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【連載】異世界における特異点  作者: とぐさ
第一章 今より少しマシな未来へ
9/47

09 召喚者と転生者

改稿版

 翌日も馬車での移動は続く。


「悠弥、昨夜はシイカと何か盛り上がっていたようですが、何を話していたのですか?」


 悠弥はシイカを見るが、黙っていてくれと言わんばかりの顔をしている。


「オリビアの護衛だよ。」


 悠弥はシイカの制止も聞かずに全部を打ち明けた。


「悠弥殿、それは、、、」


「そうなのですね。シイカが己の身を差し出すと、、、」


 ニヤニヤしながら、シイカを見るオリビア。


「殿下、それはその、、、」


「そう意地悪をしてやるなよ。シイカも嬢ちゃんの護衛で精一杯なんだ。誰かに頼りたくもなるさ。」


 そう言った悠弥を不思議をそうに見つめる二人。


「なんだ?何かおかしい事を言ったか?」


「・・・昨日から感じていたのですが、悠弥は私たちとそれほど年齢が変わらないはずですが、どこか私たちを子ども扱いしていますよね?」


 悠弥は何を言われているのか理解できていない。


「鏡がありますので、これでご自分の顔を見てください。」


 この世界にはまだガラスがないため、鏡は金属を研磨したものだが、それでも映る悠弥の顔は若く見える。


「・・・そうか、すまん。」


 オリビアは少し間をおいて、


「もしかして、悠弥は召喚者なのでしょうか?」


「いや、違うと思う。」


「ですが、空間収納や我々が知らない料理、この世界の常識がない事や拠点の非常識さなど、疑えば色々とありますが、こんな事は召喚者以外に考えられないのです。」


 悠弥は迷った。まだ出会って数日のこの二人に、どう話したものか。


「召喚者ってのは何だ?」


 シイカが話し出す。


「召喚者とは、召喚の儀を介して、別世界から召喚した者を指します。その際、その者は神から特別な恩恵を与えられ、強大な力を持って、この世界に渡ります。」


「それはこの世界の常識なのか?」


「いえ、召喚者は勇者と名を変えて、公表されるため、召喚の儀は国家の上層部のものしか知らない。私は殿下の護衛という立場のため、必然的に知ることになった。私の父上も知っていると思われる。」


(シイカの父親はどっかのお偉い貴族か。)


 続いて、オリビアが話し出す。


「それにもう一つ、これは王族のみに伝えられている事ですが、召喚者は一つの使命を持って、現れると言われています。前回の召喚は300年前、、、」


 前回の召喚は300年ほど前、ブレイン聖王国が行い、成功した。

 彼らは”魔王討伐”を掲げ、聖王国と戦争状態にあったイブリス魔王国に大攻勢を仕掛けた。

 この戦いで魔王国は魔王を失い、一時的に領土を削り取られる事になったが、魔王討伐を成し遂げた勇者たちは、周辺諸国に被害をもたらすほどに暴れまわった。


 周辺諸国は、聖王国に抗議するもそれを無視したため、周辺諸国が魔王国を盟主とし、連合軍を結成、聖王国との全面戦争へと発展した。


 その勢いは、勇者たちでも抑える事は出来ず、徐々に劣勢に追い込まれるが、世界規模の被害に各国は困窮し、厭戦ムードが限界を迎えていたため、聖王国と魔王国連合は終戦を余儀なくされる。


 聖王国としては、魔王討伐を成し遂げたため、一定の成果を挙げる結果となったが、その他各国は、ただ被害を被っただけの戦争になってしまった。


 その後、勇者は聖王国から見放され、各国からも追われ、最後は北に逃れて、その一生を終えたとされている。


「その話を聞く限り、俺は召喚者ではないな。」


「では、それに準ずる者なのか?」


 彼はシイカの言葉に一瞬、詰まる。


「・・・そうだな。召喚とは少し違うかもしれん。俺はここより遠い世界から来たのは確かだが、その世界ではもう40歳を超えるおっさんだった。だから、今若返っている事から転生、新しく生まれ変わったんだと思う。」


