第9話 始まりの災厄
王城の上空へ伸びる漆黒の光柱。
それを見つめたまま、アリアは静かに呟いた。
「ゲームには存在しなかった……。」
仮面の男は舌打ちし、剣を収める。
「今日の任務は中止だ。」
「逃がすと思う?」
アリアが問いかけると、男は振り返りもせず答えた。
「今は君を相手にしている場合ではない。」
そう言い残し、黒い霧となって姿を消した。
静寂が戻る。
白銀の騎士は王城を見つめ、険しい表情を浮かべていた。
「急ぎましょう。あれが完全に目覚めれば、多くの命が失われます。」
「……教えて。」
アリアは彼女を見る。
「あれは何なの?」
白銀の騎士は少しだけ迷い、口を開いた。
「“始まりの災厄”です。」
「世界が誕生した時、封印された最初の魔物。」
「そして、お母様が命を懸けて封印した存在でもあります。」
その言葉に、アリアの胸が大きく揺れた。
母は病で亡くなったのではない。
世界を守るために戦っていた――。
「だからあなたを守れ、と命じられていました。」
アリアはゆっくりと契約書を開く。
王城へ視線を向けると、新たな文字が浮かび上がった。
⸻
討伐成功率
0.8%
⸻
「……低すぎる。」
しかし、その数字の下にもう一行だけ表示される。
運命を買い取りますか?
アリアは小さく笑った。
「面白いじゃない。」
「世界の運命ごと、私が買ってあげる。」
その瞬間、契約書がこれまでにない眩い光を放つ。
すると、ページの奥から誰かの声が聞こえた。
『ようやく来たね、私の後継者。』
聞き覚えのない、優しい女性の声だった。
アリアは目を見開く。
その声は、どこか懐かしかった。




