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香に揺れ 認めたくとも 認めえず 父のまなざし 芯を見つける

沈香の煙が立ちのぼった


沈香か…

深い

だが、若い娘が選ぶには重すぎる


沈香は覚悟を示すには十分だが、同時に「背負いすぎ」をも意味する


この娘…己の過去を、静かに抱えておるな


次に白檀が重なる

沈香の深さに、柔らかな温かさが溶けていく


白檀…

優しさか

沈香の重さを和らげるとは、なかなかの手並みよ


優しさは美徳だが、正妻には時に弱さにもなる


沈黙のまま、香の変化を見つめ続けた


娘は次に、指先で香を砕いて、香炉に落とした

その瞬間、清涼がふっと走り、空気が澄む


これは…薄い…


だが、悪くはない

強く主張しない

確かに空気を変える力がある


澄んだ風のような…娘よ


最後に、冬を越えて咲く花の気配が、沈香の奥に細く立ち上る


胸が、わずかに揺れた


…梅、か

凛として、折れぬ花


沈香の深さ

白檀の温かさ

清涼の透明

梅の凛とした余韻


それらが重なり、部屋の空気を静かに満たしていく


暁が選んだ理由が、わからぬでもない


この娘、強くはない

だが、折れぬ


沈香のように深く、白檀のように温かく、梅のように凛として…


暁の傍に立つならば、悪くはない


だが――


娘を見据え、静かに口を開く


「そなたの香…

正妻の器には、到底及ばぬ」

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