「そんな事があるのか?」


 二人は驚きを隠せない。


「だが、実際はそうだ。俺をこの世界に送り出した奴は、自分を”神に定義される存在”だと言っていた。」


 悠弥は転生までの話を二人に説明した。


「では、悠弥殿のその力はその者に与えられたと、、、」


「そういう事になる。二人の話を聞いてた限りでは、魔法もそれほど発展していないみたいだしな。」


 悠弥は生活魔法の見せる。


「その絵というか図形のようなものは何だ?」


「これは魔法陣だと思う。二人の様子だと、この世界の魔法は違う体系なんだろ?」


「私も初めて見ました。」


 二人は魔法陣を観察する。

 悠弥は魔法陣と自分が使う魔法体系について、説明する。


「仮に俺が召喚者だった場合、俺に使命とかいうものはない。ただこの世界で好きなように生きろと言われただけだ。今までの話をまとめると、俺は召喚者ではなく、転生者という事になるだろうな。」


「両者にどうのような違いがあるかは不明ですが、明らかに違う意図でこの世界に召喚されたという事ですね。」


 この一連の流れに、シイカが何かに気付いた。


「では、悠弥殿は神託などは受けられていないのか?」


「神託って、神様の言葉みたいなやつか?」


「そうだ。我々だと教会の神官が極稀に神託を授かる場合がある。」


「今のところ、そんなのはないな。」


 3人で話を進めていると、外から声が聞こえる。


「殿下、ご報告があります。」


「どうしましたか?」


「近くの村の住民が助けを求めています。」


「馬車を止めなさい。事情を聴きます。」


 3人は馬車を降りて、村人に事情を聴いた。

 村にモンスターが押し寄せてきているとのことだった。モンスターの種類も獣や人型がいるという。


「そうですか。それは大変でしたね。よくここまで辿り着きました。ゆっくりお休みなさい。」


 オリビアは村人を労うと、緊張の糸が切れたのか村人は気絶してしまった。


「ジブ!先行して、村の様子を報告しなささい。戦乙女は追って、村を救出します。」


「俺も手伝おうか?」


「ありがとうございます。では道がありませんので、馬車と戦乙女5名の残し、ここで待機。三日経っても戻らない場合は、王都へ伝令に走りなさい。」


「今の言い様だと、オリビアも行くのか?」


「当たり前です。国民が困っているのです。王族が率先して動かねば、誰が私たちに命を賭けてくれるのですか?」


「あんたはいい姫さんだな。」


 悠弥の不意の言葉に、オリビアは照れてしまった。


「さぁ、行きますよ!悠弥!」


 シイカの号令で戦乙女隊は整列し、村に向かい行進を開始した。

 村が見える場所に到着した王女一行。村からは煙が上がっているが、


「悠弥殿、どう見ますか?」


 シイカが悠弥に尋ねる。


「すまないが、村の防衛なんて、初めての経験でね。」


「本当に不思議な御仁だな。あれだけの結界を張れる力があるのに、戦場が初めてなど、誰が信じられようか。」


「今までは森で狩りするだけだったんでね。」


 シイカは戦乙女の前に立ち、作戦を伝える。


「見てもらった通り、村からは煙が上がっているが火の手が見えない。すでにモンスターは大方去った後だろう。だが、油断はするな。時間的に見て、まだ奴らは近くにいると思われる。各自、二人以上の組を作り、行動するように。では、行軍開始!」


 彼女たちは指示通りに隊列を組み、村へ向かっていく。


「さて、俺はどうするかな。」


「悠弥殿は、好きに動いてみてくれ。我々の邪魔になりそうなら、都度指示を出す。」


 シイカに独り言を聞かれていたようだ。


「分かった。」


 悠弥は村に向かって走り出した。村の近くに行くと、気配察知に反応が見える。


「まだ屋内にいるな。生存者かモンスターか判別がつかないのが、欠点だな。」


 村に入った悠弥は窓から中を覗き込む。


「たす、、、けて、、、」


 悠弥の目に入ったのは、小さな少女が震えながら、モンスターに襲われる寸前だった。


 HUD:

 『小鬼ゴブリン


(これはキツいな。怒りで冷静さを失うなよ。)


 悠弥にとって、人型モンスターは初めてではないが、人が襲われている事態は始めてだったため、少し興奮気味であった。


(屋内だと刀は扱いづらいか、、、)


 悠弥はボックスから短刀を取り出し、静かに入口に向かう。

 ゴブリンが2匹いたが、まだ悠弥に気付いていない様子。

 ドアは開いたままだったため、すばやく侵入し、ゴブリンの喉元を切り裂いた。

 短刀の切れ味が良すぎたために、喉どころか首が落ちた。


「いやだ、、、しにたくない、、、」


 恐怖のあまり状況を理解できていない少女は、丸まったまま震えている。


「もう大丈夫だ。」


 周囲に気付かれないように小さな声で、少女の頭を撫でてやる。

 少女は悠弥の顔見た瞬間、緊張の糸が切れたのか意識を失ってしまった。


 その後ろから戦乙女が二名入ってきた。


「悠弥殿、この子は我々にお任せください。」


 少女を彼女たちに任せ、次の家に向かう。

 気配察知の反応は多い。


 三つ目の家を片付けた時、外でモンスターの咆哮が聞こえた。

 悠弥が外に出ると、戦乙女の一つがモンスターに見つかってしまったようだ。


 村の通りに集まっているモンスター。その中で一回り大きいモンスターがいる。


 HUD:

