的中。
……………剣持は由美香と恵比寿で会った日の夜、再び日向武雅博士に関する情報検索を開始した。
”W”の頭文字の検索サイトは既に世間では有名だが、なんと剣持は由美香に教わるまで知らなかった。
これには由美香も驚きを隠せなかったが
「みんな辞書代わりに使ってるよ」
と、教えてくれたのだった。
”日向武雅”
と入力し、表示された項目の中で、その検索サイトを探した。
やはり数多い日向の研究成果についての情報を掻き分けなくてはならなかったが、かなり下の方にようやく”W”の頭文字を見つけることが出来た。
「あった!これだ。
えっと………………
日向武雅。
日本のロボット研究者・開発者。
工学博士。
198X年X月X日生。
学歴;199X年XX大学工学部卒、200X年同大学院博士課程修了………………」
そこには日向のプライベートな内容が書き連ねてあり、まさに剣持の求める情報に近付いてきた感があった。
そして剣持は。
日向の”家族構成”の項目を見つけ、釘付けとなる!
「配偶者、来迎寺美枝、
ロボット研究者、20XX年離婚!?
って、来迎寺麻衣の母親じゃないかッ!!」
剣持は目玉が飛び出しそうになった。
鼓動も早くなってくる。
更に”子”についての記述を確認しようと、深呼吸した。
「…………子。
女児一名」
名前は記していなかったが。
そう綴ってあるのを剣持は、その眼で確かに見届けた。
アパートの一室に、暫し静けさが続いた。
10分程ソファに座りこんだ後、剣持は立ち上がり。
アパートの窓を開けた。
外は間もなく10月の終盤となり、夜風だけではない、空気の冷たさが顔に沁みた。
剣持は、北陸地方の雪深い里に生まれ育った。
そこでは10月を過ぎ、11月の声を聞くと山々が初冠雪の化粧をし始める。
”冬を迎える”準備も始まる。
上京したばかりの頃、秋から冬にかけて周囲の人々が
「寒い、寒い」
とやたら口にするのが気に障ることがあった。
剣持の地元では、誰もが
「寒い」
などと言うのを聞いたことが無い。
寒いのは当たり前だからだ。
更には
”寒いだけでは済まない”
からだった。
剣持の地元での冬の到来とは、雪との格闘の幕開けを意味していたのだ。
多い時には一晩だけで1メートルの降雪も珍しくはない。
電車も止まり、通っていた高校が休校の日も当たり前のように有ったが、休校だからといって呑気にはできない。
そんな日は親と一緒に屋根に上がっておびただしい積雪を下ろし、下ろした雪を更に近くの小川まで運んでは流して家を守った。
それだけで1日が終わってしまった。
そんな雪との格闘の日々が、雪が降らなくなる4月の中旬まで続くのだった。
だからであろうか、若き剣持が
”何もしなくていい”首都圏の冬を拍子抜けする程楽に感じていて、それでも寒い、寒いという人々を見下していたのは否定出来ない。
アパートの窓を閉め、ソファに座り直し。
剣持は苦笑いする。
「俺も、寒がりになったもんだな」
故郷に居る両親を思い出す。
今頃、雪囲い(家を取り囲み、積雪からガードする木材)に使う新しい木材を買い足しに行ってるんだろうか…………
来迎寺麻衣は、両親をどう思っているのだろうか?
そして、消息を絶ったままの父親は今、どこで何をしているのだろうか?
暴かれた結果に剣持は衝撃を受けながらも、新たな想いが生まれて来たのを感じていた。
〈的中・完〉




