準備は怠りなく。
「……………ニキ。
いよいよ奴等が動き出すぜ」
落ち着いた様子で、カイトが口火を切る。
エリック=ティーチャーのマンションの一室で、エリックとキッド三人衆が重要な情報を共有しようとしていた。
キッド三人衆の内の一人、ケビンの特技はナイフの使い手であると共に”ハッキング"だ。
そのことは、イスロ日本支部の職員達も知らない。
いや、キッド三人衆の"裏特技”については誰も知らされていない現状であった。
ケビンのハッキングした情報によれば。
本部に居る、総帥ドメニコは近いうちに日本支部の閉鎖まで考慮に入れ始めていた。
目的は一つ………組織の重要機密を握るゲリラ式戦闘ヒューマノイド達をメンテナンス不能とする"兵糧攻め”にし。
弱ったところを戦場兵士型戦闘ヒューマノイド師団を秘密裡に日本上陸させ、一気に叩く狙いなのだ!
その作戦そのものも、未だ日本支部には伝えられていない。
職員達がパニックに陥り余計な行動を取るのを防ぐ為、当面は知らせないつもりなのである。
なので、現段階では未だ平常通り日本支部オフィスは華裏那やキッド三人衆のゲリラ式戦闘ヒューマノイド達も出入り可能であった。
そうした中、ケビンはオフィスのPCを自らの左手首にあるジャックとケーブル接続し、いとも簡単に数々の"検問”=セキュリティを突破。
ドメニコのデスクトップ内部まで20分もかからずに辿り着いた。
そのようにして………明るみにされたのが前述の作戦であったのだ。
カイトは吹き出す。
「ケッ……どうせ奴の思い付くことなんざ、この程度だろって思ってたが。
まさかホントにそうだったとはな」
隣りに座るマーフィも、ハッハッハと嘲るように笑う。
「所詮オレらゲリラ式と比べれば、あんなデクノボウ集団なんざ能無しだ。
タバになろうが、おんなじこった。
それも気付かずに、ここで"祭り”やろうってのがアホだっての」
余裕綽々のカイトだが、それをエリック=ティーチャーがたしなめる。
「(僕らは心配無いが、身近な人達が巻き添えにならないようにしないとね)」
これには三人衆も頷く。
「確かに。
ロボット関係の、麻衣さん近辺は特に警戒が要るな」
カイトが言えば、マーフィも。
「(その通り。
俺達は迎撃と同時に守備もやらないとな)」
四人の意志は固まった。
一方、麻衣の学校。
放課後を迎えた途端、スタタタタと"侍走り”
=刀の携行を前提とする明治維新以前の走り方=
で山本君が栄太に近寄り、片膝を着いた御家人ポーズをとる。
「申し上げます!
この磯之進、御屋形様に御相談賜りたき義がござりまする!!」
栄太は、いつもの事ながら。
この山本君の戦国パフォーマンスには少々疲れが禁じ得ないのであった。
それでも。
「何?相談て」
山本君は御家人ポーズを崩さず。
「ハッ!
既に時は師走の期となりましたるゆえ、クリスマスの支度をせねばなりませぬ。
されど………それがしは生来おなごとクリスマスを共にしたことがござりませぬ」
「それって………俺も同じだけど」
「しからば。
おなごに進物をば、如何なるものが良きかと………悩んでおりまする」
「し、進物って?」
「ハッ!
プレゼントにござりまする」
どうも、山本君とのコミュニケーションの度に栄太は日本史か古文の補習を受けているような感覚が抜けないのであった。
「………う〜ん、そうだね。
言われてみれば俺も他人事じゃないな」
麻衣とも先日の一件により。
文字通り"雨降って地固まる”ことが出来、良い雰囲気となっている栄太。
「………よし!
じゃあ、今度の週末にでも。
一緒に街で買い物の下見行ってみる?」
「ハッ!
心得ましてござりまするッ」
山本君は御家人ポーズのまま、頭を下げた。
しかし……麻衣の喜ぶプレゼントって、何がいいのかな?と、山本君の悩みも理解出来た栄太であった。
〈準備は怠りなく・完〉