 『大鬼オーク

 ☆雑食。

  狡猾で残忍。

  ゴブリンを使役して、狩りや人里の襲撃を指揮する。

  ゴブリンとの種族的繋がりはなく、弱肉強食の理を持って使役している。

  女性を攫い、快楽のために慰み者にする。

  気に入った個体を自分の所有物と考え、監禁する習性がある。


 HUD:

 『黒狼ダークウルフ

 ☆肉食。

  獰猛。

  集団で狩りをする狼。

  爪と牙は警戒すべき脅威だが、それ以外に特筆すべき点はない。


「おいおい、前世で俺が知ってるオークはそんなに賢くなかったぞ。」


 悠弥は刀を取り出した。

 モンスターの集団に戦乙女も判断を迷っている。

 だが、悠弥たちの都合など、モンスターは待ってくれるはずもなく、オークの合図で一斉に襲い掛かってくる。


 悠弥は襲ってきたダークウルフを頭から一刀両断。切り返して、もう一匹。

 左右に分かれた二匹をを一文字に切り裂いた。


 その勢いのまま、苦戦している戦乙女たちの加勢に入り、ダークウルフを沈黙させた。

 それを見たオークはゴブリンたちを差し向ける。

 モンスターは悠弥を群れのリーダーと定めたためか、彼に集中する。

 悠弥は初めての人型モンスターだったが、その剣戟は鋭く、ゴブリンなどが相手になるはずもなかった。


「さて、あとはお前だけだぞ。」


 悠弥はオークに向かって、刀を向ける。オークはゆっくりと手に持つ武器を構えた。

 悠弥とオークは対峙する。


 HUD:

 『大鉈』

 ☆通常の鉈よりも大きく、武器として十分に使用可能。


(二メートルはあるか。腕の長さも考えると、相手のリーチは三メートルを超えてくるか。まずはこっちから行くか。)


 悠弥は咄嗟に踏み込み上段から振り下ろすが、オークは鉈で防いだ。


(反応してきたな。)


 追撃はせず飛びのいたが、逆にオークが追いかけてきた。

 ただ鉈を振り回すだけだが、非常に速く鋭い攻撃だった。


 数秒の間、剣戟の音だけが鳴り響く。


 オークは息が続かなかったのが、攻撃をやめて、距離を取った。息を整えるかのように肩で息をしている。


「悠弥殿、手伝いが必要か?」


 シイカとオリビアが悠弥を見ている。


「少し慣れてきたところだ。問題ない。」


「信じよう。」


 シイカは剣に掛けていた手を離し、腕を組む。


(さて、人型だと思って警戒していたが、森の”森の小心者トロール”ほどじゃねぇな。)


 勝負は一瞬だった。


 悠弥が大きく踏み込むとオークも防御の構えを見せるが、既に遅かった。


 その剣筋は


 速く、


 鋭く、


 一寸の狂いもない一撃。


-キィィィンッ-


 高い金属音だけが周囲の空気を震わせた。


 直後、オークの首が地面に転がり落ちた。


「おみごと。」


 シイカは余裕ぶっているが、彼女には悠弥の剣筋が見えなかった。踏み込むまでは目で追っていたが、最後の振りが見えなかった。


「悠弥殿は、誰に剣術の教えを?」


「いない。スキルで全部分かるんだ。」


「そんなスキルは聞いたことがない。そもそも魔法も使えて、剣術もできるなど、到底考えられない。」


「そうなのか?この世界の常識は知らないからな。それよりも早く終わらせようぜ。」


「そうだな。これより村人を捜索し、生き残りがいれば、救助するように。」


 そこに悠弥の油断が生まれていた。


「!?」「!?」


 悠弥とシイカがそれに気付いたが、その時にはすでに遅かった。

 村の外から無数の矢が降り注ごうとしている。


「オリビア!シイカ!」


 悠弥が二人を守ろうと手を伸ばすが、少し距離がある。


(考えろ。、、、盾の魔法だ。”魔法防壁シールド”!)


