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『悪役令嬢は破滅の運命を買い取り、世界を支配する  作者: 谷本遥叶


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第21話 本物のアリア

第21話 本物のアリア


【本物のアリアを選べ】


【間違えれば、世界は三日後に滅びる】


黒い地図に浮かんだ文字を見て、クロードは息を呑んだ。


「運命の墓場……。」


その場所を、アルベルトは知っていた。


「管理局が捨てた未来が集まる場所だ。」


「捨てた未来?」


「選ばれなかった人生。存在しなかったことにされた人間。消された記憶。そのすべてが眠っている。」


地図の中央には、アリアの姿が映っている。


しかし彼女の周囲には、同じ名前が刻まれた無数の棺。


その中から本物を選ばなければならない。


「行き方は?」


クロードが問う。


アルベルトは黒い扉へ視線を向けた。


「契約者だけが、その扉を開けられる。」


「なら、今すぐ開きます。」


「待て。」


アルベルトの声が低くなる。


「墓場では記憶が形を持つ。お前が見たアリアが、本物とは限らない。」


「それでも行きます。」


クロードは迷わず契約書を開いた。


手の甲の紋章が輝き、黒い扉が地面から現れる。


扉の向こうには、白い霧が広がっていた。


「私も行く。」


レオンが前へ出る。


胸元の黒い紋章は、少しずつ広がっている。


残された時間は三日。


だがクロードは首を横に振った。


「殿下は王都に残ってください。」


「俺の身体がエルシアに奪われるなら、なおさら――」


「だからです。」


クロードは静かに言い切った。


「アリア様が戻った時、王都まで失われていたら怒られます。」


レオンは何も言えなかった。


クロードは一人で扉をくぐる。


次の瞬間、景色が変わった。


果ての見えない灰色の大地。


その上に、無数の棺が並んでいる。


すべてに同じ名前。


――アリア・フォン・ルミナス。


「これを全部、確かめろというのか……。」


その時、一つの棺が軋みながら開いた。


中から現れたのは、黒いドレスをまとったアリアだった。


「クロード。」


優しい声。


見慣れた微笑み。


間違えるはずがない。


「迎えに来てくれたのね。」


クロードが一歩近づく。


だが契約書は反応しなかった。


アリアは不安そうに手を伸ばす。


「どうしたの?」


「私よ。」


「あなたがずっと守ってきた、アリアよ。」


その言葉に、クロードは剣を抜いた。


「違う。」


「どうして?」


「アリア様は、自分が守られていたとは思っていません。」


彼女はいつも、自分が周囲を守っているつもりだった。


決して「守ってきた」などとは言わない。


クロードが剣を振るうと、偽物の身体は黒い霧となって崩れた。


同時に、周囲の棺が一斉に開く。


数十人のアリアが、同じ笑顔でクロードを見つめた。


「クロード。」


「私を選んで。」


「私が本物よ。」


重なる声の中、契約書に新たな文字が浮かぶ。


【本物を見抜く方法】


【彼女が最も恐れていることを答えよ】


クロードは動きを止めた。


アリアが最も恐れているもの。


死ではない。


敗北でもない。


孤独でもない。


彼女が誰にも見せなかった、本当の恐怖。


その答えを考えた瞬間、棺の奥から一人のアリアが現れた。


他の者とは違い、彼女だけは笑っていなかった。


そしてクロードを見るなり、冷たく言った。


「どうして来たの。」


「私を探すなと命じたはずよ。」


その声を聞いた瞬間、クロードの契約書が激しく震え始めた。


だが同時に、彼女の背後の棺から、もう一人のアリアが起き上がる。


その少女は涙を流しながら、小さく呟いた。


「クロード……助けて。」


二人のアリア。


契約書に表示された判定は、どちらも同じだった。


【本物である確率――50%】

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