04 拠点建設
改稿版
鉄を手に入れた事で、道具の製作に取り掛かる。
HUDの手順通りに進めていく。
まずは鉱石から不純物を取り出さないといけない。
HUD:”錬金・精錬”/鉱石から不純物を取り除き、純度を高める。
スキルは便利だった。本来なら溶鉱炉などが必要だが、スキルですべて解決だった。
ただ問題だったのは、鋳造と鍛造は違うという点だ。
錬金の範疇で鋳造は行えるが、鍛造する場合は鍛冶の範疇だった。
HUD:”錬金・変形”/対象の形状をイメージに従い、変形させる。
まずは鋳造でできる簡単な食器や容器を製作する。石英(いわゆる水晶)からコップや容器な製作した。
一人分なので、それほど手間は掛からない。
次に道具を作る。ハンマーや金床、解体用のナイフなどHUDに表示された道具を一通り揃えることが出来た。
HUD:”錬金・錬成”/対象を任意の物質に変態させる。物質が不足している場合は不可能である。
次は材料を製作していく。鉄とクロムを合わせ、ステンレスを作り、錆びにくい釘を数万本作る。錬金で作ると大量の製造も簡単だった。
簡単と言ってもそれだけ大量の物を製作していれば、時間は過ぎる。
朝から作業を始めて、もう昼になっていた。
「岩塩も手に入ったし、塩を作るか。」
悠弥は岩塩を精錬し、塩の成分だけを取り出し、粉末状にして、作ったビンに詰めていく。
ついでに森で採れた調味料っぽい草も粉末にして、ビンに分けていく。
「これで味のない料理じゃなくなるな。」
昼ごはんは、塩を掛けて焼いただけの肉だったが、以前よりはよっぽどマシと思える料理だった。
昼からは錬金を駆使し、ロングソードや槍などを作っていく。
悠弥は、どれが自分に合う武器か分からなかったので、ある程度の種類を揃えた。
HUDに彫金スキルが主張を強めていたが、まだ意匠までこだわる余裕がなかったので、無視していた。
道具がある程度揃い、武器も作った。蜘蛛の糸を錬成して、布から服も作った。
欲しいのは、拠点となる家だった。
彼は頭の中で設計図を思い浮かべ、記憶すると、HUDが図面を製作してくれた。
しばらく考えてできた図面で材料を揃えた。
ここで気付いた事があった。
土台を作る際に、生産スキルで一瞬で出来るものだと思っていた悠弥は、愕然とした。
生産スキルの建築は、職人のように建築ができるスキルであって、自動的に建築するものではなかったのだ。
「まじかよ。これは予想外だったな。」
という事で、細かい作業をするための道具が必要になり、ノミやらキリやらを揃え、いざ建築に取り掛かった。
午前中は森か洞窟に素材採集や狩り、午後は自宅作りと忙しいが、充実した毎日だった。
最初に作った図面はもう一度見直し、簡素な作りにした。
そう、、、豆腐ハウスである。
だが、スキルが充実しているのに、単純な豆腐ハウスにはしたくなかったため、3棟をつなげるような形で必死に組み立てた。
建築スキルがあってもそれは容易な事ではなかった。ドアが開かなかったり、窓ガラスが割れたりと苦難の連続だった。
そうして、一ヶ月が過ぎようとした時にようやく完成を迎えた。
「やっと出来た。」
なんとも感慨深いものだった。生産と身体強化のスキルが無ければ、こうもいかなかっただろう。
外観は完成したが、内装をこれから充実していく必要があった。すべてを完成させるには、まだ長い。続いて、内装に取り掛かった。
ベッドなどの家具はそこまで苦労しなかった。
キッチンや風呂、トイレなどの水回りに関しては、頭を悩ませた。
洞窟で採れた魔法石で熱を発生させる事は出来るが、生活用水を出すことは出来なかった。どういう仕組みかは分からないが、魔法で作った水は、数秒で霧散してしまう。
