氷坂凍
-枢機卿・屋敷-
枢機卿セイルと騎士団長が密談している。
「氷坂凍は、どうなっておる?」
「彼は思慮深く、最初は我々を疑り深く観察しておりましたが、今はもう、、、」
「ならば、よい。このまま続行せよ。」
「かしこまりました。」
-聖城・訓練場-
普段の氷坂は思慮深く、他人に心を許すことはない。今も剣の素振り、魔法の訓練、模擬戦を真面目にこなしている。
「氷坂殿の戦闘センスは、目を見張るものがありますな。魔法の使い所はもちろんの事、剣術も達者でいらっしゃる。」
団長のゲイブは、声高らかに褒める。
「こんなもので、褒められては困る。外の世界がどのようなものか知る由もないが、騎士団の屈強な兵士を見れば、大方の予想はできる。」
「氷坂殿は手厳しいですな。だが、その現実を理解できる洞察力はさすがです。おっしゃる通り、外の世界は考えるより遥かに厳しいですな。だから、氷坂殿は安心して、見ていられますな。」
ゲイブは豪快に笑っている。
-大聖堂・廊下-
大聖堂での謁見を終え、自室に戻ってきた氷坂。召喚されてから3週間が過ぎようとしていた。
「氷坂くん、、、」
霧島が氷坂を待っていた。
「どうした?もう食事の時間だが、、、」
霧島は少し下を向いたまま、黙っている。
「ここでは話にくい事なのか?」
彼女は静かに頷いてた。
「分かった。君の部屋に行こう。」
-霧島自室-
「で、話とはなんだ?」
「あのね。最近、みんなおかしくない?」
「またその話か、、、」
氷坂は、ため息を落とす。
「いいか、霧島。みんなを疑う暇があったら、訓練をするんだ。私たちは世界を救うために召喚されたんだ。」
「どうして、それが正しいの?私には分からないよ。まだ外の世界を何も見てないじゃない。」
「困っている人がいたら、助ける。それが人として、当たり前の事じゃないか。霧島こそ、なぜこの世界の人々を助ける事に戸惑いを感じるんだ?」
霧島は、もう何を信じていいか分からなくなっていた。4人の中で、一番知的で理性があると感じていた彼でさえ、この現状に疑問を持っていない。
「分かりました。ありがとうございます。」
(どうしちゃったのよ。なんで、あの枢機卿とかいう人の言葉を全部信じられるの?私には分からないよ。)
喉まで出かかった言葉を圧し潰すように、下を向いてる間に彼は部屋を出ていった。
-氷坂自室-
「氷坂様、今からはどのようなご予定でしょうか?」
修道着姿の女性が氷坂のマントを脱がせながら、会話している。
「マリー、二人の時は、凍と呼んでくれ。」
「ごめんなさい、凍。どうも外での癖が抜けないのよ。それに、貴方に不遜な態度を取ったと知られたら、私は、、、」
氷坂はマリーの腕に包まれる。
「心配しないで、マリーは僕が守るから。何も心配いらない。」
氷坂は、マリーに母のような優しさを感じていた。
「でも時々、不安になるんだ。この世界に来て、僕には何もないんじゃないかって、、、残された家族の事も心配だし、、、」
そこに思慮を巡らせていた氷坂はいなかった。
「心配でしょう。私の事を母と思って、甘えてくれてもいいのよ。」
「ありがとう。」
彼はマリーの胸に抱かれ、安心を感じたまま、眠りについた。
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