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ブラザー。

「よし、キッドが全員揃ったな!!」


中米・イスロ本部の司令室で、総帥ドメニコの声が響き渡る。



「キッド」と呼ばれた三人。

カイト。

マーフィ。

ケビン。

日・米・英各国の不良をモデルとして開発されたゲリラ式戦闘ヒューマノイドだ。

それぞれ皆、厳つい体格と、近寄り難い雰囲気を漂わすストリート・ギャングの人間形態をしている。


イスロの量産型戦闘ヒューマノイド受注・生産・売り上げは、直接戦場向けの”変身無し”バージョンに限っては順調であった。

しかし”変身有り”のゲリラ式については、如何せん生産にコストがかかる為、その設定価格故に発注側も慎重にならざるを得ない現実があった。

だが、事態はイスロという組織の存亡にも関わりかねない危機を迎えつつあり。

それを打開するには、やはりゲリラ式戦闘ヒューマノイドの新造を避けるわけに行かないのであった!


「いいか、お前達!

日本での第一次ゲリラ式戦闘ヒューマノイド計画は失敗に終わった!

ティーチャーは未だ我がイスロの機密事項を握ったまま、日本に潜伏している。

さらにはプロトタイプ1号機、2号機も、もはや信頼は出来ない。

お前達の使命・コマンドは、奴らを破壊処分し、消し去ることだ!

頼んだぞ、キッド達!!

万が一にもコマンド違反は許さぬ!!」


度重なる自社のゲリラ式戦闘ヒューマノイド達の”不祥事”にドメニコも容赦なく対処すべく、目一杯、威厳を見せ付け語ったつもりであった。


が………………


突然、三人の内のカイトが進み出たかと思うと。

ドメニコの居るデスクを真上から片脚で踏み付ける!


ガンッ!!!


デスクは真ん中から大きく割れ、ひしゃげてしまう。

目玉が飛び出しそうになっているドメニコを、カイトは睨み付ける。


「メタボオヤジ!

あんまみくびんなよ、オレらを!!」


日本のDQN然としたカイトが凄むと、先程の勢いは何処へやら…………脂汗を垂らし、萎縮してしまうドメニコ。


「ヒィィッ」


黒いスタジャンに深めの黒キャップで表情を隠す、サウス・ブロンクス風の黒人形態………

マーフィもつぶやく。


「It's up to us to decide whether you're the boss or not」

(アンタをボスかどうか決めるのは、俺らだ)


ひしゃげたデスクを蹴飛ばし、カイトがドメニコを見下ろしながら言う。


「一つだけ言っとく…………ティーチャーには必ず会う!

話はそれからだ」


カイト含む三人のゲリラ式戦闘ヒューマノイドは、踵を返し部屋を出て行った。



ガクガク震えながらドメニコは、自身に言い聞かせた。


(あれくらいでなくてはダメだ、あれくらいでなくては…………)





…………数日後、東京都内某所。

真面目そうな男子高校生が、三人の不良に路地裏へ連れ込まれていた。


「ひぃ!

助けてください、お金は出しますから」


不良は言った。


「金なんざ要らねぇよ。

オメーの知ってること全部言えよ!」


「し、知ってること!?」


「……エリック=ティーチャーを知ってるか?」


「え、エリック、ティーチャー!?

し、知らないです」


「ホントだな!?」


「ホ、ホントに知らないです〜!」


三人の不良は互いに顔を見合わせ、頷く。


「……邪魔したな」


三人は去り、男子高校生は解放された。



…………また、ある日。

同じように、別の男子高校生が路地裏で尋問を受けていた。


「ヒィ〜!

ぼ、僕が何か!?」


怯える男子高校生に、不良の一人が言う。


「エリック=ティーチャーを知ってるか?」


男子高校生は、少し考え込んで言った。


「……え、エリック?

確かウチの学校に、そんな名前の外人講師いますけど」


不良達は顔を見合わせ”アタリだ”とつぶやく。


「マジかよ!!

オメーのガッコって、どこよ!?」


「あの、D大付属一高ですけど」


不良の一人が財布から壱万円札を取り出し、男子高校生に差し出す。


「チップだよ、とっときな」


男子高校生は、大きく首を横に振り遠慮する。


「け、結構ですよ!

