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君の影 薄明照らし 道となる 並びて歩む 未来を願う 1

暁が帰った後、新たな香を焚く

心を落ち着かせ、夜風にあたりながら、細く伸びる煙を見つめた


『君が迷う時は道を照らす灯りになりたい

君が泣く時は、そっと寄り添う風でありたい

君が笑う時は…その光を隣で受け止めたい』


暁の気持ちは嬉しい


『でも、俺は…

俺には…家の務めがある

右大臣家の子として生まれた以上、背負わなければならないものがある』


暁は、原典には存在しない人物ではあるけど

暁に立場があるのもわかる


『君が望むなら…俺は、ずっと君の傍にいる』


だから、あの言い方も…

暁なりの…私を想ってくれる精一杯なんだって事も…わかる


『未来を約束できる立場じゃない

君を縛るような言葉も言えない

君を政治に巻き込みたくもない』


『願いでしかない

君に応えてほしいとも言えない

ただ…これが、俺の正直な気持ちで』


暁なりの優しさだと言うのが、わかるから…


でも

私は、原典の夕顔ではない

暗闇の中をずっと歩いて来たし、歩いても行ける…


だから、これで…


ふと右近が、そっと几帳の外から声をかけてくる


「あの、夕顔様…」


その声は戸惑った様子

思わず顔を上げる


「どうしたの?」


「暁様が…またお見えです」


え…?


さっき別れたばかりなのに…

こんな夜更けに…また…


右近は続けた


「急ぎのご様子で…

すぐにお通ししてもよろしいでしょうか」


私は息を整え、静かに頷いた


「ええ…わかったわ」


几帳の向こうで、右近の足音が下がる

そのあと、廊下を踏む音が近づいてくる


その音だけで、胸が跳ねた


暁の足音だ


几帳がそっと揺れ、灯りの向こうに暁の影が現れた


「夕顔…」


息が少し乱れているよう

直ぐに几帳を上げると、暁は私の前へ歩み寄り、膝をついた

まっすぐ私を見つめる


その姿と顔を見た瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられる


暁は静かに口を開いた


「夕顔、俺は…」


その声は震えている


「曖昧な言葉を言って、夕顔を惑わせた

すまない」


胸がチクッと痛む


「俺は…君を、巻き込むことになる

俺の家の問題に、政治に

望まぬ場所へ連れていくことになるかもしれない

でも…」


暁の真剣な顔に、目を逸らせない


「それでも、君が…俺の隣にいてくれるなら…」


暁は息を吸い、震えたような声で、でも、はっきりと言った


「夕顔

俺の正妻になってほしい

俺の…傍にいてほしいんだ」


世界が一瞬、静止したように感じた


夜の風の音も、灯りの揺れも、自分の呼吸の音さえも消えて――

ただ、暁の言葉だけが胸に響いた


そして――

気づけば、涙が頬を伝っていた


「夕顔…」


暁の瞳が揺れる

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