第10話 契約の代償
『ようやく来たね、私の後継者。』
契約書から響く女性の声。
アリアは息を呑んだ。
「……あなたは誰?」
『今は名前を明かせない。でも、一つだけ忠告する。』
『世界の運命を買えば、必ず代償を支払うことになる。』
声はそこで途切れた。
契約書には新たな文字が浮かび上がる。
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世界の運命 価格:未確定
必要な代償:???
⸻
「価格が……決まっていない?」
アリアは初めて困惑した。
これまで買い取ってきた運命には、すべて明確な代償があった。
だが今回は違う。
白銀の騎士が契約書を覗き込み、表情を変える。
「その表示……まさか。」
「知っているの?」
「伝説でしか聞いたことがありません。」
「世界規模の契約は、契約者自身の未来を代償にすると。」
アリアは静かに目を閉じた。
自分の未来。
命なのか、記憶なのか、それとも別の何かか。
まだ分からない。
それでも――。
「このまま見捨てるつもりはない。」
その時、クロードが部屋へ駆け込んできた。
「アリア様!」
「王城から緊急要請です!」
「災厄が結界を破りました!」
窓の外を見ると、王都の空が黒く染まり始めていた。
人々の悲鳴が風に乗って聞こえる。
アリアは契約書を強く握る。
「王城へ向かうわ。」
その瞬間、契約書の最後のページがひとりでに開いた。
そこに書かれていた契約者の名前を見たアリアの表情が凍りつく。
契約者――アリア・フォン・ルミナス。
契約終了予定日まで、残り365日。
世界を救るまで、残された時間は、わずか一年だった。




