科学を悪に使う者。
…………イスロから解雇を受けた須賀大介は、日本へ帰国していた。
彼は工学博士にまでなったロボット研究者だが、あくまで仕事はプライベートを充実させる為と割り切っていた。
学生時代からロボットコンテスト=ロボコン出場に熱を入れていたのも、成績に加点して貰える為であり。
とくだんロボットを好きだとか、興味を持っていたわけでもなかった。
帰国したら、暫くはマイ・ブームであるソロ・キャンプでもしながらノンビリ過ごそうか?と考えていた。
そんな須賀は、ある日。
ふと訪れた街の外れに、人が集まっているのを見つける。
最初は何かの記念行事か?とも思ったが、重苦しい雰囲気の中で人々は花を手向けていた。
そこには
"愛玩動物供養塔”
と刻まれた、墓石のようなものがそびえていた。
時折、すすり泣きとともにペットらしき名前を呼びかける者。
犬や猫の写真の入った額を手に立ち尽くす者。
花と一緒にドッグフードやキャットフードの缶詰や袋、動物用のおやつを置いて行く者が続いていた。
母親に連れられた小さな女の子が
「ミケ、天国で元気でね」
と手を併せている。
老夫婦の夫が寂しそうにつぶやく。
「わしらの息子が……あんな風に殺されるなんて」
妻は涙にくれて何も話せない。
「一体誰が…………誰が、あんな凶悪なロボットなんか作ったんだ!?
あの猫ロボットなんか出てこなければ…………シロは死なずに済んだのに!!」
傍らに居た中年男性も同調した。
「そうだ!!
ワザと猫の姿に作って、誘き寄せて……焼き殺すなんて。
何故そんなひでぇことを!?
何の目的で!?」
聞いていた須賀の顔から血の気が引いた。
(…………シュワルツ・カッツだ)
すぐに気付いた。
一時期、首都圏を震え上がらせた
”愛玩動物焼死体事件”は。
警察の捜査でも解決の決め手が無いまま、いつの間にか収まっていた。
目撃者の話と、幾つかの写真や映像に写された”猫型ロボットらしきものが火を吹いていた”という限られた情報以外は残されずに。
しかし。
本当の意味で、その事件は収まってはいなかった。
失われた多くの尊い命。
人々の胸に残った大きな傷。
払われた代償は、余りに大きかった。
「俺達の大事な家族を、こんなにしやがって!!
ロボット作った野郎、出てこい!
ぶっ殺してやる!!」
拳を握り締めた中年男性が、供養塔を殴り付ける。
彼の瞳からも涙が溢れ出ていた。
須賀は、気が動転した。
(僕は…………取り返しの付かないことを、してしまった!)
"そのロボットを作ったのは僕です”
と言う勇気を持てない自分………
全てに責任を持たず、楽な道ばかり選んで来た自分に今更ながら懺悔し、絶望の涙を流す須賀。
一生背負い続けなくてはならない十字架の重みに、押し潰されそうになっていた。
…………都内、美枝の研究室。
クリティカル 電 デモリッシュ 以外の新しい電磁破壊技の開発が始まっていた。
イスロが新たに戦闘ヒューマノイドを送り込んで来た際、特に接近戦に於いて打撃のみでは対抗が難しくなる恐れがあり。
接近戦でも有効な電磁破壊技の必要性が発生したからだった。
情報提供は、エリック=ティーチャーからだった。
「ドメニコ、バトルヒューマノイド、タクサン、タクサン、スタンバイ!
モスグ、ニッポン、クルカモ!!」
既に”マイボス”とは呼ばない。
エリック自身も破壊されかけたからだ。
イスロの目論見は、あらかじめ美枝も予想していたことではあった。
しかしエリックの口から伝わることで、それが真実味を帯びて来た。
以前のような駄々っ子の麻衣も、もう居ない。
(もっと強くならなきゃ!)
イスロ・戦闘ヒューマノイドを迎え撃て!
麻衣!!
〈科学を悪に使う者・完〉




