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『悪役令嬢は破滅の運命を買い取り、世界を支配する  作者: 谷本遥叶


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第5話 『死の予告状』

第5話 『死の予告状』


コン――。


コン、コン。


三階の窓を叩く音が、静かな部屋に響く。


アリアは一瞬だけ目を細めた。


(ここは三階よ。)


外に人が立てるはずがない。


それでも、窓の向こうには黒い仮面をつけた人物が確かに立っていた。


月明かりを背に、不気味な笑みを浮かべている。


「……何者?」


その瞬間、部屋の灯りがふっと消えた。


「っ!」


次の瞬間には、窓の外にいたはずの人物が、部屋の中央に立っていた。


音もなく。


気配すらなく。


「初めまして。」


男は静かに一礼する。


「『運命管理局』執行官、第七席ノクス。」


「あなたを観察しに来ました。」


アリアは驚きながらも表情を崩さない。


「観察?」


「ええ。」


ノクスは机の上に置かれた手紙を指差す。


「その予告状を読んでも、あなたは取り乱さなかった。」


「普通なら泣き叫ぶ。」


「逃げ出す。」


「助けを求める。」


「ですが、あなたは違う。」


アリアは小さく笑う。


「それで?」


「私が怖がるとでも思った?」


ノクスは肩をすくめた。


「いいえ。」


「だからこそ、興味が湧いたのです。」


その言葉を残し、男の姿は黒い霧となって消えていく。


「忠告を一つ。」


「明日の夜十二時。」


「あなたは本当に死にます。」


「運命は、必ず実現する。」


部屋には静寂だけが残った。



翌朝。


「お嬢様……。」


エマは心配そうな顔をしていた。


「顔色が優れません。」


「少し考え事をしていただけよ。」


アリアは笑って紅茶を飲む。


しかし頭の中では、別のことを考えていた。


(運命管理局……。)


前世でも聞いたことがない組織。


つまり、ゲームにも存在しなかった。


(イレギュラー。)


それは自分だけではなかった。


世界そのものに、前世では知らなかった秘密がある。


その時。


机の上に置いてあった黒い本がひとりでに開いた。


昨日までは何も書かれていなかったページに、文字が浮かび上がる。



現在保有運命ポイント:1,250


【解放可能】


・未来視(初級)


・危険察知


・運命改変Lv1



「……なるほど。」


運命ポイントは使うこともできるらしい。


アリアは迷わず『危険察知』へ触れた。


光が身体を包む。


その瞬間。


部屋中が赤く染まった。


「!?」


壁。


床。


天井。


すべてが赤く点滅している。


(全部……危険?)


次の瞬間だった。


ドォォォォォン!!


屋敷全体が大きく揺れた。


窓ガラスが砕け散る。


「お嬢様!!」


エマが叫ぶ。


庭で巨大な爆発が起きていた。


炎が屋敷へ迫る。


使用人たちが逃げ惑っている。


「火事!?」


いや、違う。


爆発だ。


しかも一点だけを正確に狙っている。


アリアは赤く光る床を見る。


(ここにいたら死ぬ。)


反射的にエマの腕を掴む。


「伏せて!」


二人が床へ飛び込んだ直後。


ガシャァァァン!!


さっきまでアリアが立っていた場所へ、巨大な黒い槍が窓を突き破って突き刺さった。


あと一秒遅れていたら、心臓を貫かれていた。


「始まったわね……。」


アリアは静かに立ち上がる。


窓の外には、黒いローブをまとった十数人の人影。


全員の胸元には、漆黒の薔薇の紋章が刻まれている。


その中央に立つ少女が、ゆっくりと微笑んだ。


年齢は十五、六歳ほど。


透き通るような白い肌。


銀色の長い髪。


そして、血のように赤い瞳。


少女はアリアを見つめると、どこか嬉しそうに笑った。


「やっと会えた。」


「お姉様。」


その一言に、アリアの思考が止まる。


「……誰?」


少女は答えない。


代わりに、静かに右手を掲げた。


空が一瞬で曇り、王都全体を覆うほど巨大な魔法陣が空に浮かび上がる。


「迎えに来たわ。」


「あなたが運命を支配する資格があるか――確かめるために。」


その瞬間、王都中に鐘の音が鳴り響いた。


それは百年前の戦争以来、一度も鳴らされていない警鐘だった。


王都に、敵襲。


そしてアリアはまだ知らない。


この襲撃こそが、前世では存在しなかった”新たな物語”の始まりだということを。


――第6話へ続く。

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