本部混乱!!
「(Mr.ヒュウガ!
ここを出た方がいい!
今すぐ!!)」
日向達の居る部屋に、バヤルが飛び込んで来た。
「(どうしたんだ?バヤル)」
目を丸くする日向とナタリアに、息せき切りながらバヤルは言う。
「(警察が、ここを嗅ぎ付けた。
外で兵達と銃撃戦になってる!)」
日向は確信した。
救援が来たのだ!
バヤルは続ける。
「(兵達は、この地下に立て籠ろうとするだろう。
その前に出ないと……!)」
ここを出る…………ということは、即ち脱出するしかないということか。
日向はバヤルに頼んだ。
「(バヤル。
ナタリアを脱出させてあげてくれ!
私は残る)」
バヤルは驚異の表情をする。
「(Mr.ヒュウガ!
貴方も一緒に脱出しなきゃ危ない!
どっちみち人質に取られるか、殺されるだけだ)」
しかし日向は首を振り続ける。
「(前にも言ったが、私には。
どうしてもやらなくてはならない事が残っているんだ。
例え命がかかっても!)」
そうこうしているうちに、兵士達の怒号が聞こえて来る。
バヤルは有無を言わさぬ剣幕で二人に呼びかける。
「(とにかく、この部屋を出るんだ!!
話は後だ!)」
三人は急ぎ部屋の入口から廊下へ飛び出した。
向こうから血相を変えた兵士達が銃を抱えて走って来る。
しかし、日向やナタリアには一瞥もくれる余裕も無い様子で、皆、擦れ違って行く。
それだけは不幸中の幸いとも言えた。
廊下を走りながら、日向はバヤルに言った。
「(バヤル!
とにかくナタリアだけは外へ逃がしてくれ!
ナタリアが警察に保護されるように)」
「(今はダメだ!
銃撃戦の真っ最中だ!
下手をしたら流れ弾に当たる!)」
三人は掃除用具等のしまってある、物置き部屋へ辿り着いた。
「(かなり臭いが、とりあえずここに居るんだ!
俺は何か食える物とか探して来る)」
物置き部屋は地下室よりも少し広い気がしたが、バヤルの言う通りドブ臭い匂いがした。
使い古したモップの匂いだ。
バヤルは扉を締めて出て行った。
「(…………これからアタシ達、どうなるのかしら)」
ナタリアは日向にしがみついて震える。
そんなナタリアを抱きかかえながらも、日向の胸の内には僅かながら希望が生まれて来ていた。
"事態は動き出している!”
司令室。
「フッハッハッハ!!
警察が怖くて武器屋が出来るか!」
この事態でも、ドメニコは未だ余裕の表情であった。
「こっちには武器など売る程ある!
向こうの弾薬が尽きるまで続ければ良い。
それで片付く!」
更に…………この後に及び。
「そんなことより、ナタリアはまだ見つからないのか!?」
しかし…………事態は地元警察の部隊が優勢となり。
イスロ兵の部隊は本部建屋内へ敗走してしまっていたのだった。
事情上の"籠城”となったのである。
元々、金目当ての寄せ集め集団であるイスロ部隊であったが。
昨今の総帥ドメニコの体たらくや対外派兵師団極東部隊の壊滅により、構成員達の士気は地に落ち。
ほころびを生んでいた統制では、苦戦も然りである。
…………だが。
イスロには切り札が潜んでいた。
それが、ドメニコに慢心を生む要因でもあった。
剣持刑事37歳は、米国側とのブリーフィング時。
FBI捜査官のジムから作戦の役割分担を聞かされていた。
「(ヒロ。
貴方達、日本スタッフは我々FBIと同行し、人質の救出作業に当たってもらいます。
今回の作戦で最も重要な任務です!)」
ジムは剣持の目をしっかりと見据え、真剣な表情で伝えた。
「(了解しました!)」
剣持も意を決した表情で応えた。
FBI側ヘリコプターに同乗した剣持にも、眼下の森に囲まれた、古い鉄筋コンクリートの建物が見えて来た。
「あれがイスロ本部か!」
人質の解放、救出。
そして……来迎寺麻衣の運命がかかっている!
気を引き締める剣持であった!!
〈本部混乱・完〉




