作戦開始!
バヤルは一旦地下室を出て行ったが、直ぐに戻ってきた。
手には軍服一着と、コードレスの電動バリカンを持っている。
「(座って!
髪を切るから)」
部屋の椅子に日向を座らせたかと思うと、おもむろに頭髪を刈り始めるバヤル。
日向は一先ず、なすがままになることにした。
「(髭も長いんで、バリカンで刈っちゃうからね)」
バヤルの手際の良さに驚く日向。
「(上手だね、バヤル。
お家は床屋なのかい?)」
バヤルはクスクス笑う。
「(床屋なんてのは、ある程度デカい街にしか無いよ。
普通は自分達で互いに刈るもんさ)」
あっという間に。
日向の頭髪と髭は刈り取られた。
日向自身、蓄えた髭を剃ったのは実に十何年振りだろう。
「(OK!!
じゃ、後はコレに着替えて!)」
日向はバヤルの用意した軍服に着替える。
サイズも見事にマッチした!
打ちひしがれた学者然としていた、日向の風貌は。
たちまち魔法のように生まれ変わっていた。
眼鏡だけは、そのままに。
「(スゴいや!
何処からどう見ても、立派な一兵卒だよ!!)」
自らの変装コーディネートの腕前に、我ながら得意となるバヤル。
すると再び部屋を出たかと思うと、今度は機関銃を一丁持って来る。
更に再び部屋を出て、今度は台車に載せて射撃訓練済みのダミー人形とモップを持ち込み。
更に再び部屋を出ると、二丁目の機関銃を持ち込んだ。
一体何を始めるつもりなんだ?
日向は目を丸くしながら、行ったり来たりのバヤルの行動を見守った。
全て運び終わったバヤルは、着替え終わった日向の衣服とモップの毛を使ってダミー人形の細工を始めた。
「(OK!!
完了だ)」
一つ深呼吸して、バヤルは日向に向き直る。
「(Mr.ヒュウガ。
いよいよ作戦開始だよ。
俺の指示通りにしてくれ。
まずは、機関銃を持って部屋の外へ出る。
そうしたら俺の指示する方へ歩いて欲しい。
くれぐれも不安そうな素振りは絶対見せちゃダメだ!
あくまで堂々とした態度で歩くんだよ。
わかったね!?)」
バヤルの説明に日向は大きく頷き、部屋のドアを開ける。
廊下では時折兵士の姿を見かけるが、とくだん二人を怪しむ様子も無い。
部屋には。
日向の服を着せられ、頭には真新しく白いモップ糸の被せれたダミー人形が、入口を背に座らせられたまま残された。
〈作戦開始・完〉




