばされた。


「うわぁ!?」


 ゲームと違って、モンスターの肉片が飛び散ったのがグロテスクだったので引いてしまった。

 ――だが、これで残るはオークキング一体のみ。


「……!?」


 仲間が一瞬で全滅し、驚いて思わず口を開けるオークキング。その隙に、エオルはおもむろに右手をギュッと握りしめた。

 エオルとオークキングはたちまち煙に包まれる。


「うわっ、一体何の煙だ?」


 何が起きたのかわからずに警戒しながら見ていると、オークキングがナイフを地面にポトリと落とした。


「プハーッ!ムクロンさん、今がチャンスです!」


 オークキングの拘束から脱出したエオルが俺に駆け寄ってきた。煙の中では息を止めていたようで、最初に大きく息を吐きだしていた。


「エオル、何をやったんだ?」

「僕が隠し持っていた痺れ粉を使いました。痺れてる今のうちにやってください!」


 エオル、ちゃんと護身用のアイテムを隠し持っていたのか。


「なら、早速魔法を……ん?」


 そんなに時間が経っていないのに、オークキングが麻痺から回復してしまった。

 ゲームで麻痺になった際はもっと長い時間痺れているはずなのに、その半分にも満たない時間で麻痺が解けた。


「ウソッ、並のモンスターなら当分動けないはずなのに!?」


 痺れ粉の威力を知っているエオルも素で驚いているので、想定していた時間よりもかなり早く治ったようだ。

 ……何か妙だ。


 そして、オークキングは仕返しとばかりに素早くパチンコを取り出す。


「あっ!素顔だからトウガラシ玉は絶対くらいたくない!」


 くらったら目も鼻も終わってしまうので、急いでオークキングに向けて右腕の標準を合わせる。


「"水の斬撃(アクアカッター)"!」


 放たれた水の斬撃は真っ直ぐ飛んでいき、オークキングを縦に真っ二つにした。

 血溜まりができて、完全に沈黙したので確実に死んだ。


 ふぅ、色々とイレギュラーが起きてヒヤヒヤしたが、なんとか無事に事態片付いた。


「勝った!エオル、大丈夫だったか?オーク達に何かされたか?」


 エオルは地面に脱ぎ捨ててあったズボンを拾って履き直す。


「大丈夫です。直接手は出されませんでした。最初の格好でポーズをいくつかとらされた後、次はズボンを脱いでからも同じ事をしました」

「グラビアの撮影かよ!」


 俺の推測だが、着衣フェチ、半裸フェチのオーク達の為にポーズをとらされたんだろう。

 ……オークにも性癖とかあるのかは知らないが。


「ムクロンさん、ありがとうございました!護身用の痺れ粉は至近距離でしか使えないので、集団相手には厳しいんです」

「流石は商人。ちゃんと自衛の手段は持ってたんだな」

「用心するに越したことは無いですから!」


 お互いの活躍を褒め合うこの感じ、なんだか懐かしい。

 サービス開始してすぐに一緒に始めた友人達は、次第にそれぞれ別ゲーに移動したり、忙しくなって引退したりしていなくなったから、本当に久々だ。


 冒険を通じて仲が深まったし、誰かとの冒険も偶には良い物だ。

 ――これからも、たまにエオルと冒険しよう。


「他に襲われてた女性は居ないようだな」


 広くはない洞窟なので一目で全体が見えたが、俺達以外に人の姿は見当たらなかった。

 どうやら、捕まってオーク達にエロい目に遭わされた女性は居ないようだ。


「じゃあ帰るか?オークキングのドロップアイテムくらいしか収穫ないけど」


 大きなスピードイーグルの丸焼きはとても持ち帰れないし、爆発でオーク達の持っている武器は壊れてしまったので持ち帰れるのはオークキングの持っていたパチンコとナイフくらいだ。


「そうですね!僕も一日に二度も危機に(おちい)ったので、とても疲れました」

「だなー。俺も異世界に来て早々、運動してばかりで疲れた。あと、トイレしたくなったから早く帰ろう」


 さっきオレンジジュースを飲んだのと、驚きの連続だったせいか小便がしたくなってきた。

 「女子はトイレの限界が近い」という話を聞いた事があるので早めに向かう。


「でも、ここじゃワープが使えない気がする」


 別に「ここではワープは使えません」と表示された訳じゃないが、第六感がこの場所ではワープを使えないと言っている。

 ゲームでいうところの、ワープ可能エリアかどうかが直感で判断できるようだ。


「確か、ワープは自然の魔力が安定している場所じゃないと使えなかったはずです」

「そうか、面倒だなぁ。でも、どこでもワープ使い放題だとヌルゲー過ぎるし仕方ないか」


 メタ的に考えると、ワープがどこでも使えると負けそうになったらいつでも拠点に帰れてしまう。それでは楽勝になるので制限があるのだろう。


 ――という訳で、俺達二人は第六感を頼りにワープが使える場所へと進んで到着した。

 戦闘エリアでも、魔力が安定している場所ならワープが使えるようだ。


「帰りも無事に帰れるか不安だな。なにせ、街の中はワープ使い放題なんだろう?」

「基本的に街は魔力が安定している所にありますからね」


 もしワープに失敗して男湯の中にでもワープしたらおしまいだ。集中してワープ先をしっかりとイメージして定めておかなければ。


「異世界転移した時に一回成功したし、俺の拠点にワープしよう」

「どこに行くんですか?」

「ティエスカにあるアパートの一室。部屋ごと異世界転移したっぽいから、置いてある物は全部同じだった」

「住む場所があるのはラッキーでしたね!」

「よし、トイレ行きたいし早速拠点にワープだ!」


 俺は再びエオルとピッタリと体をくっつけてからワープを使用して、ゲームよりも圧倒的にリアルに描写された戦いを繰り広げた森を後にした。

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