第15話 父との再会
第15話 父との再会
「久しぶりだな、私の娘。」
黒い扉の前に立つ男は、穏やかに微笑んでいた。
その姿は、屋敷に飾られていた肖像画と同じだった。
アリアの父、アルベルト・フォン・ルミナス。
十年前、任務中に死亡したと聞かされていた人物。
「お父様……なの?」
アリアの声は、自分でも驚くほど震えていた。
男はゆっくりと頷く。
「そうだ。お前が幼い頃に姿を消した、愚かな父親だ。」
「では、あなたが運命管理局の頂点に?」
「正確には、現在の管理者だ。」
アルベルトが手を上げると、十三人の執行官が一斉に跪いた。
その光景が、何よりも明確な答えだった。
セレスティアがアリアの前に立つ。
「騙されては駄目よ。」
「彼はもう、あなたが知る父親ではない。」
「ひどい言い方だな、セレスティア。」
アルベルトは寂しげに笑った。
「私は家族を守るために管理局へ入った。」
「嘘よ。」
「嘘ではない。」
彼が指を鳴らすと、空中に無数の光景が映し出された。
戦争。
飢餓。
疫病。
王国同士の虐殺。
「人間に自由な運命を与えれば、必ず争いが生まれる。」
「だから私が選んだ。」
「戦争が起きる国を。」
「死ぬべき王を。」
「英雄になる人間を。」
アリアは冷たい視線を向ける。
「それで世界を救ったつもり?」
「少なくとも、滅びは防いだ。」
「誰かの人生を奪って?」
「必要な犠牲だ。」
その言葉を聞いた瞬間、アリアの中で何かが冷めた。
目の前にいる男は父であって、父ではない。
「なら、お母様を死んだことにしたのも?」
アルベルトは答えなかった。
その沈黙だけで十分だった。
「私の運命も、最初から決めていたのね。」
「お前には管理局を継いでもらう予定だった。」
「だから能力を与えた?」
「違う。」
アルベルトの表情が初めて曇る。
「その力は、私が与えたものではない。」
アリアの契約書が突然震え始めた。
黄金の文字が黒く染まり、知らない文章が浮かび上がる。
⸻
【真の契約者を確認】
現在の所有者――アリア
最初の所有者――不明
⸻
「最初の所有者が……いる?」
セレスティアが息を呑む。
アルベルトは黒い扉を見つめた。
その顔には、これまでなかった恐怖が浮かんでいる。
「扉を閉じろ。」
「今すぐだ!」
しかし、もう遅かった。
扉の奥から白い手が伸び、アルベルトの肩を掴む。
そして、楽しそうな少女の声が響いた。
『やっと見つけた。』
『私の身体を返して、アリア。』
次の瞬間、契約書の表紙に刻まれていたアリアの名前が、ゆっくりと別の名前へ書き換わり始めた。




