05 セルザイン王国
改稿版
ちょうど悠弥が結界を張った頃、、、
-セルザイン王国・王都セルズ・王城-
「バルフェルト国王陛下、至急報告があります。」
国王の部屋に鎧を来た兵士が慌てて入ってくる。
「ギルベルト軍団長か。いかがした。」
「無知なる森にて、異常な魔力反応を検知したと魔法省から連絡がありました。」
バルフェルトの顔が険しく変わる。
「それは誠か?」
「はっ、間違いないかと、、、」
「勇者召喚の痕跡はあったのか?」
「いえ、それよりも強大な魔力であったと報告があります。」
バルフェルトは一息置いて、
「そうか、ならば誰かを偵察に行かせよ。今している仕事は後回しで構わん。これは最優先事項だ。」
「かしこまりました!」
ギルベルトは急ぎ部屋を出る。
「誰か!誰かおらんか!」
廊下を走りながら、叫ぶ。
「軍団長、いかが致しましたでしょうか?」
兵士が駆け寄ってくる。
「急ぎ、無知なる森に偵察隊を送れ。状況を確認し、速やかに報告せよ。これは勅命である。」
「かしこまりました。」
「もし敵性勢力だった場合でも戦闘は許可しない。これは絶対だ。心得よ。」
兵士は走っていく。
(くそ、何が起こっている。この何百年、あのような魔力検知の報告はあがっていない。場所が無知なる森ならば、、、考えたくもない。)
ギルベルトは足早に関係各所に向かう。
そんなギルベルトの足を止めるかのように、女性が行く手を阻む。
「ギルベルト、ごきげんよう。どうして、慌てているのですか?」
「お、王女殿下。」
さすがに足を止めざると得なかった。
「どうしたのと聞いているの。」
王女は詰め寄る。
「い、いえ、、、」(ここで殿下に知られては、、、絶対に良くない事になる。)
しどろもどろするギルベルトにさらに詰め寄り、耳元で囁く。
「さぁ、教えなさい。何かおもし、、、大変な事態になっているのでしょう?」
(今、面白い事って言おうとしましたよね。)
「少しお腹が痛くなりまして。」
「それは大変ね。いいお医者様を紹介しましょうか?」
「いえ、それほどではなく、、、」(あなたのせいですよ。とは言えないな)
「そうですか。では、私は急ぎ準備がありますので。ギルベルトもご自愛ください。」
(あぁ、絶対知ってるな。陛下にどのように申し開きすれば、、、)
気苦労の絶えない軍団長であった。
二か月後、ギルベルトが派遣した偵察部隊が帰還する。
「どうであった?」
会議室で報告を聞く。大きなテーブルに兵士たちが囲うように座る。
「無知なる森に砦が建設されておりました。」
「戦力は?」
「不明です。防壁を大きさから監視がいると判断し、距離を取る選択を致しました。」
ギルベルトは一息置いた。
「そうか。報告は以上か?」
「あ、あの、、、」
気弱そうに手を挙げる若い兵士。
「なんだ?」
「見間違いかもしれないのですが、人影を見たと思います。」
「それは本当か?人数は?」
「私が見たのは一人です。一週間、監視しておりましたが、ずっと一人だけでした。」
ギルベルトは頭を悩ませる。
「分かった。陛下に報告を済ませる。今後の動きは追って連絡する。だが、いつでも出れるように準備は怠らぬよう。」
「「「はっ!」」」
-国王執務室-
国王とギルベルトが神妙な面持ちで会話をしている。
「この報告書が真実ならば、敵かどうかは見極めねばならん。ギルベルト、頼めるか?」
「もちろん承知しております。しかし、敵性勢力だった場合、いかが対処いたしましょうか?」
「軍団長の判断に任せる。私はカシリア公国の建国祭に出ねばならん。緊急の場合は、よろしく頼むぞ。」
「はっ、この命に代えましても、、、」
ギルベルトは部屋を出ていった。
「これは吉兆か、、、災厄か、、、」
執務室の窓から見える街並みにバルフェルトは何を見ているのだろうか。
-王城・王太子の部屋-
「ケイル殿下、何やら無知なる森にて、面白い事が起こっているようですぞ。」
「ほう、ゴークよ。詳しく話せ。」
横柄な態度でソファに座っている青年は、王国第一王子ケイル・クィン・セルザインである。
ゴーク・アーク。セルザイン王国で魔法省の大臣を務めている大物である。
「はっ、私の統括してる魔法省で、膨大な魔力反応が検知されました。」
「それは何事か?」
「もしかすると、殿下が欲していた勇者が召喚されたのではないかと、囁かれております。」
「それほどか。」
「はい。只今、2回目偵察隊が向かっておりますが、その結果次第では、、、」
ケイルはニヤついた。
「ならば、すぐに暗部を出せ。偵察隊より早く報告を持ってこい。」
「ですが、オルリベイラ王女殿下も出発したとの報告があります。」
「なおさらよ。妹が動いたなら、その勇者とやらは最悪、殺しても構わん。」
「もし、勇者などではなく、強力なモンスターの類だった場合は、、、」
二人で目を合わせる。
「承知いたしました。そのように致します。」
ゴークは部屋を出ていった。
「はっ、妹よ。それで私を出し抜くつもりか。させないぞ。この国の王は私だ。それにもうすぐ父上もカシリア公国の建国祭にご臨席される。気付いた時には遅いだろうさ。」
