拠点拡張案
新人の恒例行事が終わると、そこからはいつもスムーズだった。
訓練の大切さを知った戦乙女たちは、積み重ねが重要だと鬼気迫る表情で剣を振っている。
大変なのは悠弥だった。戦乙女に入隊する女性たちは貴族でも家督継承権の低いものたちだ。
貴族の主な女性の将来は、政略結婚の道具である。
王女だけならまだ良かったが、ベント家の長女が嫁いだとあらば、他の貴族もそれに乗らない手はなかった。
彼女たちは、日中の訓練は真面目に取り組むが、それが終わるとその本性をさらけ出す。
「悠弥様、私は銀鷹級貴族フルム家から参りましたジェシカと申します。少しでも悠弥様の御傍に、、、」
と、連日押し掛けるが、
「お前たち、悠弥が困っている。彼はこれ以上の側室は望んでいない。全員自室に帰るがいい。」
シイカが門番を務めているため、最近は悠弥と二人きりになれていない。
「悠弥、すまない。うちの隊の者が連日、、、」
「シイカのせいじゃないさ。事の発端は狸爺だからな。」
「それはそうなんだが、申し訳なくてな。」
「俺こそ、すまないな。最近はシイカを構ってやれてない。」
シイカは顔を赤くする。
「寂しくないと言ったら嘘になるが、その気持ちだけでも感謝する。」
「これはいよいよ、兵舎を別に建てるか。」
その工事は翌日から始まった。
拠点の防壁を延長し、一片を今の二倍まで延長する。
「悠弥、今まで防壁を確認した事はなかったのですが、これはディバネイトではありませんか?」
オリビアは驚愕している。
「あぁ、そうだな。」
オリビアは眩暈がする。
「悠弥が加工できる事は知っていましたが、まさか防壁に使っているなどと、、、」
「硬いんだからいいだろ?魔力流せば、もっと硬くなるし。」
「そういう事ではありません!こんなのドワーフたちが見たら、全員卒倒しますよ。」
「そんなにか、、、」
悠弥とオリビアが言い合っていると、サラもやってくる。
「やってますわね。いつ見てもこの防壁は壮観ですわ。魔王国の防壁にも欲しいくらいです。」
サラは防壁に見惚れている。
「そういえば、最近、魔王は何してるんだ?」
「父上は悠弥に負けた事が悔しくて、あれ以来ずっと鍛錬してますわ。この前も来客を忘れて、四魔将に怒られていましたわ。」
「最近、顔見せてないからな。今度、行くって伝えといてくれ。」
「分かりました。きっと喜ぶに違いありません。四魔将も悠弥と勝負したがってますから。」
たはは、と悠弥は誤魔化して、作業を続けた。
防壁が完成すると、拠点の広さはすでに村と呼んでも遜色ないものだった。
「さすがに広すぎるか?」
「そうでもありません。悠弥がその気になれば、ここに移住したい者を募集し、農業などの作業を仕事としてさせる事も可能でしょう。」
「そうなんだが、生産や製造に関してはスキルありきだからな。俺がいなくても持続可能な状態にしないと、困るだろう。勇者の動きも気にしないといけないしな。」
「今の拠点の人口を考えると、すでに村は超えています。そろそろ本格的に考える時期だと思いますよ。それに召喚者の事をずっと気にしていたら、いつまで経っても何もできないので、やってから考えれば、いいと思います。」
「よし、せっかくゲートも繋げてる事だし、大陸を漫遊しながら、人材でも集めてみるか。」
「では、拠点はコウショウに任せ、四人で旅をしましょう。」
オリビアは喜んだ。
「ゲートは使わないのか?」
「折角ですので、旅をしましょう。もちろん馬車くらいは使いたいですが。」
「何かあってもゲートですぐに帰れるか。連絡も伝玉改”魔通珠”で何とかなるか。」
伝玉改”魔通珠”/悠弥が伝玉に改良を加え、双方向からの通話を可能にした無線機である。
その日から、悠弥の旅支度が始まった。
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