だが、魔法で操った水はそのまま残っていた。
「水そのものを操作する場合は、その場に残るのか、、、」
水を外部から取り入れる必要があった。
「井戸とか掘れないか、、、」
掘削で地面を下に掘り進めた。
「確か下に掘ってくと、温度が上がって、酸素も少なくなるから危険なんだっけ?」
何となくどっかで読んだ知識だった。
掘削スキルはそんな事が関係ないと言わんばかりに穴をあけていく。
そして、1時間ほど掘り進めたあと岩盤にぶち当たり、それを穿孔すると水がわき出した。
そこにステンレスで作ったパイプを差し込み、風の魔法を込めた魔法石で吸引する。
パイプから水がジャバジャバと流れだした。
ろ過機を設置し、貯水槽へつなげ、飲み水にするために魔法石で殺菌させる。
どうも魔法石を水に浸すと殺菌、解毒できるらしい。仕組みは変わらないが、異世界なのでと片付けた。
風呂には火の魔法石を設置し、熱湯が出るようにする。もちろんシャワーも完備だ。
キッチンにもコンロなどを設置し、これでやっと焚火とはおさらばかと肩の荷を下ろした。
トイレの排水も汚物槽に魔法石を入れておくだけで、解毒、分解してくれるみたいだ。
生活するための設備が整ってきたところで、次の設備に取り掛かった。
3棟の割り振りは、生活、風呂トイレ、作業場だった。
悠弥が次に整えたのは作業場だった。
鍛冶をするために炉を作る必要があった。
錬金で耐火煉瓦を製作し、洞窟で採れた材料でセメントを作り、組み立てた。
鍛冶場、縫製、解体作業台などを順番に制作し、すべてを作り終えた時にはもう夕方だった。
鍛冶場の炉は、モルタルで固めているため、乾くまでに時間が掛かる。
作業が開始できるようになるまでには時間が必要だった。
夜、食事を終えて、ソファでくつろいでいると、気配察知に反応があった。
外に出て確認すると、クレイボアが近づいていた。
「柵とか掘りがあったほうがいいか、、、」
クレイボアを手早く仕留め、警戒しながら、一夜を過ごした。
翌日、土魔法でどうにか出来ないかと試行錯誤し、『土壁』を創造した。
大体10メートルくらいの土壁が出来たが、それだけでは不安だったので、思考を巡らせた。
ボックスにあった鉱石類にディバネイトという金属があったのを思い出した。
「希少価値が高いって、この洞窟に相当量あったぞ。加工が難しいからかな。鉱石自体はそんなに珍しくもないのかもしれないな。」
悠弥は土魔法で家の周囲を囲み、きれいに整えた土壁の表面にディバネイトの鋼板を施工していった。その壁の様相は、漆黒の包まれた悪の居城のようだった。
「見た目が悪いな。まぁ、しゃーねぇか。」
大きな扉と潜戸を設置する。
「あとは堀だな。」
掘削は簡単だった。スキルでどんどんと掘り進め、ある程度の深さがあるものが完成した。その勢いのまま、川まで掘り進め、水を流した。
「これでいいか。とりあえずモンスターは突破できないと思いたい。侵入者とか来るのか?」
HUD:
『結界術』
☆この異世界にはない魔法。
前世の結界を具現化した術式。
効果は破壊されない限り有効。
これに近いものは魔道具など。
「なんだこれは。この異世界の魔法じゃないのか、、、」
結界を試すために準備を始めた。
結界を張るためには、ある程度の大きさの魔法石が必要だった。
「ある程度って、曖昧だな。並べて、HUDで調べればいいのか?」
悠弥は大きそうな魔法石を目の前に並べる。結界に必要な魔法石と考えながら見る事で、それは表示された。だが、一つ目を手に取ると、感覚的に理解できてしまう。たぶん、スキルの効果なのだろう。
「これとこれ、あとこれか、、、大きいって言うから、どんなのかと思ったら、握りこぶしくらいでいいのかよ。そんなのいっぱいあるぞ。」
