総力戦。
…………夜の路地裏で、憎き機械獣シュワルツ・カッツと相まみえた麻衣!
闘いの火蓋は切って落とされた!!
人とは違う、獣特有の習性を生かし開発された戦闘アニマロイド……シュワルツ・カッツは。
その動きの俊敏さと柔軟さで麻衣を翻弄するかに見えた。
だが、それも戦闘ヒューマノイドの麻衣には見切ることが出来た。
麻衣の電子頭脳がシュワルツ・カッツの行動パターンを習得した後、まるで達人のクレー射撃のように”標的”を打撃する!
地面を脚で蹴って走り回る際は俊敏に方向を変えられるが、空中へ飛び上がった際にシュワルツ・カッツは方向を変えられない。
飛び上がる度に拳やキックといった麻衣の打撃技を食らい続け、体内のダメージも蓄積していった。
業を煮やしたシュワルツ・カッツ。
自身の必殺技・8,000ボルトのアーク放電を発するべく、予備放電開始!
麻衣も決着を付けようと、クリティカル 電 デモリッシュ への態勢を取る。
そこへ突然、白い塊が横切った。
ニャーミーだ!
飼い主の麻衣を案じて、助太刀に来たのだった。
動きの鈍いながらも攻撃のポーズを取り、勇敢に立ち向かおうとするニャーミー!!
「ニャ〜オ〜〜〜〜!!」
ギシャー!!
そんなニャーミーへ
”飛んで火に入る夏の虫”
と言わんばかりに襲いかかるシュワルツ・カッツ!
さすがに運動神経の良くないニャーミーでは太刀打ちどころか、逃げるのすらままならない!!
「ニャーミー!!」
かばおうとする麻衣も間に合わない!
ニャーミー危機一髪!!
そこへ!
グギァァァァァァァ
何者かの飛び蹴り一閃!
シュワルツ・カッツは吹き飛ばされる!!
「エリック!!」
戦闘ヒューマノイド姿のエリック=ティーチャーだった!
「カイ、ヌシ、ノ、セキニン、ハタス!!」
エリック=ティーチャーは言ったが、麻衣は見抜いていた。
彼が本調子でないまま、研究室を抜け出して来たことを!
シュワルツ・カッツに飛び蹴りを一発お見舞いしたエリック=ティーチャーは、そのまま片膝を付いていた。
「エリック!
アイツの相手は、わたしするからエリックはニャーミーをお願い!!」
「……ワカタ!」
エリック=ティーチャーはニャーミーを抱き上げ、電信柱の影で麻衣を見守る。
シュワルツ・カッツは麻衣の標的になるのを恐れ、且つ有効にアーク放電を浴びせるタイミングを伺うかのように動き回る。
打撃技と違い クリティカル 電 デモリッシュ も、ある程度相手に照準を定められる状況でないと的を外してしまう。
(何かに釘付けにしないと!)
膠着状態が続いた。
と、シュワルツ・カッツが何かに噛み付きアーク放電を開始!
黒い甲冑姿、流れる金髪。
またしても突如現れた華裏那だった!!
華裏那は自ら差し出した右腕に
シュワルツ・カッツを噛み付かせ、動きを止めている!
以前解説済みだが、華裏那の纏う装甲は発電所の高電力をも通さない強力ラバーで出来ている。
しかし、麻衣は躊躇する。
クリティカル 電 デモリッシュを命中出来たとしても、その誘爆で華裏那もタダでは済まないだろう……そう思うと技を繰り出す決心が付かない!
そんな麻衣に華裏那は、アーク放電を浴びながら促す。
「早くしな!
何グズグズしてる!?
そんなことだから、あなたはあたしを越えられないのよ!!」
もはや猶予は無い…………麻衣は覚悟を決めた。
両腕をクロスさせて構える。
クリティカル!
電!
デモリッシュ!!
麻衣の両腕から放たれた、クリティカル 電 デモリッシュ は。
華裏那の腕に噛み付いたまま無防備となっている、シュワルツ・カッツの背面を直撃!!
たまらず断末魔の悲鳴が上がる!
ギアアァァァァァァァ
ドッ
ドドーン
シュワルツ・カッツの最期!
自らが昇圧回路となり誘爆を起こし、木っ端微塵に砕けて果てた!!
……華裏那は。
爆発直前に空中高く跳躍した為、無事であった。
「あらよっと」
イスロの送り込んだ”世紀の化け猫”
シュワルツ・カッツとの闘いは終わった。
「……ちょうど面子が揃ったんで、あたしから皆に言いたいことがあるの。
いい?」
ニャーミーを抱いたエリック=ティーチャーが電信柱の影から出てくると、音頭を取るように華裏那が言った。
「…………麻衣。
あなた、イスロを知ってる?」
珍しく華裏那に自分が名前で呼ばれたことで、麻衣は意外に感じた。
「…………うん。
この件があって、初めて知った」
麻衣は”コマンドのことは?”と訊きたかったが……今までと何か雰囲気の違う華裏那の話を聞くことにした。
華裏那は続ける。
「あたしね………前々から、どうしても信頼しきれなかったの。
あの組織がね。
ティーチャー、あんたも災難だったわね」
華裏那に労らわれて、エリック=ティーチャーも少し照れくさそうにした。
「セッカク、カワイイネコチャンGetシタ、But!!
ヒドイメ、アッタ!!」
麻衣も、改めて憤りが込み上げて来た。
「ホントにそう!
エリックを騙したのもそうだし、何の罪も無い、たくさんの猫ちゃんやワンちゃんの命を奪って…………
絶対許せないわ!!」
激昂する麻衣に華裏那は言った。
「……………麻衣。
あなたを標的にするというコマンドにも、もう従わないことにしたいの」
え!?
と目を見開き、耳を疑う麻衣。
「…………華裏那。
どうして?」
華裏那は、少しバツの悪そうな笑みを浮かべながら話す。
「まあ……
そうゆうことも含めて、どこか皆と話せる場所へ移動したいんだけど、どう?」
こうした機密性の会話をするには、余程客足の無い店に入るか、会議室等を借りるしかないが。
そもそもが飲食も出来ないロボット達であり、店には入れない。
猫まで連れている。
麻衣が提案する。
「じゃ、ウチに来ない?
お母さんに連絡するから」
麻衣は時刻を確認する。
もう、23:00を過ぎていた。
母親の美枝に電話すると、まだ就寝はしていなかった。
それもそうだ、”猫型殺戮兵器”を退治すると家を出た娘が心配で、帰宅を待っていたのだ。
こともあろうに、ニャーミーまで付いて行っている。
麻衣の無事を知りホッとしたのも束の間、これから
”戦闘ヒューマノイド一座”
が家に来ると聞き、電話の向こうで仰天する美枝!
…………とにかく、一行は夜の街を来迎寺宅へと向かった。
〈総力戦・完〉




