攻防戦③。
稼働を開始した、40体のイスロ戦場型戦闘ヒューマノイド。
とても職員達などで庇い切れるものではない。
40丁もの機銃掃射を一度に浴びれば、例え大人数の人質であっても皆、文字通り一溜まりも無いだろう。
とはいえ、セルピエンテの目論見は一貫してゲリラ式戦闘ヒューマノイド全員をおびき寄せることであった。
それが達成されるまで徹底して人質達には死の恐怖を与え、いたぶり続けるつもりだ。
女子生徒達の啜り泣きが聞こえる。
拳を握り締め立ち尽くすエリック=ティーチャーを、セルピエンテは手ぶらのまま薄笑いを浮かべて見下す。
「いいか?
一歩でも動けば、コイツらの首が吹っ飛ぶぞ」
セルピエンテは輪の外に居る、6名のイスロ兵に立ち向かったばかりの栄太と山本君にも命じる。
「そこの、イキだけはいいガキふたり。
お前らも動くな!」
何という卑怯な奴だ!!
戦闘ヒューマノイド形態のエリックの顔にも怒りが滲み出る。
増して、自身の愛して止まない生徒達を人質になど許せるわけがない!
栄太も、同じ感情を露わにする。
「汚ねェぞ!!」
親の敵でも見るように、目を吊り上げた栄太が叫ぶ。
人質の中に居る由美香は………
送ったLINEを剣持が既読したかどうか気になっていた。
しかし、それを確かめる為だとしてもスマートフォンを取り出すわけにはいかなかった。
少しでも変な動きをすれば、このテロリストのリーダーは何をするかわからない………
LINEが既読され、こちらへ警察が向かっていることを由美香は願うしか無かった。
セルピエンテは笑いながら伝える。
「一つだけ条件を出そう。
他のゲリラ式戦闘ヒューマノイドどもを全員ここに呼べ。
今すぐにだ!
それなら、可愛いガキどもの命だけは助けてやってもいいだろう」
得意気な顔のセルピエンテが高笑いをした、次の瞬間……………
「オレらなら、とっくに来てるぜ?
ヘビちゃんよぉ」
背中から声がする。
セルピエンテが振り返ると………
軍用トラックの幌の上に、二人の男が座っている。
「あ!
アイツら!?」
栄太と由美香が驚きの声を上げる。
キッド三人衆のマーフィ、そしてカイトだ!
カイトはセルピエンテに告げる。
「テメェこそ、蒲焼きになりたくなかったら。
そのデク人形どもを止めな!」
セルピエンテは、右の首筋にヒンヤリとした感触を覚えた。
悪い予感………
それは首筋に当たったナイフの刃先だった。
気付かぬ間にキッド三人衆の一人、ケビンがセルピエンテの背後に回り、バタフライ・ナイフを横から首に突き立てている。
セルピエンテは、ゆっくりと両手を上げる。
「フッ……機械仕掛けの分際で、なかなかやるじゃねぇか」
表情は変えぬまま、セルピエンテは背中越しにカイトへ言った。
「戦闘ヒューマノイドを止める儀式は俺にしか出来ねぇ!
一旦、自由にしてくれねぇか?」
カイトは暫く考えてから、ケビンに目で合図を送る。
ケビンがセルピエンテの首からナイフを遠ざけ、一歩後ろへ下がった瞬間。
「撃てェ!!」
素早く前転し、場を逃れながらセルピエンテが命じたと同時に。
人質達の頭上を飛び越え、機関銃の掃射がケビンとカイト達を襲う!
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!
中央広場に悲鳴が上がる!
栄太と山本君の倒した兵士のうち、喉を傷めた者と左腕を傷めた者二人が密かに立ち上がり。
銃を構えていたのだった!
キッド三人衆達は、セルピエンテの策を読んでいたかのように各々身体を回転させ、銃撃から逃れる。
トランシーバーから指示を出すセルピエンテ。
「(一斉銃撃開始!
目標、ゲリラ式戦闘ヒューマノイド!!)」
軍用トラックの中では、オペレーター兵に対し麻衣が説得を続けていた。
再び来た、トランシーバーからの指令を聞きながらオペレーター兵は身を固くする。
「(本当に、戦闘ヒューマノイド達を止める手立ては無いの?)」
繰り返す麻衣の問いに、オペレーター兵はただただ目を伏せるだけだった。
「(一旦稼働させた戦闘ヒューマノイドは、攻撃コマンドを受け取り続けるしか無い……………
終了コマンドを知るのは隊長だけだ)」
麻衣は信じた。
このイスロ戦場型戦闘ヒューマノイドだけは、父の開発ではないことを。
同じ戦闘ヒューマノイドでも、これは命令に従い動くだけの操り人形………しかも殺戮だけが目的の!
かつて、出会ったばかりの華裏那が言っていたように自分の意思を持たず。
"コマンドを忠実に実行するだけ”
のロボット………というより兵器そのものなのだ!
(必ず、弱点は見つかるはず!)
麻衣は希望を捨てない!!
〈攻防戦③・完〉




