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四魔将フーザ②

-魔王城・大広間-


 悠弥は困っていた。


「悠弥殿、お召し上がりくださいませ。」


「自分で食べれるから、いいよ。」


「あん…悠弥殿は照れ屋さんなのですね。」


「ち、違うわ。」


(ふふ、悠弥殿…とても愛らしい…)


 彼の隣で献身的に尽くすフーザ。


 なぜこのような事になったのか。数日前のこと…


――――――――――――――――――――――――


「ガンダルからメッセージが来たな。」


 伝玉改が光っていた。


”相談がある。”


 短い文章が送られてきた。


「魔族ってのは、何でこうもシンプルなのかね。」


「悠弥殿、魔王国へ行かれますか?」


 コウショウが悠弥に尋ねる。


「そうだな。相談を聞いてから決めるか。」


 明朝に向かうと返事を返し、議論を進める。


「用件はあれだろうな。」


「だと思われます。”火車轟”の領土侵犯の件でしょう。」


「でも、あれは向こうの四魔将が解決したんじゃないのか?」


 -ガチャッ-


「悠弥、ここにいましたのね。」


 サラが入って来た。


「ちょうどいい所に来た。今、ガンダルから連絡が来た。」


「そうですの。」


「なんだ、それでここに来たんじゃないのか?」


「違いますわ。今日は私の日ですので、悠弥を探していたのですわ。」


「今日はサラと一緒にいる日か。」


「もう!ひどいですわ!」


「すまん。そう怒らないでくれ。ここに来いよ。」


 悠弥はサラを隣に座らせる。


「お父様はなんと?」


「相談があるらしいんだ。」


「魔王国に行きますの?」


「そうだな。だから、サラも一緒にどうかと思ってな。」


「あぁ、そういう事でしたのね。私も同伴致しますわ。」


 サラは喜んでいる。


「分かった。明日の朝に行くと伝えたから、準備しておいてくれ。」


 悠弥はオリビアとシイカに魔王国行きを伝えたが、両者ともに「今は鍛錬したい。」とのことだったので、サラと二人で行くことに決めた。


 そして、翌日。


「久しぶりであるな。悠弥よ。」


 魔王国へ赴いた悠弥たち。魔王ガンダルが出迎える。


「元気してたか?」


「貴公に負けぬよう充実した日々を送っておるわ。」


 ガンダルは大声で笑っている。


「で、相談ってのはなんだ?」


 悠弥の言葉にガンダルは眉をひそめた。


「貴公も耳にしておるだろう。聖国の勇者が越境してきた。」


()()ね。領土侵犯とは言わないんだな。」


 ガンダルの眉がピクリと動く。


「それはこちらの政治的判断だ。我々魔族は戦闘民族ではあるが、やみくもに喧嘩を買うわけではない。」


「で、別にその勇者をどうしろって話でもないんだろ?」


「その勇者はこちらで対処した。…したのだが、それを相手したものが、勇者の力に不安を抱いておる。」


「それほどか?」


「うむ。戦いの末、聖国側の横やりが入り、両者痛み分けとなったが続いていたら、どうなっていたかは分からんと言っておる。」


 魔王に少し不安な表情が浮かび上がった。


「だから、俺に稽古でもつけてもらおうって事か?俺の能力はスキルによるところが大きくてな。専門的な分野で役に立つかは分からんぞ?」


「それでもよい。貴公と立ち合って、何かを掴む切っ掛けにでもなればよいと思っておる。」


「で、その稽古相手ってのは、誰だ?」


「紹介しよう。」


 部屋にフーザが入ってくる。


「初めまして、四魔将フーザと申します。以前は謁見の間でお顔を拝見させて頂いて以来ですわね。」


「あぁ、よろしく頼む。」


 彼女は軽く礼をし、悠弥の手を取り、


「では、悠弥様。訓練場へご案内したします。」


「悠弥!」


 シイカが妬いていた。



-訓練場-


 悠弥とフーザが中央で向かい合う。


「俺の魔法が見たいんだったな?」


「はい。よろしくお願い致します。」


 彼女は小さく礼をして、距離を取った。これは訓練とは言うが、近接戦闘は無い。純粋な魔法勝負である。


「悠弥様との立ち合い、とても楽しみにしておりましたの。では、始めさせていただきます。ここは私から攻撃させていただきますわ。」


「いつでもいいぜ。」


「お優しいのですね。」


 フーザが両手の指で紋を描く。


炎の意志(ルベリゥ)立ち塞ぐ炎(ヒューロ)


 彼女の詠唱と共に、炎弾が悠弥を襲い、彼の足元から火柱が上がった。


「!?」


 悠弥は炎弾をシールドで防ぎ、火柱を躱す。


「びっくりさせるじゃないか。」


「ふふっ、やはりこれくらいでは、どうにもなりませんわね。」


 フーザが笑う。


「今度はこっちから行くぜ!」


炎弾(ファイア)


