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休暇ボケの功罪。

中米、イスロ本部。


一ヶ月ものクリスマス休暇を終え、ドメニコは司令室へ戻っている。


しかし……ドメニコの"休みボケ”は抜けていない。


アカプルコ土産のテキーラの小瓶を持ち込み、デスクで酔っている。

元々強い酒を得意ではないドメニコだが…………酔っているのはテキーラのせいだけではない。


この休暇から新たに別荘で雇っていた女性、ナタリア(Natalia)を見初めたドメニコは、本気で入れ込んでしまっているのだ。

ナタリアは、あたかもハリウッド女優のような美貌とグラマラスなスタイルを持つ、如何にも男好きするタイプのブロンド美女である。



「ああ、ナタリア!

やはり連れてくれば良かった!

私の人生最大の失敗だ!!」


すっかり酔いの回った赤ら顔をしながら、後悔の涙にくれているドメニコ。


別荘に滞在中、ほとんどの時間をナタリアと過ごしたドメニコだったが。

休暇を終える時、彼女から

「母親が病気なので看病に戻りたい」

と告げられ、涙ながらに多額の見舞金を渡しながら別れて来たのだった。


「ナタリアァ!!

今、何をしている!?

何故連絡をして来ない!?

私を独りにしないでくれェ!!!」


もはや、ドメニコの頭の中はナタリアのことで占められ、ただただ泣き崩れるばかり。

とても組織のトップに君臨する男とは思えない。

太平洋上で謀略を企てている部下のことも、日本に居るゲリラ式戦闘ヒューマノイド達のことも、当初の作戦については全て吹き飛んでしまっている。

ほぼ職務放棄に近い状態だ。


そんな時に、ドメニコのスマートフォンが鳴る。


「ナタリアァァ!!」


飛び付くドメニコ。

…………しかし、電話の主は対外派兵師団の本部職員だった。


「(総帥。

対外派兵師団中東部隊より、弾薬補給の要請が来ておりますが…………)」


ナタリアからの電話ではなかった絶望と。

八つ当たりの苛立ちが爆発する。


「(うるさい!!

勝手にしろ!!!)」


思わず持っていたスマートフォンを床に叩き付けるドメニコだったが、砕け散るスマートフォンを目にして自らの行為に蒼白となる。


「ああ!!

ナタリアからの連絡がァ〜!!!」


慌ててデスクの電話から総務部へ命令する。


「(今すぐ替わりのスマートフォンを用意しろ!!

データも全て移行しろ!!

今すぐにだ!!)」


こうした指導者の体たらくが、組織にほころびを生む要因ともなっていく。




「(Mr.ヒュウガ!

今がチャンスだよ!!)」


幽閉中の日向を監視する少年兵、バヤルが声を潜めて告げる。


「(チャンスって?)」


怪訝そうな顔の日向に、バヤルは続ける。


「(出て行くんだよ!

今ならイスロ全体の士気が下ってる。

監視も緩い)」


ようやく日向はバヤルの言い分を理解した。

脱走を勧めているのだ!


「(しかし何故、今そんなことになってるんだい?)」


日向の問いに、バヤルは笑いをこらえながら答えた。


「(ドメニコが、休暇先で雇ってる女にゾッコンになり過ぎて業務に支障をきたしてるって。

対外派兵師団の兵士がボヤいてたんだよ。

みんな呆れてサボりまくってる)」


何と情けない人間だ…………

これだけ人に酷い仕打ちをしておきながら、自分は女にうつつで職務放棄とは。

改めて日向は、自らの鑑識眼を恥じた。


「(しかし、バヤル。

私は脱走するわけにはいかない)」


「(どうして?)」


驚くバヤルに、落ち着いた様子で日向は諭す。


「(私を脱走させたら、君もタダでは済まない。

幾ら監視の目が緩いといっても、私が脱走した事実は明らかになるだろう)」


それを意に介さないかのように、バヤルは得意顔で言う。


「(大丈夫だって!

俺に、いい考えがあるんだ)」



果たして、バヤルの得策とは?



〈休暇ボケの功罪・完〉


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