sunset.2
2076年4月1日、記念すべきアメリカ合衆国独立300周年を迎えるであろう年のエイプリルフール。
お世辞にも安定した社会とは呼ぶことができない状況ではあったが、
それを差し引いてもみな浮足立っていたことは間違いがない。
19時頃、世界のすべて、世界をつかさどる情報やサーバーのすべてが一斉にダウンした日である。
毎週土曜日はUberでピザの宅配を頼み、INM(intracerebral nano memory)へ毎週放送の
新規ドラマをダウンロードして視るのが僕の習慣である。
いかんせんこの仕事をするようになってから、メンタルも週感覚もボロボロとなっている。
時刻は18時を回り、もう小一時間もすれば焼きたてのピザが自宅に届けられる時間だ。
先週ドラマがとても気になるところで終わったため早く続きが観たかった。
加えて最近は魅力的なJAPANのアニメ映画も豊作なため、そちらも観ようと考えている。
EVM(expansion vision monitor)に画一化され並べられている作品に目を通していると
脳内でコール音が響く。
EVMには「禿げ上司」と表示されている。
面倒だ。面倒だけれど出る以外の選択肢はない。
彼はもともと私の上官に当たる人物だ、訓練もさることながら戦場でのノウハウも彼に教わった。
もともとというか、彼は今軍のさらに上の役職に就いたため、直近の上司ではないが
明らかに立場が私より上のため選択肢はないに等しい。
たまの休暇の楽しみを邪魔されたことに多少の苛立ちをおぼえるも、
この電話がかかってきた時点で休暇は無くなること意味していたためさっさと気持ちを切り替えて電話に出る。
こめかみを右手中指で2回タップする。
「休日にすまないな、クリーク」
よくしかられて耳に残っていた渋い声が聴こえる。
「こんばんは、ホントですよ。任務ですか?」
「そうだ、先ほど緊急で連絡が入ってな。」
「申し訳ないが至急、再度本部へ来てほしい。」
「詳しい内容は到着後に説明する。」
「休日とはいえ、ついさっき本部を出て帰宅したばかりなんですが。」
「代休も手当ても弾むから来い」
「金なら十分ありますよ、分かりました。すぐ向かいます」
少し嫌味な言い方になってしまったが小言を言う権利くらいは欲しいものだ。
僕はそう思いつつ電話を切った。
ある程度融通の利くポストに就いてからは最低でも土曜日だけは休日が欲しかったから重役に
柄でもなく頭を下げたというのに、今日にいたってはそれどころではないらしい。
つい先ほど脱ぎ捨てた軍服に再度袖を通し直す。
どうせ作戦時には特別仕様の戦闘服に着替えるというのに、
本部に行くためだけに再度堅い軍服に着替えるのは面倒だともおもいながら、
車のエンジンを始動した。
ピザの配達もキャンセルしなければいけない。
自身の口座からキャンセル料が支払われるのに怒りを禁じえない。
「手当どんだけ出るんだろうか」
金額次第では次は豪勢な食事を用意して休暇を満喫しようと考えていた。




