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剣持の師走。

12月に入っていた。


剣持刑事37歳。

"ロボットのような謎の人物”

の捜査について、これまで一定の進展は見られたものの、年内に結果を出すのは難しい状況となっている。


その中で、協力を頂いているS工業大学の飯塚助教授からの情報で

"人間の能力を超えるロボット”

を開発する目的の一つとして、軍事用が考えられるという点が気になっていた。


実は剣持は、数カ月前に首都圏を震え上がらせた「愛玩動物焼死体事件」にて、一般人から寄せられた目撃情報、そして固定・動画問わず寄せられた画像物件に対し真っ先に飛び付き。

自から率先し、画像の

"ロボットと見られる猫”

の捜査に加わっていた。

しかし、捜査途上の段階ではあるが同様の事件は二カ月経過した現段階で再発していない。


ところが………つい先日。

その事件の"遺留品”と見られる物件が提供されたのである。

物件の発見場所は都内某所の歓楽街の一角である路地裏、提供者は歓楽街の飲食店経営者。

道を掃除していたところ、この物件が隅の側溝にはまっていたのを見つけ、例の事件を思い出したのだという。


その"遺留品”こそ。

戦闘ヒューマノイドの麻衣が クリティカル 電 デモリッシュ によって始末した、シュワルツ・カッツの頭部の残骸であった。



剣持は警視庁本部鑑識部にも協力を依頼すると同時に、自身も飯塚の元に現物を持ち込んで鑑定を求めた。


「愛玩動物焼死体事件」は広範囲に渡る発生規模であった。

更には画像等提供協力者の範囲も広いことから事件の"容疑者”ならぬ"容疑猫”は同一犯であると剣持は考えた。


飯塚は、剣持から提供された画像・動画と現物を比較し。

サイズからしても一致するとし、更に物件に使用されている部品の構成から考え。

これがロボットであったのは間違い無いとの診断を下した。


「………恐ろしいことです、剣持さん。

とうとう、現実になってしまいました」


飯塚は更に、この猫型ロボットが普段は"変身”して身を隠していた可能性もあるとの見解を示した。


「………非常に運良く、状態の良いサンプルが見つかりましたね。

御覧ください、機械の外装の下に生物系の毛皮が隠れています」


剣持の目には、ただの焼け焦げた猫の頭にしか見えなかったのだが。

やはり科学者の眼識は違うのだと、改めて感心するしかなかった。


「それは合点が行きます。

機械の姿のままなら日中でも目立つし発見しやすかったはずですが、当局の捜査でもなかなか骨が折れました。

で………そうだとしたら。

これを造った者の目的とは何なのでしょう?

それを、首都圏に放った目的も」


剣持の問いに、またしても飯塚は間髪入れず答える。


「この事件の内容からして、この猫型ロボットの殺傷能力を試す為とも考えられます。

先日、人間の能力を超えるロボットの開発に軍事目的が考えられるとお話ししましたよね。

人間の能力を超える、という意味では必ずしも人型、ヒューマノイドである必要はありません。

しかも猫のような小柄で俊敏な特性を活かせる個体を敢えて選択した可能性があります。

これが戦場なら、戦闘能力プラス偵察やスパイ活動に活かされるのは想像に易いかと」


飯塚は続けた。


「首都圏のような密集地であれば、より効果的に能力を試すことが出来ます。

それが狙いでしょうね」


剣持の表情が変わった。


「……では、このロボットの製作者は。

これで何らかのテロを起こす企みが!?

先生、これに使われている部品が、どこのモノなのか判りますか!?」


「………………これを見た限りだと、使われている部品そのものは特にロボット造りに特化したものではありませんので、供給源を特定するのは難しいでしょう。

仮にロボットが兵器として開発されたとしても、概ね現在使用されているほとんどの兵器部品の国籍は単一の国ではなく、世界中の様々な国のサプライチェーンという供給網を通じて供給されています。

なので部品の"国籍”は非常に多様であり、特定の兵器のサプライチェーンを完全に把握することは困難と言えますね」


飯塚の供述に剣持は唇を噛む。


「………そうですか。

せめて何処の誰が造ったのか?

糸口さえ見つけられれば、と思うのですが」


飯塚が提案する。


「これも以前お話した、噂の米国における変身型動物ロボット開発者の情報を、私の方で探ってみましょう。

あれから何か進展があったかもしれません」


「ありがとうございます、先生。

よろしくお願いします」


剣持は礼を言ってS工業大学を後にした。



その日の夜、由美香が。

コンビニでミニカーのプレミアム品が半額の値で売り出されているのを見つけ即買いしたと、持って来た。


最近はミニカー専門店へ行く時間も取れず、新しいアイテムをGET出来ていなかった剣持は喜んだが。

まだ高校生の由美香に、半額とはいえ安くは無い買い物をさせてしまったのを申し訳なく思った。

御代を渡そうとすると由美香は


「お代いらないから、チューして」


と笑顔でせがむ。


剣持は。

クリスマスは奮発するよと約束し…………

由美香と熱い口づけを交わす。


………クリスマスまで、あと20日だった。

由美香の希望するホワイトクリスマスを待つ、剣持の田舎は。

大雪警報だった。


〈剣持の師走・完〉

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