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心が揺れ動く話

「六架!おい!大丈夫か!?」


 え、大丈夫だよな?

 リミットはまだ来てないもんな?

 倒れるように眠っているけど、それは疲れと怠惰でそうなったって思っていいんだよな?


「おい、六架?」

「んぁ~?どうしたのゆーくん。そんな大声で呼ばなくても、私は私だよ~?」


 いつも通りの軽くて訳の分からない言葉で、僕と言葉を交わしてくれる。


「……焦ったぁ」

「あぇ?あぁそっか。私今家じゃないのか」

「家に帰らせられなくて悪かったな」

「そう思うなら早くここから出してよ~。退屈で仕方ないからさ」

「わかってるよ。っていうか、やっぱり退屈で寝ちゃってたんだな」

「うーん。それもあるんだけど、なんかお腹の辺りが痛くてさ。痛いなーって思ってたら寝ちゃっ」


 ゴホッ。


 六架が咳をする。

 寝て起きたばっかりだからのどの調子が悪いのかと思い、咳が止まるのを待つ。


 ただ、止まることはなく。

 咳と共に血が口から出てきた。

 純白の地面が暗めな赤で覆われ、次第に周りへと溶け込んでいく。


「……え?」


 理解ができない。

 分からない。


「うわぁ、すごい血が出た!なにこれ?」


 当の本人は陽気に呑気に、初めて雪を見た子供のようにはしゃいでいる。


【あぁ……これは一番なってほしくないパターンだったね。ルーレットで十以外のすべての数字にかけていたのに、ずっと十しか出ていないみたいな状態だよ。あ、どうも初めまして。生徒会長の途野理です】

「え、生徒会長!?初めて見た!私は心好六架!私はりっちゃんとか、むっちゃんとか好きな風に呼んでね。私も好きな風に呼ぶからさ!」

【じゃあここちゃんで良い?】

「うん、なんでもおっけーだよみっちゃん!」


 この緊急事態に、六架と途野さんはとんでもなく落ち着いてお気楽に話を続ける。

 こんな風に話しているような場面ではないはずなのに。

 途野さんがいう事には、最悪の状態なはずなのに。


【じゃあここちゃん。先に言っておくけど、このまま何も対処しなかったら多分夜明け前くらいには死んじゃうかな】

「あー、やっぱり?」

【うん。でも、もちろんこっちからもやれることを探してみるし、何もせずに死を待つようなことはしないから安心してね?】

「おっけぃ!まぁ、こんなにたくさんの人をここに連れてきてくれたから、ゆーくんはかなり努力してくれたんだね。ありがと」


 今日中に、夜明け前に死ぬ?

 後遺症が残らない程度に助けられるのですら猶予期間があと二日あるはずだったのに。


「え、あの、話について行けないんですけど。今ってどういう状態なんですか?」


 頭の整理ができずに何も理解できない中、片喰さんが質問をしてくれる。


【えーっとね。結論から行くと、この現状を作った犯人はここちゃんを生贄にしてクオンを作ろうとしている】

「……生贄?」


 無理やり言葉をひねり出す。

 自分でもか細くて情けない声が出ていることがわかる。


【うん。さっき優君には話したと思うけど、コトリバコには八段階あるって話をしたよね?で、なぜ八段階までかというと、それ以上の力のものを作ろうとすると、作っている術者自身がその呪いに耐えきれずに死んでしまうんだよ。だから、八段階まで】

「それは私も知ってますけど、でもクオンって」

【そう、クオン。数字の九に、怨念の怨で九怨くおん。それの危険度は九段階目、最上以上だよ】

「え、じゃあ。それなら、作れないんじゃないんですか?」

【いや、作らないのと作れないのは違うんだよ。術者たちは、自身が死ぬことを恐れてハッカイ以上を作ることはしなかった(・・・・・・・・・・)。ただ、術者が死ぬことを前提として作れば、それは完成させることができるんだよ】

「え、じゃあ」

【うん。まぁ、この状態を作り上げた犯人は、ここちゃんを殺すのを前提にクオンを作っているね】

「……」

「……」

「……」

【……】


 空洞音が耳に刺さる。

 冷えた空気感の中、服が体にじっとりと纏わりつく。


「まぁ、死ぬときは死ぬ時だよ。というか、死ぬ前に助けてくれるんでしょ?」

【もちろん。ここちゃんはこの学校の生徒だし、助けないわけがない】

「えへへ、ありがとね」

【まぁ、助けるためにはみんなの力を借りたいんだよね。ほら、優君。落ち込んでいると道も見えなくなるよ?】

「……」


 落ち込んでいたら下を見てるし、むしろ道が見えるんじゃないか?

 普段ならそんなことを言い返しただろうが、今の僕にはそんな軽口をたたくような気力は残っていない。


【それとも何だい?諦めちゃったのかい?】

「それは無いですよ。助けるって言ったんで、絶対に諦めないです。でも、どうすればいいんですか」

【その先のビジョンが無いのに大口をたたくほど私は馬鹿じゃないんだよ?もちろんどうにかするだけのデッキは揃ってる】

「おぉ、みっちゃんは先見の明があるんだね!優君なんてさっきは大見得を切ってたけど……ちょっと待ってね」


 咳で会話を止める。咳に混じって赤黒い液体が漏れ出ているのがわかる。

 漏れ出た液体は地面を染めて、その地面は血を吸い込み、どんどんと部屋全体が赤く染まっていく。


 ひとしきり咳をして、話を再開することなく糸が切れたように六架が倒れる。

誠心誠意お話描きます。

感想、ブックマーク、評価貰ったらめっちゃ喜んでめっちゃいい作品描きます。

ブックマークの文字を押せばブクマ完了。評価はページ下の星をポチっとすれば出来ます。



なのでよろしくお願いします。




たのむ~

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