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父の思い。

中米・イスロ本部では。


活動を期待されていたゲリラ式戦闘アニマロイド「シュワルツ・カッツ」が、同じゲリラ式の戦闘ヒューマノイド達に破壊された事実が伝わっていた。


この結果に、総帥ドメニコは

”おカンムリ”だ。


「な〜にやっとる!!

スパイ能力も攻撃力も、ヒューマノイドを遥かに凌ぐのではなかったのか!?

成果も、ノラネコ達をバーベキューにし、アホなティーチャーを丸焼きにしただけ…………何たる期待外れ!

しかも、ヒューマノイド達が結託して破壊するとは!!

Dr.スガ!

どう説明してくれる!?」


須賀は相変わらずだ。

このような結果に至っても尚、態度は変わらない。

烈火の如くの総帥ドメニコの傍らにありながら、自身のスマートフォンに目を向けたままである。


「……まあ。

壊れちゃったのは仕方ないっしょ。

所詮ロボットは作り物なんだから」


ドメニコは、おもむろに須賀のイジっていたスマートフォンを取り上げ、床に叩き付ける。


「あ…………何するんですか」


堪忍袋の緒が切れたドメニコ。


「貴様!!

人が話をしとる時にスマホなんかイジっとるんじゃないッ!!!

どうゆう教育を受けとるんだッ!!?」


激昂する御大の前でもマイペースな須賀。


「…………どうゆう?って

みんな、そうしてますよ」


”口答え”する若者に、更に油を注がれたドメニコ。


「みんなそうしてるだと!?

どこにそんな気狂いじみた奴らがいるッ!?」


須賀は、ものわかりの悪いオジサンだとも言いたそうな顔をして語り出す。


「………それってモラハラですよ。

僕ら、彼女と会ってる時とかだって、自分のスマホ見てても何とも思わないし。

今時”こんなこと”くらいで怒るなんて、有り得ない」


ドメニコは。

爆発しそうな怒りと、上昇中の血圧を抑えるかのように深呼吸する。


「貴様は、兵器開発とデートを同次元で考えているのか。

そんな仕事の姿勢だから、こんなガラクタしか作れないわけだ。

いささか買い被り過ぎたようだな」


須賀は少しだけムッとした。


「僕のロボットがガラクタと言うんですか?

じゃあ、そうゆうんだったら自分で作ってみたらいいじゃん。

自分で作れもしないくせにギャアギャア言うのって、それってただのパワハラですよ」


ドメニコは怒りを通り越して、不思議にさえ思えてきた。

泣く子も黙る政治結社イスロの総帥に君臨してからというもの、ここまで自分に面と向かって楯突いた者は居ただろうか?と。

コイツは神経が麻痺しているのか?

それとも地球外生物なのか?


「……本来なら。

軍法会議に掛けるまでもなく、貴様は処刑されている。

たが今回に限り命だけは助けてやろう。

貴様はクビだ。

とっとと失せろ」


それでも須賀は顔色を変えない。


「ああ、全然いいけど。

元々ここもすぐ辞めるつもりで来てたんで」


「はあ?」


またしてもドメニコは面食らった。

コイツ……仕事を何だと思っとるんだ!?


「それじゃ。

壊されたスマホ代、経理に請求しとくんで。

あと退職金も」


最初から最後まで、顔色一つ変えず。

そそくさと須賀は出ていった。


腹の虫の収まらないドメニコは、日向を呼び付ける。


「プロフェッサー!!

何なんだ、あのスガとかいう若造はッ!?

奴の脳ミソには”礼儀”や”常識”という言葉は入ってないのか!?

日本の若者は、みんなああなのか!?」


ドメニコの八つ当たりに、ヤレヤレといった顔の日向。


「サー・マングスタ。

私も教育者ではありませんし、今の日本の若者全てに当てはまるとは言い切れないのですが…………

日本にはZ世代という、今の時代特有のジェネレーションが存在すると聞きます」


「Z世代!?」


聞き慣れない言葉に目を見張るドメニコ。

日向は言って聞かす。


「…………1990年代後半から2010年代にかけて生を受けた彼らは、生まれついてのデジタルネイティヴとも言われ、ネットインフラに組み込まれ育った結果。

何の抵抗も無く自己発信を行なえるという習性を身に付けています。

それは単一の価値観に縛られない多様性・個人の尊重・独自の社会観を持ちつつ、他者のそれも認める等の特徴を得る源泉ともなっていますが、反面。

無理・無駄・ムラ、意味の明確でない迎合を極端に嫌う傾向も見られる為。

それが時に他の世代の持つマナーやしきたり等を拒否する行動に出ていると言われています。

彼が常々早く仕事を上がろうとしていたのも、そうした伏線の元に行ったことではないかと」


「何につけ、効率重視ということかね?」


「まあ、そんなところでしょうか。

…………しかしながら、サー・マングスタ。

私自身思うに、その傾向を持つ者は研究者としては不適格かと思われます。

研究者は即ち”探究者”です。

それに携わる者が、効率だの、時間だのを優先してばかりでは満足な結果を得る事など、出来るわけがないからです。

今後の人選に参考にして頂ければ幸いです」


シュワルツ・カッツの敗北は、人選の敗北……………

日向の意見に、ドメニコは自らを省みることになった。


「………わかった、プロフェッサー。

君の意見こそは、常に的確かと思われる。

今後は注視して行こう。

…………ところで、プロフェッサー。

これは戦闘ヒューマノイドの話だが、優秀な故にヒューマノイド同志で”会合”なども開き始めているらしい。

優秀なAIは、ある程度の自己意志は発生して然りだが……………

我々の意図と袂を分かすようでは怖い。

こちらも今後、意見を仰ぐこともあるだろう。

よろしく頼む」


いつになく、鬼気迫る表情のドメニコに日向は頷きながらも。

その内心は希望を見出していた。


(娘達よ…………

それでいいんだ!

手を取り合い、強くなっていってくれ。

そして、人々の平和と自分自身を守るんだ!!)


これこそが。

素体を残しつつ、自身の娘達を戦闘ヒューマノイドに改造した日向の真意だった!!


〈父の思い・完〉


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