猫っぽい何かがいる世界
……チリ―ン……
街についたのはいいけど、フラフラになってる私の足元をなにか黒いものがかすめて行った。
猫、だと思う。木の陰に消えさっていく黒いものの尻尾だけ見えた。
あれは猫の尻尾。
もしかして、リン?
そんな様子をみていたのか私の視線の先を見る獣人さんは少しハッとしたような顔をした。
「ん!? あれ、サワラんとこのチキじゃん!」
鰆のところのチキ……? ってなんだ?
「チキッ!」
木の陰からチキと呼ばれたものがモジモジを顔をだした。
猫……
じゃない!
形は猫。羽根が生えてる。コウモリの。
決定的に違うのは、目が3つあるところ。両目は当然ながらおでこにもう一つ。
そっか。
猫じゃなかったのか…。
首元には黒に映える金色の鈴。さっきのチリーンって音はあの鈴の音だったのか。
「チキ、おッ前ぇ!サワラがすっげえ探してたぞ!? 一週間もどこいってたんだよ!」
モジモジモジ……
「おまっ……ハァ、いいよもう。早く家帰ってサワラを安心させてやれよ。」
チキと呼ばれた猫っぽいけど全然違う生き物は「わかっタ」と小さな声で呟いて飛んで行ってしまった。
ってか、えっ? しゃべれるの!?
「あ~、悪ィ! 疲れたよな。俺らも家かえるか―……」
今度は私に合わせてゆっくりと手を引いて歩いてくれる獣人さん。
きっと良い人だと思った。
……で。
家に着いたとたんベッドに押し倒された。
なにこの状況。
「や~、んじゃまあとりあえずヤっとくか!」
いやいやいや。
「やらないよ?」
「は? なんで?」
本当に驚いた顔で聞き返す獣人さん。こっちが驚くよ……。
「とりあえず私、寝たいんで……」
「おう! 今すぐヤろう!」
私の首元に顔をうずめ、首筋に舌を這わせる獣人さんの吐息は荒い。
……いや、寝るの意味が違うから。
「や り ま せ ん !」
きっぱりと言い放ち思いっきり獣人さんを思いっきり突き飛ばす。
ドスンとベッドから転がり落ちた獣人さん、ちょっと油断してたよね?
思いっきり突き飛ばしたのはちょっと悪かったかもしれない。
でも。
私、急がないと。あの子の体、放ってはおけない。あの子を一人にはしておけない。
例え今はもうただの肉の塊でも。
……そう思うとまた涙が溢れてきた。リン……リン……私のリン。
「……なんだよ……そんなに俺が嫌かよ……」
みると頭を垂れガックリと肩を落とした獣人さん。本当に可哀想なぐらいガックリ! って感じ。
別に獣人さんが嫌とかそーいうわけではないのだけどね。
「嫌いじゃないけど、出会ったばかりだしこんないきなり……」
ってところでド――ン!
恐ろしい勢いで部屋のドアが開いたかと思うとさっきのチキが凄い形相で飛び込んできた。
「助けてころされるうッ!!!!!」
そして。
ゆっくりと、でも大股で近づいてきたとっても綺麗な人間の女の子。
……じゃないかもしれない。
頭には黒い尖った耳。目はとっても大きなうるんだ黒目。大きな胸に細いウエスト。
艶やかな長い黒髪はふわふわととっても柔らかそう。
ゴスロリ風の黒いドレスも彼女にとっても似合ってる。
ごつい黒のロングブーツが良い感じに全体を甘すぎない雰囲気にしていた。
まあピンクのフリフリドレスを着てたところで、今の彼女はきっと甘い雰囲気にはならないだろうけど。
なんせ、さっきのチキよりも凄い……というか。
鬼のような形相ってまさにこれ!ってぐらい恐ろしい顔をしていたから。
「も・ち・ろ・ん! 殺す! ぶっっっころす!!!」
この綺麗な女の子の両手にはサバイバルナイフのような鈍く光る刃物が握られていた。
これ、本当に殺す気だ。
「オイッ! 待て、タマラ! 家帰ってやれ! ってかそんなもん、俺んちで振り回すな!」
タマラと呼ばれた女の子はチラリと私をみた後、なんと。
ナイフを手放したかと思うと、拳を握りしめて…
獣人さんに会心の一撃。
なんでっ!?
「ぐわっ、なんで俺……?」
そりゃあ獣人さんもそう言いますわ。
「これだから男ってやつはァ!!!」
そう言いながら往復ビンタを獣人さんに浴びせるこの女の子に一体なにが起こっているのでしょうか……何かにでもとりつかれてるのか……? 呆然と見つめる私をよそに、今のうちにとこっそりドアから出て行こうとしたチキのすぐ横をナイフがかすめて飛んで行った。
「……にがさねぇ、よ?」
固まるチキ。
固まる私。
固まる獣人さん。
なにこれ……こわい……殺される……。
「ちょ……まて。とりあえず、理由を話せ。でもまずなんで俺が殴られたかを話せ。」
ギロリ! と言う擬音が聞こえるぐらいその恐ろしい目で獣人さんを睨んだタマラさん。
「お前が女に無理強いしてるからだろーがァ! で! チキは殺す! 私の金盗んでメスに貢ぎやがったんだからなァ!」
そしてチキに血走った眼を向ける。いつの間にか手にもう一本のナイフが握られている。
「だから金は必ず返すって……」情けないぐらいか細い声で話すチキの言葉を遮りタマラさんは尚も興奮して叫ぶ。「返す当てもねぇくせに返すなんて言うなァ!!!」
「……わかった……わかったから落ち着け。そして俺は無理やり抱こうとはしてねェ」
いや、割と強引でしたよ! っていう突っ込みは置いといて。
見かねて仲裁に入った獣人さんの言葉に、どうやら彼に対しては怒りがとけたらしく「あら、そう。じゃあごめんなさい」と素直に謝っていた。全然悪く思ってない感情こもらない謝り方でしたが。
「とりあえず金は俺が払うから。チキは俺に金返せ」
その言葉を聞いてやっとタマラさんの力は抜けたらしい。
ふぅ、っとため息をつくと獣人さんの前に「ん!」と手を差し出した。
「じゃあ今すぐ払って。50万」
気まずそうにそっぽむくチキ。
冷ややかに獣人さんを見つめる綺麗な女の子。
青ざめた獣人さんの口から漏れた「ご、ご、ごじゅうまん……!?」の言葉。
もう、疲れたのでとにかく私は眠りたいんだけど状況がそれを許してくれない……。
ごめん、リン。頑張って早くこの夢から目覚めるからもう少しだけ我慢してて……。
エロを・・・微エロを入れたくてしょうがないんです・・・




