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『悪役令嬢は破滅の運命を買い取り、世界を支配する  作者: 谷本遥叶


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第24話 殺せない命令

第24話 殺せない命令


「次に私が目を開けたら、迷わず私を殺して。」


アリアの声が消えた瞬間、レオンの両目が赤く染まった。


【覚醒まで――二十秒】


王都上空の巨大な目が開き、地上へ黒い光を落とす。


光に触れた建物は崩れることさえなく、最初から存在しなかったかのように消滅した。


「全軍、住民を城外へ避難させろ!」


レオンの身体を奪ったエルシアを前に、アルベルトが叫ぶ。


しかしクロードは、その場を動かなかった。


手にした契約書には、二つの命令が浮かんでいる。


【王太子レオンを殺せ】


【誰一人死なせるな】


「どちらかを選べば、どちらかを破る……。」


『まだ迷っているの?』


エルシアがレオンの顔で笑う。


『アリアは、あなたに自分を殺せと命じた。忠実な従者なら従いなさい。』


黒い槍が生み出され、クロードの肩を貫いた。


「ぐっ……!」


膝をつきながらも、クロードは剣を離さない。


【覚醒まで――十五秒】


白い髪の少女が彼の前へ立った。


『私がアリアの魂を引きずり出す。』


「可能なのですか?」


『一瞬だけなら。でも、その間にエルシアを切り離せなければ、三人の魂が全部消える。』


三人。


レオン。


アリア。


そして、本来のアリア。


クロードは血に染まった契約書を開く。


「成功率は?」


ページに数字が浮かんだ。


【魂の分離成功率――1%】


『怖い?』


少女の問いに、クロードは立ち上がる。


「いいえ。」


「一度も成功したことがない方法なら、失敗の運命もまだ決まっていません。」


少女は驚き、やがて小さく笑った。


『あなた、本当にアリアに似てきた。』


【覚醒まで――十秒】


少女がレオンへ飛び込み、胸元の紋章へ両手を突き刺す。


『今よ!』


レオンの身体から、黄金の光と黒い影が引きずり出された。


黄金の光の中にはアリア。


黒い影の中にはエルシア。


クロードは剣を構え、黒い影だけを斬ろうと踏み込む。


だがその瞬間、二つの魂が入れ替わった。


黒い影の中からアリアの声が響く。


「斬って、クロード!」


一方、黄金の光の中ではエルシアが涙を流していた。


「助けて……私はアリアよ。」


見た目も、声も、魂の気配さえ完全に同じ。


【覚醒まで――五秒】


契約書に新たな命令が浮かぶ。


【本物のアリアを斬れ】


「何……?」


『クロード!』


二人が同時に彼の名を呼ぶ。


残り三秒。


クロードは目を閉じた。


そして、迷いなく黄金の光へ剣を振り下ろす。


刃が少女の胸を貫いた瞬間、彼女は笑った。


『正解よ。』


黄金の光が砕け、その中から現れたのはエルシアだった。


「なぜ……分かった?」


クロードは冷たく答える。


「アリア様は、助けを求めません。」


次の瞬間、黒い影からアリアが飛び出し、契約書を掴んだ。


「よくやったわ、クロード。」


【覚醒まで――一秒】


アリアは契約書へ新たな条件を書き込む。


【エルシアの覚醒を買い取る】


【対価――運命管理局の全権限】


アルベルトの顔色が変わった。


「待て! それを差し出せば、管理局は消滅する!」


「望むところよ。」


アリアが署名すると、空の巨大な目が砕け散った。


覚醒の数字が消える。


だが安心したのも一瞬だった。


契約書の最終ページに、新たな所有者の名が浮かぶ。


【運命管理局・新管理者】


【アリア・フォン・ルミナス】


そして、その下にもう一行。


【最初の命令を受信しました】


【世界人口の半数を処分せよ】


アリアの右目が、ゆっくりと赤く染まった。

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