あとは手順通りに作業するだけだった。
「よし、これで、、、よっと、、、できた。」
術式を紙に描くとあったが、ディバネイトの鋼板を用意し、そこに錬金で刻み込んだ。それを四つ角に設置して、魔力を流し込むと塀が白く光る壁に包まれたようになる。
「これが結界か、、、効果は術者によるって書いてあったな。いつか分かるだろ。」
これである程度の生活基盤は整った。
ここからは趣味の世界だ。生活に困らなくなったのなら、時間を持て余すことだろう。
悠弥は畑を作り始める。この森の植物は、種を残し繫栄していく。
よって、今まで集めた植物の種を使って、農業をしようというのだ。
畝がいくつかできると、種を蒔く。水と撒いて、あとは観察するだけ。これも生産スキルのおかげで、農作物の事は理解できるようになった。
「さて、あとは武器とか防具の鍛造か。」
悠弥は作業場に入り、あれこれ考えたが、
「やっぱり日本人だったら、刀に憧れるよな。よし、刀にしよう。」
HUDに表示される内容をよく読み素材を選定する。刀は皮鉄と心鉄の2種類必要だ。外は硬く、内は柔らかく。それにより折れないが、柔軟性があり曲がらず、よく切れる刀になる。
「皮鉄はディバネイトで、心鉄はブレサイトにするか、、、」
ブレサイトは白色に輝く金属。ブレサイト鉱石から抽出できる。非常に柔軟性が高い。
ここからは大変な作業だった。鍛冶スキルで時間短縮ができるとは言え、鋳造とはまったく別物だった。
本来、月、年単位で行う作業が2週間で終わる。それでも2週間かかった。
「最後の仕上げに、拵を付けて、、、よし、完成。」
2週間で仕上げる鍛冶スキルもどうかと思うが、とりあえず1本完成した。
「試し切りしたいな。」
翌日、悠弥は森に出た。いつもとは違う場所を探索していると、
「あっちに何かいるな。」
HUD:”小鬼”/雑食。狡猾で残忍。個体はそれほど強くないが、繁殖力が強く、集団で獲物を狙う。物量で押し切る戦術をとる。人里を襲うことは滅多にないが、女性を度々攫い、慰み者にするため、人類には、徹底的に嫌われている。素材になる部位はない。
「初めて、人型のモンスター見たな。」
悠弥は刀を握り、おもむろに飛び掛かる。
ゴブリンも悠弥に気付いたが、間に合わなかった。
ゴブリンは頭から真っ二つに割れる。
HUD:
『全武全道』
☆武術・武道を体現可能。
自身の身体能力に依存する。
感覚的な部分は自身に依存しているため、修練を必要とする。
「なんだ、このスキル。やべえだろ。」
ゴブリンが真っ二つになった事より、スキルが衝撃的だった。
「これで達人並みの武術が手に入るのか。確かにさっきより刀が手に馴染んでる気がするけど、、、どうなってんだよ。」
悠弥は深く考えるのをやめた。
スキルで強くなるなら、それでいいやと諦めた。あの時、神(仮)の言った通りだとすると、これは突出していると言わざるを得ないかもしれない。
そして、試し切りをしている内に、辺りは薄暗くなっていた。
「調子に乗ったな。視界が悪すぎる。早く家に帰ろう。」
HUD:
『空間自在』
☆指定する二つの地点の空間を短縮する。高速移動や瞬間移動とは異なる。
出入口を塞ぐ際には注意が必要。
『透過暗視』
☆視界不良でもはっきりと視界を確保できる。近距離の壁の向こう側が認識できる。
「もう驚かないぞ。今度はワープかよ。行った事のある場所に行けるか。ここまで来ると笑うしかねぇな。」
(”空間自在”)
家を思い浮かべながら唱えると、目の前に家の周辺が見える空間が現れた。
「ここに入れってか、、、行くか。」
飛び込むと、家だった。
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