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『悪役令嬢は破滅の運命を買い取り、世界を支配する  作者: 谷本遥叶


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第17話 消えていく記憶

第17話 消えていく記憶


「……あなたは、誰?」


アリアの言葉に、クロードの表情が凍りついた。


黄金の壁を叩いていた手が、ゆっくりと止まる。


「アリア様……?」


「その名前で私を呼ばないで。」


アリアは反射的に一歩下がった。


目の前にいる男が誰なのか分からない。


けれど、胸の奥だけが激しく痛んでいる。


まるで大切な何かを失ったことを、心だけが覚えているようだった。


『一つ、もらった。』


白い髪の少女が笑う。


彼女の手の中には、小さな光の玉が浮かんでいた。


その中には、幼いアリアへ剣の使い方を教えるクロードの姿が映っている。


『これがあなたの記憶。』


「返しなさい。」


『嫌よ。だって勝った方だけが、この身体に残れるんでしょう?』


少女が光を握り潰す。


その瞬間、アリアの胸から何かが完全に消えた。


クロードと過ごした日々。


守られた記憶。


笑い合った時間。


すべてが空白になる。


「やめなさい!」


セレスティアが少女へ斬りかかる。


しかし、その剣は少女の身体をすり抜けた。


『ここは魂の契約空間。外の人間は触れられない。』


少女は次の光を取り出した。


そこに映っていたのは、王太子レオンだった。


「次は彼を消すのね。」


アリアは契約書を強く握る。


『そう。でもあなたも、私の記憶を奪えるよ。』


少女の周囲に無数の光が現れた。


その一つに触れた瞬間、アリアの頭へ知らない光景が流れ込む。


暗い部屋。


鎖につながれた幼い少女。


扉の向こうでは、アルベルトと管理局の者たちが話していた。


『この子は器として完成している。』


『だが、自我が強すぎる。』


『魂を分離し、別の世界から従順な魂を呼べ。』


アリアは息を呑んだ。


「あなたも……被害者だったの?」


少女の笑顔が歪む。


『同情しないで。』


「お父様は、私を救うために魂を入れたんじゃない。」


アリアはアルベルトを見る。


「最初から、管理局の器を作るためだったのね。」


アルベルトは何も答えなかった。


その沈黙がすべてを認めていた。


少女はレオンの記憶へ手を伸ばす。


だが、アリアは彼女の腕を掴んだ。


「もう奪わせない。」


『なら、私を消す?』


「違う。」


アリアは契約書を開く。


「二人の魂を一つにする。」


その言葉に、少女の顔色が変わった。


『そんな契約は存在しない!』


「なら、私が作る。」


アリアが新たな契約を書こうとした、その時。


契約書の奥から、聞き覚えのある声が響いた。


『やめておいた方がいい。』


最初にアリアへ語りかけた、あの女性の声。


ページの中から現れた文字を見て、セレスティアが崩れ落ちる。


【第三の魂を確認】


【名称――セレスティア・フォン・ルミナス】


アリアは母を見る。


しかし、目の前のセレスティアは青ざめたまま首を振っていた。


「違う……。」


「私は、セレスティアではない。」


その瞬間、彼女の顔に大きな亀裂が走った。

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