06 王都まではまだ長い
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「あー、分かったよ。お前のとこの兵士を呼んで来いよ。部品は出してやるから、組み立てろ。」
俺は、寝室のセットだけ渡す。オリビアの命令で、兵士たちが慌てて、組み立て始めた。
「悠弥は、ボックス持ちなのですね。」
「あぁ、便利だよな。って、ことはオリビアは持ってないのか?」
「ボックス持ちは、非常に貴重で、王国でも商人と王家での、争奪戦です。」
「そうなのか。気を付けるよ。さて、夕飯にするか。兵士は何人連れてきたんだ?」
オリビアに聞いたが、応えたのは、後ろにいる護衛だった。
「殿下の護衛は、全部で18人です。」
「王女とあんた含めて、20人か。分かった。」
俺は、キッチンでは小さいと思い、自作のコンロを出す。
「悠弥、これはどういう魔道具ですか?」
「それは、コンロっていうんだ。キッチンのかまどの役割だな。」
そうして、俺は大量の唐揚げを料理する。辺りを漂うニンニクと胡椒の匂いに、兵士たちはざわついた。
「私、それほど多くは食べれませんよ?」
お前だけに用意したんじゃない。
「これは、兵士の分だ。」
「そうでしたの?では、私は何を食べさせていただけるのかしら?」
「同じだぞ。」
「なぜ、私の分を先に作ってもらえないですか?」
こういうところが、王侯貴族の連中はうるさい。おかげで、兵士たちは、暴力的な匂いの前に、おあずけを食らっている。
「オリビアのために、しなくてもいい寝室の組み立てをしてくれたんだ。兵士を労う度量を見せたら、どうだ?」
「そ、そうですね。では、みなさん、私の事は気にせず、思う存分楽しみなさい。」
兵士たちは、”おぉ!!”と、歓声をあげ、唐揚げに飛びついた。
「オリビアは、いい姫さんだ。」
俺は、不意にオリビアの頭をポンポンと、撫でてしまった。
「なななな、何を言ってるのです。兵を労うのは、王族としての務めです。子供扱いしないで、欲しいです。」
オリビアは、顔を真っ赤にしている。
「はいはい。っと、出来たぞ。ナイフとフォーク使うだろ?」
目の前に置かれた料理に、オリビアは我慢できない様子だ。食器を渡すと、静かに食し始めた。
「悠弥殿、少し相談が、、、」
護衛がそっと耳打ちする。オリビアから少し離れると、
「護衛のシイカです。悠弥殿に、お願いしたいのは、殿下の護衛です。」
「あんたたちがいるじゃないか?」
「いえ、悠弥殿が、王国に所属しないというお話は、聞きました。ですので、今回の問題が解決するまでの間だけ、殿下をお守りして欲しいのです。その力をどうか、、、」
「対価は?」
「今は、出せるものがありませんが、必ずそれに報いたいと思っております。もし、悠弥殿が望むなら、私の身を捧げる覚悟もございます。」
俺は、心の中で”出た!自分を犠牲にするやつ”と思ったが、言わないでおく。
「いらねぇよ。前に刺客にも言ったが、お前とオリビアの命は、同じ価値なのか?」
「そ、、、それは、、、私も女です。それなりに、男受けするスタイルはしているものと自負しているのですが、どうでしょう?」
俺はシイカにデコピンした。
「あだっ」
「そういう事言ってんじゃねーよ。まぁ、王女のお守りの件は、考えとくよ。俺を心配して、ここまで来てくれたんだろ?」
「はい。口には出しておりませんが、巻き込んでしまった事を相当気にしておられました。」
「よし、話は終わりだ。シイカ、お前も食え。」
俺は、彼女の口に、唐揚げを突っ込んだ。
「みっらう、はみおふむも(いったい、なにをするの)、、、もぐもぐ、ごくん。」
何を言っているか、分からないが、最後は、黙って飲み込んだ。
「悠弥殿!これは何とおいしいのでしょうか!」
「そうだろうそうだろう。前世のカロリー代表は伊達じゃないぞ。」
「どういう意味かは、分かりませんが、これはうまい。」
こうして、夜は更け、太陽が昇るころには、出発していた。
馬車に揺られながら、「サスペンションとか、この世界にないんだろうなぁ」とか考えていると、
「悠弥殿、昨日はシイカと何を話していたの?随分と仲睦まじい様子でしたが?」
「なんだ、嫉妬か?王女の嫉妬はみっともないぞ。」
「ち、、、違います。シイカの主人として、気になっただけです。」
オリビアは、赤くなり、膨れる。
「お前の護衛だよ。」
「悠弥殿!!」
シイカが慌てる。
「いいじゃないか。知らないうちに、守られてましたなんて、王女さまのプライドが傷つくぞ。」
オリビアが、シイカを見る。
「どういう事ですか?」
「そう言ってやるなよ。オリビアのためを思ってやったんだ。いい臣下じゃないか。やり方は、まずかったがな。」
「悠弥殿!それ以上は!」
悪戯に笑う俺に、シイカは、しどろもどろになる。
「私だけ仲間外れは嫌です。何があったのか聞かせてください。」
俺は、昨日の会話を一部始終聞かせた。
「あら、シイカ。悠弥殿に好意を寄せているのですか?」
「殿下、そのような、、、もごもご、、、」
「では、私が悠弥殿と懇意にしても、問題ありませんね?」
「そ、それは、、、」
シイカは、トマトみたいに赤くなって、下を向いてしまった。
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