そんな」


「いいから!

とっとけよ!!」


半ば強引に壱万円札を男子高校生に渡し、三人の不良達は目的地を目指した。


(ティーチャー…………やっと会えるぜ)



ある日の午後。

麻衣の高校の校門付近に、見慣れない男達三人がたむろしていた。

そのうち二人は外国人らしく見えたが、三人とも概ね一般人とは思えない危険な雰囲気を醸し出していた。


その光景を窓から見た生徒達、職員達とも騒然となる。


「ヤダ〜、何!?あの人達」


「こわい〜泣」


「教頭先生!

け、警察呼びましょうか!?」


その三人こそ。

イスロ本部から送り込まれたゲリラ式戦闘ヒューマノイド…………

カイト・マーフィ・ケビンの

”キッド三人衆”であった!!


学校内の誰もが、何の対処も出来ない中。

目を吊り上がらせながら、たった一人で校門へ向かう女子生徒が居た。


由美香だ!


「なに?アンタら」


マーフィが口笛を鳴らす。


「ヒュ〜!」


ニヤニヤ笑うカイト。


「ネーチャン、パイオツデケェな」


三人の男を睨み付けて由美香が言う。


「アンタらみたいなのがウロチョロしてっと、みんなビビって困るんだけど?」


変わらずニヤニヤしながらカイトが答える。


「オレら、ココにヨージがあるもんで」


カイトを睨み付けながら由美香が吠える。


「何のヨージか知んねぇけど?

ココはアンタらみたいなのが来るとこじゃねーんだよ!

とっとと帰んな!!」


フフン、と鼻で笑ってからカイトが言う。


「エリック=ティーチャー呼んできな。

したら、大人しく帰るわ」


「エリック?

エリックに何の用さ!!」


「やっぱ居るんだな………ココに。

オメーには関係ねぇ、さっさと連れてきな!」


「そうは行かねーよ!!」


由美香も譲らない。

自分の縄張りとしての母校を外敵から守る意地もある。


一方で、ケビンが懐からバタフライ・ナイフを取り出し、開けたり閉めたりし始める。

ケビンは3体の中では細身の方だが、身長は一番高く。

頭からボトムまで黒のビーニー、トラックジャケットとパンツを纏い、アブナイ雰囲気を発する白人形態だ。


「イタい目見る前にティーチャー呼んできな、ボインのネーチャン」


カイトの脅しにも顔色を変えず言い返す由美香。


「ウチのカレシは警察だよ。

何かあったらタダじゃ済まないからね!」


カイトはパン!と手を叩き、大笑いする。


「オメーのようなビッチのオトコが、ケーサツだぁ?

こりゃケッサクだ!」


「ビッチじゃねぇよッ!!」


顔を真っ赤にして怒る由美香の背後から、騒ぎに気付いて出て来た人間形態のエリック=ティーチャーが声をかける。


「What happened?

ユミカ」


男達の表情が変わる。


両腕を広げ、エリック=ティーチャーをハグするカイト。


「…………ティーチャー!

ティーチャー・ニキ。

やっと会えたぜ!!」


後の二人、マーフィとケビンも代わる代わるハグする。


「Brother!!」


唖然とする由美香をよそに、エリック=ティーチャーへ告げるカイト。


「ティーチャー・ニキ。

オレら、あんたの弟だ!!」


エリック=ティーチャーは暫く考えていたが、ふと、いつもの屈託ない笑顔で由美香に向き直った。


「ユミカ!

モウ、ダイジョウV!!ダカラ、キョシツ、モドリナサーイ!!」


由美香は心配する。


「ホントに大丈夫?」


カイトが応じる。


「ネーチャン、心配ねぇから。

ちぃとばかしニキ借りるよ」


心なしか、三人衆の顔も穏やかになったように見えた。



由美香が校舎へ戻ったのを見届けて、エリック=ティーチャーを入れた四体のゲリラ式戦闘ヒューマノイド達は改めて話し始めた。


「ティーチャー・ニキ。

メタボオヤジは、あんたを始末する気だ!」


カイトの言葉に。

エリックに戦慄が走る!!



〈ブラザー・完〉

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