 フーザに炎弾が襲い掛かるが、


「デース・メナス。」


 フーザの直前で炎弾が弾け飛ぶ。


「まぁ、そうだろうな。」


 お互いの挨拶も終わり、ここからは魔法の応戦となる。フーザが魔法を放てば、悠弥がそれを防ぎ、即座に攻撃に移る。彼女もそれを防ぎ、悠弥に撃ち返す。


「やるな!」


「悠弥様こそ、謁見の間で相当な強さである事は存じておりましたが、魔法までこれほどとは、私、ゾクゾクしていますわ。」


「そうかい!」


(”火槍(フレイム)”)


 悠弥から無数のフレイムが放たれる。


「まだですわ!デース・メナス...」


 魔法の壁がそれを防ぎきる。


「それでは今度は...!?」


 フーザが紋を描こうとしたその時、無数のフレイムが彼女を襲った。


「ど、どうして!?きゃぁぁぁ!」


 彼女はそれを防ぎきれず、全てが命中する。


「叫び声までお上品なんだな。」


 地面に倒れこむフーザ。


「ま...まだ...です。」


 精一杯の力で立ち上がろうとするフーザ。悠弥はそれを待った。


「まだやるかい?」


「えぇ。まだ終わって...いませんわ...」


 どう見ても満身創痍。だが、彼女も必死なのだろう。勇者との一戦で思った以上に危機感を抱いた彼女は、どうしても今の自分を超える何かが欲しかった。


「いい気概だ。」


 もう立っているのもやっとだろう。だが、彼女はその腕で、その手で、指で紋を描き始める。


「”火神の安息(インケディウス)”」


 息も絶え絶えに、彼女は詠唱を口ずさむ。


 悠弥の周囲の温度が急激に上昇する。肌が焼けるような熱を感じる。


「こりゃ、やべぇな。」


 悠弥がシールドを展開した直後、彼を炎の円陣が取り囲み、吹きあがった。その全てを焼き尽くそうとする炎は少しずつ中心へと収束していく。


 もう出し尽くしたと、フーザは笑う。彼女の瞳は悠弥を包む炎を見つめていた。


「あぁ...あぁ...」


 彼女は目を疑った。


 なぜ?


 私は魔法を間違えた?


 あの方は一体...もう分からない。


「あちちち...」


 炎が消えたその跡に、彼は悠然と立っていた。


「頑張れよ。」


 悠弥が両手をいっぱいに広げる。


「待って...」


 それを見たフーザは後ずさりする。彼の周辺に魔法陣が複数展開される。


「で、、デース・メナス!!」


 彼女の周りに魔法の壁が生成される。


(”フレイム”)


 悠弥の周辺にある魔法陣から、魔法が放たれる。


「もう無理ですわ!」


 彼女を襲うフレイム。悠弥の魔法がフーザの魔法の壁で弾け飛ぶが、それだけでは終わらなかった。


「そう言うなよ。」


 間髪入れずに展開される魔法陣。容赦なくフレイムを叩きこむ。彼女の魔法の壁に亀裂が入る。


「本当に...あなたは...」


 魔法の壁が弾け飛んだ。


「一体...なんですの...」


(シールド...)


 轟炎にフーザは飲み込まれた。


「きゃぁぁぁぁ!」


 彼女の断末魔が聞こえる。フレイムが残した煙が彼女を包み込んでいる。煙が晴れていくと彼女は無事だった。


「大丈夫か?」


 フーザに手を差し伸べる悠弥。


「最後の瞬間に私に防御結界ですか...女性を口説くには、少々手荒じゃありませんこと...?」


 彼女は悠弥の手を取る。フーザの体が薄く光る。


「治癒魔法も使えますのね...」


「体力は回復しないから、しっかり休めよ。」


 悠弥に支えられ、立ち上がるフーザは圧倒的な力を見せつけられ、魔族としての本能なのか悠弥を求めてしまった。


「悠弥様、今宵は私と魔法について、議論いたしませんこと?」


 いきなりどうしたんだ?と言わんばかりの悠弥。


「そんなつもりはねぇよ。」


「では、せめて食事だけでもご一緒いただけませんか?」


「あ...あぁ。」


 執拗に体を寄せるフーザの態度に、悠弥はサラを横目でチラリと見ると、サラから怒りのオーラが溢れ出しているように見えた。


(王女の私だけでは飽き足らず、フーザまで...)


「サラ、いや違うだろ?これは違うだろ?なぁ?」


 サラはそっぽを向いてしまった。


「はっはっはっ、さすがは悠弥だ。魔法勝負であのフーザを負かすとは、これは我も気を引き締めんといかんな。」


 困る悠弥をよそに豪快に笑うガンダル。その表情はどこか満足そうだ。


「ガンダル、それよりもフーザを何とかしてくれよ。」


「良いではないか。それは強き者の証明でもある。」


「勘弁してくれよ。」


 少しはこの世界のルールに慣れたつもりだった悠弥だったが、どうもこの慣習だけは苦手に感じていた。


「では、昼食としてようではないか。はっはっはっ!」


 ガンダルの笑い声を聞きながら、彼らは大広間へと向かったのであった。

読んでいただきありがとうございます。


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