-王城・魔法省大臣室-
「バクス、、、」
ゴークが呼ぶと、どこからともなく全身黒ずくめの者が現れた。これが暗部だ。
魔法省ゴークが秘密裏に協力させている組織である。諜報、暗殺、扇動などを行い、ゴークの出世を支えてきた部隊である。
忠誠心はそれほどではないが、金さえ払えば、どんな汚れ仕事でもやる。
「今回は何の依頼だ?」
バクスがソファに座る。
「無知なる森の調査だ。」
「はっ、あそこに何があるってんだ?くだらねぇ仕事じゃないだろうな?」
「黙れ。あの森で異常な魔力反応が検知された。その原因を調べてこい。」
「それで?」
「もし、勇者召喚が行われていた場合、その者を連れてこい。」
ゴークが話している最中も、バクスはテーブルの上にあるピーナッツを食べている。
この二人に明確な主従関係は存在しない。
「へいへい。無知なる森に行くんだ。報酬は弾んでもらうぞ。」
「分かっている。それと、、、」
「まだ何かあるのか?」
「王女殿下も向かっているとの情報だ。もし、その勇者が王女側に付くようならば、早急に処理して構わん。」
「権力争いかよ。本当に貴族とかってのはくだらねぇなぁ。」
「バクス!」
「仕事はするさ。代金分はね。、、、さて、その勇者様とやらに、快く来ていただくとしましょうかね。」
バクスは消えた。
「何なのだ!あの礼儀も知らん男は!!仕事を依頼する関係でなければ、殺してるぞ!」
ゴークは荒れていた。
-セルザイン王都から無知なる森の道中-
現在、セルザイン王国は、国王バルフェルトを中心とした国王派と、王太子を中心とした反国王派に分かれている。
その主な原因は、バルフェルトの国政にあった。
賢王で知られるバルフェルトは、先代より王位を譲られた際に、国家の財政再建のために軍拡路線から内政路線に切り替えた。
王太子がこれに異を唱えた。先代までに拡大した領土で王国は大陸一の版図を築き、その栄光は長く続くかに思われていた矢先、バルフェルトの路線変更により、利権により私腹を肥やしていた貴族たちが王太子を唆し、反国王派として、国政に干渉している。
さらにケイル王太子はその立場を利用し、次代の王になるために貴族たちに特権を与えているというのだ。
しかし、最近になり、オルリベイラへの王位継承権を繰り上げようという動きが活発化し、ケイルに焦りを与えていた。これは国王派の策略であるが、当の本人は元々の気質のせいかよく城外に飛び出して、家臣を困らせているという。
そのせいで、ついたあだ名が「お転婆王女」である。
だが、本人はそんな事など歯牙にもかけず、今回の無知なる森の事件でも、いの一番に飛び出したが、周囲に止められる。
だが、彼女は諦めなかった。着々と準備を進め、2回目の偵察隊が向かう事を知ると、周囲の制止も聞かずに飛び出した。
それを知った臣下の者たちも、後を追いかける。
「さぁ、進みなさい!」
馬車から身を乗り出し、意気揚々の王女がいた。
「殿下、そのように身を乗り出されては、困ります。」
「何を言っているの。急がないと無知の森で起こっているおも、、、事件に間に合わないでしょう。」
「そう言われましても、我々、戦乙女は殿下の護衛です。馬車の全速力を維持されますと、とても守り切れません。」
王女オルリベイラの護衛を務める騎士シイカ・ベント。
王女の我儘に振り回され、困っている。
「先に出た偵察部隊に追いつくのです。」
「殿下、そのような無茶はいけません。」
王都を出発して、2週間。毎日のように王女と護衛の漫才は続く。
「殿下、ご報告が。」
馬車に黒ずくめの男が入ってくる。
「ジブね。どうしたのですか?」
ジブ、王女直属諜報部隊隊長である。
王女オルリベイラが指揮権を有する部隊は2つ。
王女護衛を主な任務とする『戦乙女』
諜報活動を主な任務とする『闇一族』
である。
「はい。部下の報告によりますと、ケイル王子の指示により、ゴーク卿が刺客を放ったとの事です。」
前述の通り、戦乙女は護衛が任務であるが、その戦闘力は正規軍に比べ、数も力も見劣りしてしまうが、闇一族に関しては、その情報収集能力は、王国軍の諜報部隊の追随を許さないほど優秀である。
国王派と反国王派に分裂した現在も王女が存命である理由は、彼らの活躍が大きい。
「もうお兄様は短慮が過ぎますね。」
王女は座りなおす。
「さて、報告によれば、森には殿方が住んでいるようですね。」
「はい。我が隊が入手した情報によりますと、砦のような拠点を築いている模様。」
「なんと!それは興味深いです。是非、会ってお話したいですね。」
ジブとシイカは頭を抱える。
「殿下、まだその男が味方になってくれるとは限りません。先行している偵察隊の様子を見てからでもいいではありませんか?」
シイカが宥めるが、興奮している王女には馬に念仏だったようだ。
「どのような殿方なのでしょうか。砦は一人で建設されたのでしょうか、、、」
彼女はワクワクが止まらない。
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