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恋捨てて 生きると決めし この胸に 揺らぎを許さぬ 春の風過ぐ
暁の背が見えなくなるまで、私はただ立ち尽くしていた
『夕顔
君が、死を怖がっているのなら…
俺は…これ以上、近づけない』
『夕顔を追い詰めるつもりは…ない
だから…今日は帰る』
『夕顔が、怖さを感じなくなる日が来るなら…
その時は…また話をさせてほしい』
胸の奥が、ひどく痛い
痛いけれど、零れていた涙を袖で乱暴に拭った
「これでいい…
これで、いいんだ」
暁を好きにならなければ、私は死なない
誰かの恨みや嫉妬に巻き込まれて、命を落とすこともない
暁を好きにならなければ、私は生きられる
私は…生きたい
生きるって、決めたんだ
唇を噛みしめる
私は、誰も好きにならず、このまま生きていく
香を焚いて、静かに、平穏に…
それでいい
それがいいんだ
また零れてきた涙を、袖で拭う
ズキズキと痛む胸を無視して、覚悟を抱きしめた




