sunset.3
ここは僕の職場の本部である。
普段の勤務に当たってここへ訪れることは作戦内容等の確認でしか本来訪れることはまずないが
役職があがってからはほかの事務作業等でここに訪れる機会が大幅に増えた。
駐車場を抜け入り口に入るとメンバーズカード認証を抜け、
続けざまに虹彩認証、骨格スキャニング、INMと同時に内蔵される脳内チップ認証、等の生体認証が待っている。
それを越えれば、うちの名物門番が待っている。
「やあBIG G、元気か」
「バーガーが美味いな、今日は土曜日だろ?忘れ物か?」
「そんな理由で来るわけないだろ、緊急の任務だ。」
「それは可哀そうに、任務から帰ったら女紹介してくれや。」
「頑張るのはこっちなんだからGが紹介しろよ。」
「俺に紹介できる女がいるとでも?」
「さっさと手続きを済ませてくれ。」
「わかってるって、ほらよ。」
僕は彼から入社証を別途預かって先を急ぐ。
このご時世になって、一切健康を鑑みない彼の体型は国柄で見ればなんら珍しいことはないが、
僕が所属しているこの会社は、一種の民間軍事会社だ。
事務作業員といえど現場上がりの軍人も多い、そのせいかあそこまでの肥満はウチでは稀だ。
にしても彼が驚いていた通り、今回は特に珍しい事態だ、移動中にメールで確認したが、
普段部隊ごとに主に使っている会議室は固定されている。
にもかかわらずいつもと別の会議室に召集がかかっている。
人種も生まれ故郷も問われることのないこの心底居心地のいいとすら思える職場に、
普段感じることのない不気味さというか、無知ゆえの違和感のようなものを感じる。
「C-3…」すぐ傍には「関係者以外立ち入り禁止」のウィンドウが出ている。
社外秘の重要機密しかないようなこの職場でも一層厳重な警告に普段身に覚えのない背中の筋肉の緊張を感じる。
「クリーク!」
吃驚した。変な声こそ出なかったが、普段見せることがない鋭さの目をしていたに違いない。
僕の目線に充てられてか声をかけた本人も同じくらい驚いている。
「アレックス、頼むから会議室前で大声で呼ぶのはやめてくれ。」
「ごめんて、どうせ防音で中には何も聞こえないさ。」
そう楽観的にとらえている彼はアレックス。
スーツを着た従業員、胸に勲章を付けた軍人、資料や飲み物を運ぶ多脚ロボット等の有象無象が存在する中でも
特に目立つ体躯をもった白人のアメリカ人だ。性格も相まってか一層まぶしさを感じるが、
その実敬虔なクリスチャンでもある。
僕は無宗教だからわからないが、聖書に遠慮という教えは綴られていないのだろうか。
「クリークも会議室ここなんだろう?連続で入るより一緒に入る方がいいと思ってね。」
「高校生じゃないんだからさ。」
「クリークは友達が少ないからそんな考えになるんだよ。」
「わかったから行くぞ。あと友達は多い方ではないと思うが少なくもなぞ。」
相変わらずデリカシーに欠ける一言が絶えないが、そんな彼の言葉を遮るようにして、
ドアの生体認証を解除する。
「やぁ、そこへかけたまへ」
なるほど、合点がいった。
「はい!」
僕とアレックスも予定時刻より早めについたはずだが一番遅くに来たらしい。
それに何より、この場にいるメンバー、そうそうたるメンバーである。
普段とは一線を画す作戦になるだろうことはすでに察していたが、ここまでとは思っていなかった。
僕とアレックスは手で促された付近の椅子へ腰をかけると、話が始まった。




