戦乙女たち
勇者たちの動向は気になるものの、事が起こるまでに戦乙女や王女たちの戦力を固める必要があると感じた悠弥は、無知なる森に実戦訓練として、同行していた。
戦乙女たちは、日々、訓練に励んでいる成果が確実に実を結んでいる。
ただのお荷物集団だった戦乙女はすでに正規軍にも見劣りしないほどの戦力と言えるだろう。
しかし、勇者たちと勝負するには、まだ不安があった。
装備品は悠弥の鍛冶スキルで上質な武器、防具に交換したが、人数に不安があった。
数日ごとに、噂を聞いた者たちが志願しにくるが、ほとんどの者が貴族の妾の子だったり、隠し子だったりと訳ありだった。
しかし、オリビアとシイカの性格上、どのような境遇であろうと受け入れるという姿勢で、少しずつは増えていく。
問題は悠弥に対する態度だった。戦乙女に入団した際に最初に行われる事は座学である。
戦術や騎士としての心構えなどを中心にオリビアとシイカが講義を行っている。
その中には、悠弥に対する知識も含まれている。
「よろしいか。我が夫であり、主君でもある悠弥殿を侮辱するような態度はご法度である。あなたたちは王女殿下の護衛部隊であり、悠弥殿の配下となる。普段は殿下と隊長である私が指揮を取るが、最高命令権は悠弥殿だという事を忘れないように。」
と教えているのだが、貴族というプライドを捨てられない者も少なからずいる。
「無礼者!私はラム家の四女ですのよ。自分の身分を弁えなさい。」
「それは申し訳ない。」
悠弥も悪い部分はある。前世での癖が抜けず、女性に対しては基本的に弱腰である。
もう少し尊大な態度で臨むことができれば、これほど侮られる事はなかっただろう。ここで毎度の恒例行事が行われる。
「クルン嬢、悠弥殿にその態度はいけない。あなたの主君となるお方だ。」
シイカが仲裁に入る。
「私は認めません。この方の噂は聞いておりますが、それもどこまで本当か。」
「分かりました。では、どうすれば認めてもらえるかな?」
「私の主君となるなら、力を示しなさい。」
こうして、悠弥は戦乙女たちと共に森に駆り出されるのである。
「きゃー!」
行軍する戦乙女の前にクレイボアやそれを追いかけるグレイハウンドの群れが飛び出してくる。
新人の戦乙女たちは、剣に触れた事さえない者たちがほとんど、武術の心得がある者でさえ、冒険者ではロークラスの実力しかない。
無知の森は、入り口付近でさえ、ミドルクラス以上の実力は必要だ。その実力が備わるまでは拠点で、徹底的に訓練を行うのだが、恒例行事となりつつある新人研修のため、このような事態になっている。問題児に巻き込まれた新人たちにはいい迷惑である。
「何をしているのです!早く私を助けなさい!」
クルンが逃げ惑う。クルンは妾の子でありながら、武術を学び、それなりに実力があるようで、グレイハウンドの攻撃をうまく躱している。
「”土槍”」
悠弥の魔法がモンスターを貫いた。
「や、やりますわね。」
肩で息をしている新人たち、その後もモンスターが出てきては、逃げる事しかできず、悠弥が倒していく。
「では、今日はこのあたりで終了とする。」
シイカの終了の合図で戦乙女たちは拠点へと帰る。
ベテランたちはお風呂や食事の話をしながら、意気揚々と時間を楽しんでいるが、新人たちは地面に寝転がり、動けない者やこの世の終わりかと思う表情を浮かべている者など様々だ。
「クルン嬢、これで悠弥殿の実力は分かっていただけたか?」
地面に横たわるクルンにシイカが問いかけるが、耳に入ってる様子はなかった。
野外訓練が終わると、夕方はパーティとなる。お酒や果物、スイーツがテーブルに並べられ、外に置かれたコンロで豪快に肉を焼いていく。
ベテランたちは、野外訓練のあとの夕食パーティに浮かれ喜び、新人たちは自分たちの不甲斐なさや過酷さに隅で小さくなっている。
その光景もいつもの事となり、ベテランたちが彼女たちに声を掛け、その輪を広げていく。
「今回もうまく行ったか?」
悠弥の横にシイカが座る。悠弥の言葉にシイカはため息を漏らすものの、
「はぁ、、、毎回思うが、貴族とは面倒な生き物なのだな。」
「思ってるほどでもないさ。」
「悠弥のおかげで貴族というプライドから解放された今では、昔言っていた事がよく分かるよ。」
「ここは自由だからな。うまいもん食って、酒飲んでゆっくり眠れば、それだけで幸せだろ?」
シイカは少し微笑んだだけで、何も言わなかった。
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