 頭上に村を覆うほどの魔法陣が展開されると、降り注いだ矢が魔法陣に当たり、地面に落ちた。


(”炎槍フレイム”)


 気配察知で位置を確かめ、魔法がモンスターを襲った。


「すまない二人とも。油断した。」


「こちらこそ、感謝する。」


 防げた危険だった。悠弥は油断大敵だと改めて心に刻む。


 幸いにも村人たちは、その大半が無事であった。攫われそうになっていた娘たちも多少の被害はあったが、命が助かった事に感謝していた。


 悠弥は村のあり方を見て、ここは本当に秩序の低い異世界なのだと痛感した。

 戦乙女たちと村一通り回って、生存者を広場に集める。


「殿下、これで全員のようです。」


 村人たちは不安そうな表情で王女を見つめている。


「セルザイン王国王女オルリベイラです。皆さん、よくぞご無事でした。残念な事に全員を助ける事はできませんでしたが、モンスターの討伐は成功しました。村の周囲にもその気配はありません。どうか安心してください。」


 王女の言葉に村人たちは安堵のため息を落とした。


「あんのぉ~、姫様。」


 男が手を挙げる。


「どうされましたか?」


「私たちはこれからどうすればいいんですか?」


「・・・」


 王女は黙ってしまった。村の建物はモンスターが暴れたために半壊している。モンスターも簡単に手に入る食料から口にするために、村の食料はほとんど残っていない。

 悠弥は迷っていた。ボックスに大量の食料はあるが、ここでそれを提供してよいのか?自身は王族でも貴族でもない。ましてや、善人ぶる気もない。


「オリビア、、、」


 見捨てるほど、非情にはなれなかった。悠弥の顔を見るオリビアとシイカ。


「一つ、提案なんだが、、、俺が食料を提供するってのはどうだ?」


「それは、、、それは出来ません。その食料は悠弥のものです。」


 王女は一瞬躊躇したが、やはりその提案を受け入れる事は出来ないと断った。


「この村の代表はいるか?」


「わ、、、私です。父である村長がモンスターにやられてしまったので、今は私が代表になります。」


 若者が悠弥の前に立つ。


「俺の作業を手伝ってくれるか?その対価に食料を提供する。どうだ?」


 これは体裁だった。王女もそれが分かっていたから、悠弥の提案を断った。王女自身の権限では、悠弥に提供する対価が思いつかなかったのだ。村を救出した後の事まで考えていなかった自分が腹立たしかった。

 悠弥にしてみれば、対価なんて何でもよかったが、村の状況的に物資関係は期待できないため、労働力の提供を求めた。


「な、何をすれば、、、」


「取引成立だな。その作業をする前に、まずは腹ごしらえだ。すでに完成してる食料もあるから、子供と妊婦、病人が優先だ。」


 悠弥と代表が握手すると、村人たちの表情に活力が戻る。


「悠弥!」


 止めようとする王女に、悠弥は首を振った。ボックスからテーブルと椅子を取り出し、村人たちと設営していく。

 自分の至らなさに悔しくて、立ち尽くす王女。それを見た悠弥は村の子供に耳打ちをする。


「おうじょさま!いっしょにごはん、たべようよ!」


「えっ、、、あっ、、、」


 戸惑っている間に子供に手を引かれ、テーブルに座らされる。


「ほら、王女様がそんな顔だとみんな不安がってるぞ。」


 悠弥に言われ、周囲を見ると村人が見つめていた。


「よし、先に子供たちは食べてくれ。」


 テーブルに並べられた料理。王女の隣に座る子供が「わぁ~」と瞳を輝かせて、今か今かと待っている。


「あ、あの、、、」


「ほら、王女様が先に食べないと、周りが気を遣っちまう。」


 王女は彼の言葉に背中を押されるように、料理を口に運んだ。


「お、、、おいじぃです、、、」


 涙が溢れ、言葉に詰まる。


「よし、全員食べろ!!早い者勝ちだぞ!」


 悠弥の合図に子供たちが一斉に料理に手を伸ばした。

 順調に準備は進められ、村人全員が食べられるだけの料理が出揃った。


「悠弥殿には感謝しかない。」


 シイカが悠弥の隣に座る。


「子供が悲しい顔をしてるのは、好きじゃないんだよ。」


「やはり悠弥殿は伝え聞いている召喚者とはどこか違う気がする。」


「自分が何者だろうと、俺はやりたいようにやるだけさ。」

読んでいただきありがとうございます。


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