第12話 本当の敵
あなたに本当の敵を教える。」
母・セレスティアのその一言に、アリアは息を呑んだ。
背後では黒い竜が咆哮を上げ、王都の大地が激しく揺れる。兵士たちは必死に応戦しているが、竜の放つ瘴気に触れた者から次々と倒れていく。
それでもセレスティアは竜を見ようともしなかった。
「アリア、よく聞いて。」
「始まりの災厄は敵ではない。」
「……え?」
その言葉に、アリアだけでなくクロードと白銀の騎士まで驚きの表情を浮かべた。
「どういうことですか?」
白銀の騎士が問いかける。
セレスティアは静かに空を見上げた。
「あれは世界を滅ぼすための存在ではない。」
「世界を守るために造られた存在よ。」
「守る……?」
アリアは理解できなかった。
目の前では竜が一振りしただけで城壁が崩れ、多くの人々が逃げ惑っている。
それが世界を守る存在だというのか。
「本当に世界を壊そうとしているのは、運命管理局。」
その瞬間、アリアの表情が変わる。
「やっぱり……。」
あの第一執行官。
閲覧できなかった運命。
すべてが一本の線で繋がった。
「管理局は何百年も前から運命を書き換え、人々を操ってきた。」
「王の誕生も、戦争も、英雄も……すべて彼らが選んできた未来。」
「そんな……。」
クロードは言葉を失う。
この世界の歴史そのものが作られたものだというのだから。
「そしてあなたの能力だけが、その支配を壊せる。」
セレスティアはアリアの契約書へ視線を向けた。
「だから管理局は、あなたを消そうとしているの。」
その時だった。
バキッ――。
契約書に一本の亀裂が入る。
「なに……?」
ページが勝手にめくれ、赤い文字が浮かび上がる。
⸻
【警告】
管理局が契約を強制終了します。
残り時間 60秒
⸻
「契約を消される……!」
アリアが契約書を抱きしめた瞬間、空間が裂けた。
そこから現れたのは、黒いローブをまとった十数人の男女。
全員が同じ仮面をつけている。
「対象確認。」
「契約者アリア・フォン・ルミナス。」
「管理者権限により処分を開始する。」
第一執行官が一人ではなかった。
運命管理局。
その全貌が、ついに姿を現した。




