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人の心。

麻衣一行の乗るプライベート・ジェット「ガルフストリームG600」が、太平洋上で日付変更線を越えた。


この機体の操縦席とキャビン(客室)の間には仕切りが無い。

麻衣は、副操縦士席のカイトと話し込んでいた。


(確か…………キッド三人衆の日本へ来た当初の目的というのは、わたし達を抹殺することだったと聞いたけど。

それがなんで?

心変わりしたのか…………)


麻衣は知りたかったのだった。


あっけらかんとした口調でカイトは答えた。


「…………確かに前も話したが、最初は。

あんたらを"始末して来い”って、送られて来たさ。

あのヘビ野郎と同じで」


ところが、ゲリラ式戦闘ヒューマノイドとして造成されていたキッド三人衆は完成前にAIの生成段階で人間社会の道理を学習し。

単なる"兵器”としてではなく、一個体の理念が積み上げられていったのだという。

その結果、キッド三人衆の電子頭脳はイスロという組織の社会的不整合と同時に総帥ドメニコの目論見そのものにある社会的不整合という結論を導き出した…………

故に、ハナからドメニコのコマンドに従うつもりなど無かったのだ…………

とカイトは説明した。


「…………だが。

オレらには、オレら自身の目的が生まれた。

それが日本へ足を向かわせたってワケだ」


「目的?

…………それが、エリックと会うことだったワケね」


「そうさ。

ティーチャー・ニキが日本に居て、人間社会に溶け込んでる話は聞いてたからな」


雲の塊が機体の下方を素早く流れていく光景を、副操縦士席前方のスクリーンに眺めながら。

カイトは遠い目をして言う。


「……オレらは。

ティーチャー・ニキと一緒に"ヒューマノイドのサンクチュアリ(聖域)”を作るのが目標になった。

あんたなら人間とヒューマノイド両方を経験してるからわかると思うが、まず生活様式が違う。

人間はオレらと違い"飲み食い” "寝る” "排泄”の3つをこなさねぇと生きて行けねぇ。

たまに不具合起こしても、簡単に部品交換や修理も出来ねぇ。

姿形は似てても、そんな根本的なことを共有や理解が出来ねぇとなると混乱する、分けて暮らした方がいいんじゃね?ってなるわけだ」


初めてカイトの……キッド三人衆の秘めていた"ヒューマノイドの夢”を聞いた麻衣。


確かに…………カイトの言う通り、自分がゲリラ式戦闘ヒューマノイドになる前となった後では生活様式もガラリと変わってしまった。

それを秘密にしながら暮らしていたものだから、尚の事ストレスを感じたりもした。

それ故、カイトの言う事も麻衣には理解出来た。


「しかしだな。

この社会で人間達と仲良く出来るかどうかはわからんが、共存は出来るかも知れねぇって考えたんだ。

日本へ来て、あんたやあんたの家族や仲間らと会ってみて、ああ、コイツらとならやってけるかも知れねぇ…………って思った。

あんたのオヤジさんが、オレらに分け隔てなく接してくれたようにな」



麻衣は、先日に学校の講堂で聞いた学園理事長の話を思い出していた。



(重要なのは"人の形をして肉体を持つこと”ではなく、"人の心を持つこと"そのものではないかと思われます)



「わたしは人間の身体を取り戻しに行くけど…………それだけじゃダメなんだ!」


新たな決意を抱き、麻衣は向かう!






イスロ本部。


地下室でナタリアは日向と向き合い、涙ながらに訴える。


「(…………お願い。

少しだけでいい……………

こうさせてて)」


胸に顔を埋めるナタリアを、日向は拒まなかった。


人として…………守られて来なかった、一人の女性の本当に求めていたものが。

日向には伝わっていた。



〈人の心・完〉

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