涙のカミングアウト。
いよいよ!
麻衣の高校の学園祭が始まった!!
学園祭には学校界隈の住人方々、他校の生徒達も大勢訪れ。
賑わいを見せている。
麻衣のクラス出し物である”オバケ屋敷”も盛況振りを見せている!
そんな麻衣のクラスへ、見慣れた顔の客がやって来た。
剣持刑事37歳であった。
「よっ!
御盛況だね、お疲れ様!!
来迎寺さん」
「あ!!
剣持さん、来てたんですね!
今日も聞き取りですか?(笑)」
「まさか(笑)!
せっかくの学園祭だし、非番なもんでね。
ちょこっと観に来てみたんだけど……いや、今時の学園祭って、みんな本格的なんでビックリだね!!」
「そうですか!
ウチのオバケ屋敷は急ごしらえのばっかりなんだけど、意外と?みんな怖がってくれて。
それ見てる方が面白いです(笑)!
楽しんでってください!!」
「ありがとう!」
…………実は、剣持が来校した目的は他にもあった。
先日、由美香からLINE IDを教えてもらっておきながら、そもそも自身はLINEを使用することも登録することも未経験だった為。
由美香にメッセージを送るすべを知らず、困り果てていたのだった。
当時ハッキリと「LINEは未経験」と由美香へ伝えれば良かったのだが、本来の目的である麻衣への聞き取りと。
由美香から好意を示され茹でダコ状態となりアタマがいっぱいとなった為、ついつい伝えそびれてしまったのだった。
剣持は、自身の愚かさを心底恥じていた。
しかし、良いタイミングで学園祭となっていた。
学園祭開催中は、いかなる部外者でも校内を自由に行き来できる。
由美香に直接会って真実を伝える機会は、この時しかない!……………剣持は、そう考えながら。
学園祭で賑わうキャンパスへと赴いたのだった。
しかしながら、肝心の由美香は何処にいるのか?
剣持は由美香が麻衣より一学年上だということさえも聞いていなかった。
ただ、麻衣と接していた様子から同学年ではなく、むしろ先輩にあたりそうなことは勘付いたつもりだった。
まずは3年生の教室を片っ端から廻るしかない………と、学園祭で普段より混み合う、3年生教室の廊下をすり抜けるように進んで行く剣持。
その時だった。
いきなり、目の前に由美香が現れた!
由美香は剣持を見つけ。
一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに厳しい表情に変わり。
黙ってすれ違い、剣持を無視して去って行く。
「……ちょっと!
ちょっと待ってくれ、由美香ちゃん!!」
剣持は人混みの中、由美香を追った。
由美香は足早に、逃げるように進んで行く。
ようやく追い付いたのは、校舎を出て広場の中央まで来たところだった。
「…………待ってくれ、由美香ちゃん。
LINE出来なかったのは、理由が」
由美香は遮る。
「もう、ウチらは関係ないから」
再び去ろうとする由美香の腕を、剣持が掴む。
「聞いてくれ!
………俺、LINE使ったことも無いんだよ!!」
「!?」
剣持に腕を掴まれたまま、由美香は睨み付ける。
「………今時、LINE使ったことが無い?
ハン!(笑)
そんなバカなウソ通じると思う?」
由美香は剣持の手を振りほどこうとする。
「ホントなんだって!!」
「離してよ、離して!!」
揉み合いになる二人を、学園祭に集まった人々が”何事か?”と見物し始める。
騒ぎに気付いた麻衣と栄太も駆け付けた。
手を振りほどくのを諦めたかのように、力の抜けた由美香が振り返る。
由美香は、泣いていた。
「どうせ………あなたにとって、ウチなんか………ただの通りすがりだったんだ…………ちょっと、振り向いてみただけの……………異邦人だったんだ!
けど………けど、ウチは違ってたんだよ!!」
由美香の頭の中には。
1970年代の昭和の名曲が鳴り響いていた…………
そして、それは剣持も同じだった。
確かに、出会った時。
剣持にとって女子高生の由美香は、まさに異邦人のように見えたかも知れない。
いや、異邦人を通り越して宇宙人にさえ見えたことだろう。
しかし、今は違っていた!
目の前に居るのは紛れもなく。
一人の男のことを一途に想い倦ねる、一人の女性に他ならない。
「…………由美香ちゃん。
俺のスマホを見てくれ」
剣持は自分のスマートフォンの画面ロックを解除し、アイコンの並んだホーム画面の状態で由美香に手渡した。
「…………設定画面のアプリのとこも開けて見てくれ。
LINEのアイコンは、あるかな?」
由美香は剣持のスマートフォンの中にLINEアイコンを探した。
どこにも、見つからなかった。
「由美香ちゃん………
俺がアプリ音痴なばっかりに、失礼なことをしてしまった!
本当に、御免よ……!!
あの時から。
君を忘れた日など、1日も無かった!」
側で聞いてた麻衣も、これには大きく頷く。
(うんうん!
この人確かにアプリ音痴だ)
由美香は、涙に濡れた頬と瞳のままで剣持を見上げた。
「………………ウチこそ、ごめんなさい」
そこには、喜びと安堵の入り混じった表情があった。
剣持が自分に無関心だったり、自分をウザがっていたワケではなかったことを知り。
悲しみと不安で押し潰されそうになっていた胸が、一気に穏やかさを取り戻していくのを由美香は感じた。
「もし、良かったら。
LINEの設定……俺に教えてくれないかな?」
剣持は気恥ずかしさで、苦笑いの顔をして由美香に頼んだ。
「…………ウチ、やったげる!
全部やったげるよ!!」
剣持からスマートフォンを借りると、由美香は目にも止まらぬ速さでLINEアプリをダウンロードし、途中パスワードを決める時だけ剣持に寄り添い。
後はサクサクと友だち追加画面を開いて自分のQRコードを読み込ませ。
あっという間に剣持と自分を繋いでしまった!
「ありがとう、由美香ちゃん!
これからも俺に、いろんなこと教えてね!!」
「うん!もちろんだよッ!
剣持さんも、ウチの知らないこと、いっぱい教えて!!」
固く手を取り、見つめ合う二人。
学祭広場から歓声が上がった。
刑事と生徒。
37歳と18歳。
そして………
”オッサン=キモい”
”女子高生=コワい”
という、身分・世代の違いや既成概念・思い込みの壁を全て乗り越え!
ここに一組のカップルが誕生したのだった!!
この…………学園祭の地に!!!
(………やれやれ。
マジで世話の焼ける人達だこと笑)
麻衣も、肩の荷が降りた気持ちになった。
「ズズッ ズズッ 」
ふと?横に居る栄太から、しきりに鼻をすする音がする。
見ると栄太は感動のあまり、もらい泣きしていた。
「ホラッ!!」
笑いながらバン!と、思いきり栄太の背中を叩く麻衣。
学園祭の賑わいは、夕方になっても続いていた。
〈涙のカミングアウト・完〉




