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ハロウィンチュー。

………………S工業大学の助教授・飯塚と会った翌日。


剣持刑事は久しぶりに都内恵比寿の模型店「Mrs.CRAFT」(ミセス・クラフト)へ立ち寄り買い物をした後、いつもの斜め向かいの喫茶店で時間を過ごしていた。


今回の買い物は1/62スケールの1983年型三菱ランサー・ターボのラリー仕様車。

運転席側と助手席側のドアが開閉する。

このモデルも絶版なのだが Mrs.CRAFTで”新車”が見つかった。

最近はリサイクルショップのホビーコーナーでも絶版ミニカーを扱っているが、保存状態に当たり外れがある為、剣持も極力こうした専門店で新車を探すことにしている。


今日は、ここで由美香と待ち合わせ。

刑事と高校生、なかなか会うにしても都合が合わないので、こちらも久しぶりと言えば久しぶりだ。


店に入り、由美香を待つ間。

剣持は、前日に飯塚から初めて聞いた人物である日向武雅博士に関してインターネットで調べていた。

検索で出てくる情報は日向のロボット開発に於ける業績についての内容で埋まっていたが、剣持の知りたいのはそれだけではなかった。


そうしていると店の入口のチャイムが鳴り、息せき切って由美香が入って来た。


「ごめ〜ん、待った〜!?」


入ってすぐに剣持を見つけ、テーブルまで小走りに来る由美香。

その素振りが妙に可愛らしく見えて、剣持も思わず笑顔になる。


「やあ、お疲れさん」


剣持が腕時計を見ると、既に夕方4時半を過ぎていた。

秋は夕暮れが早い。

店内の灯りが温かく感じる。


「久しぶり〜〜〜!!

ホントに…………マジで会いたかったよ〜」


二人は2週間程会えなかったが、その2週間が剣持には然程長くは感じなかった。

しかし、由美香には何ヶ月も待たされていたかのように長い日々に感じていた。

毎日欠かさず、3回以上のLINEを交わしていても。

やはり”本人”に会えるのを待ち侘びていた。


「いやあ。元気そうで何よりだね」


「元気でなんかないよ!

剣持さんに会えなくて、思いっきしトーンダウンだったよ」


由美香は少し膨れてみせる。


「ハハハ、ゴメン。

何でも好きなの頼んでよ、奢るから」


由美香はメニューを皿のように見つめたが、思い付くのは只一つだった。


「じゃあ、フルーツパフェ!!」


剣持は店員を呼びオーダーを入れた。

一緒にブレンドコーヒーのお代わりも。




この2週間にあった出来事を由美香が話すのを、剣持は聞き入る。


(友達の間では強面のギャルで通してるんだろうけど、ホントは普通の女の子なんだな)


時折パフェを口に含み、舌鼓を打つ由美香の笑顔が剣持の気持ちを和ませた。


「そうだ!

コレ、絶対言いたかったんだった!!」


由美香が急に何か思い出したようだった。


「なになに?」


少し、ドキッとする剣持。

いきなり由美香が顔を剣持に近づけたからだ。


「あのさ……会っちゃったんだよ、ヒーローに!」


剣持と見つめ合いながら、由美香が小声で囁く。


「……ヒーロー?」


剣持は前日の飯塚の言葉を思い出す。


(私は信じますよ!

そのロボットが、キカイダーにも負けない”正義のヒーロー”であることを)


…………まさか!?

剣持は表情を変えて、由美香の話を聞き入る。


「そうそう!ウチがピンチの時に、どこからともなくやって来てさ、助けてくれたんだ〜!!

ガチカッケーくて、なんかの撮影!?かと思ったくらい」


剣持は身を乗り出した。


「それで!?

その、ヒーローは。

どんな感じの人だった!?」


それまでと打って変わって、異様な程興味津々の剣持に由美香も嬉しくなり。

得意気に話を続ける。


「ん〜とね、人?っていうか……半分ロボットみたいなさ、女の子っぽかったんだけどぉ!

メッ……………チャ、カッケーかったよ!!♡

ビームみたいなの出してさ!!」


由美香はクリティカル 電 デモリッシュ のポーズを真似ながら、さも愉快そうに説明している。


(間違い無い!彼女だ!!)


剣持は確信した。

”ロボットのような謎の人物”

が、再び現れたのだと!


「そのヒーローの女の子とは、何か話せた!?

名前とか!?

どこから来たのかとか!?」


剣持の急な剣幕に、由美香も驚く。


「あ…………その子と、どっかで会ったことある気がして…………聞いてみたけど、それは無いって」


「どこかで会った気がした?」


「うん!その時は思い出せなかったんだけど、後々から考えたら、ホラ、あの子!」


「あの子……って!?」


剣持は更に身を乗り出し、キスできそうなくらい顔を突き出したので。

思わず由美香は赤面してしまう!


「…………あの、剣持さんも会ったことある、麻衣って子。

あの子に雰囲気とか、声が似てると思ったの」


思わず剣持は叫びたくなった!

やっぱりそうだ、真行寺麻衣と、絶対何か関わり有るんだと!!

自信を持てた剣持、顔に笑みが溢れ出る。


それを見て、由美香の表情も180°変わった。

何か誤解したようで……鬼のような形相だ!


「…………やっぱり。

何か怪しいって思ったら、あの子と何かあったのね!?

何さ、会えない会えないって言っときながら、あの子と会ってたのね…………許せない!!」


今度は思わぬ由美香の剣幕に、剣持が慌てる番だ。


「ちょ…………ちょっと待ってくれよ、由美香ちゃん!何の誤解だよ!?

そんなのあるわけないだろぉ!!」


「誤解!?

誤解だって言うんなら、チューして!!

今すぐここでチューしてみてよ!!」


辟易とする剣持。


「わかった、でも、ここはお店だからムリ…………」


「じゃあ!外でしてよ!!今すぐ!!」


普通のサラリーマンさえ、往来でセーラー服の女子高生とキスなど注目度抜群なのに。

警察の人間がするなど、ただでは済まないだろう。

困り果てた剣持、ヤケを起こす。


「わかった!今度のハロウィンにしよう!ね!?必ず、約束する」


「ホントにィ〜〜〜!?」


「ああ!ホントのホントさ……」


最後はしどろもどろになる剣持であった。


「オッシャ〜〜〜!!

ハロウィンチュー、確約だぜ!!」


勝利宣言の由美香。

満面の笑みだ!


結局、その後は由美香にフルーツパフェのお代わりを追加して上げて、お店はお開きとした。

千葉方面へ帰る由美香とは恵比寿駅で別れることにし、帰り際。


「…………今日は、ごめんなさい。

ワガママ言って」


ほとぼりの覚めた由美香は、しおらしくなっていた。

涙さえ浮かべている。


「また、ハロウィンまで会えないんだね…………サビシイよぉ」


駅のロビーで。

本当に泣きそうな由美香の肩に、剣持は手をかけて言った。


「もう、ハロウィンまで1週間切ってるじゃないか。すぐに会えるよ」


「……ウン、すぐだよね!

ホントにすぐだよね!!」


剣持は由美香が電車に乗り込み、手を振るのが見えなくなるまでホームで見送った。


…………帰宅すると剣持は、由美香から来たLINEを開き他愛もないやり取りの後、オヤスミを交わし合って閉じた。

その後改めてインターネットで日向の情報を検索したのだが…………

そこで驚愕の真実を知ることになる!!


〈ハロウィンチュー・完〉

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