疑心暗鬼の種
翌日から、それぞれの能力の確認が始まる。
この世界に鑑定などという便利なスキルはない。
唯一それに類似するスキルは悠弥が所持している。
剣崎優は、剣術や体術に適性があった。
火車轟は魔術師、特に火を使う魔法の効果は絶大であった。
氷坂凍も魔術師だった。水の魔術が特に認められる。
そして、この世界では珍しい氷の魔法もその効果は絶大だ。
そして、霧島希愛は以上のどれでもなかった。
剣士でも魔術の適性もなかった彼女だったが、その適性は”慈愛”という特殊なものだった。
”慈愛”適性とは、簡単に言うと治癒の力である。だが、根本的に違う部分があり、治癒魔法は対象の治癒力や生命力を活性化させ、回復を促す効果があるが、慈愛の力は行使する者の生命力を相手に与え、回復させる。
これは聖女と呼ばれる部類の超越した者が行使できる力だ。
「勇者殿、一月後にモンスター討伐へと赴き、この世界の現状を確認していただき、自身の成長へと繋げていただきたい。」
勇者と枢機卿セイルは、大聖堂にいた。
「まだ何かやんのかよ?もういいだろ?俺の火魔法で全部解決してやるよ。」
火車は相変わらずだ。
「轟、まずは自分たちの成長が先だ。神様からのスキルがあっても、まだ使いこなせていないだろう?」
「ちっ、面倒臭ぇな。」
剣崎が宥めるも、彼は悪態ばかりだ。
「では、貴殿らにこの国で最高の装備を用意させてもらった。どうか今しばらく我慢していただきたい。」
兵士数十人が、彼らの装備を運んでくる。
「へぇ、この宝石は本物かよ。」
4人は装備を見て、驚いていた。
「剣崎殿、貴殿は勇者の中で唯一の剣士である。その剣は我がブレインに伝わる聖剣ファーブニルである。その剣を持って、世界の邪悪をうち滅ぼしていただきたい。」
「ありがとうございます。必ず世界の平和を取り戻して見せます。」
剣崎が膝をつき、応えている。
何かがおかしい。
その異変に気付いたのは、霧島希愛だった。
(どうしたの、みんな。この一週間で何があったの?)
優は傅き、轟は暴れる事はなくなった。
「希愛、どうした?」
彼女の違和感に気付いた氷坂が耳元で囁く。
「氷坂くんは、二人が変なの気付いてないの?」
「言われるまで気付かなかった。確かに彼らに変化が見られるな。」
氷坂が眼鏡を直す。
「そうだよ。火車くんなんて、あんなに暴れてたのに、どうしちゃったんだろう。」
「彼も自分の役割に気付いたんだろう。俺たちには世界を救うという大事な役割がある。4人で頑張ろうじゃないか。」
氷坂のその態度に、霧島は驚きを隠せなかった。
この4人の中で氷坂は比較的論理的に物事を考えていると感じていた霧島は、氷坂が感情論だけで語る姿は気持ち悪かったのだ。
「では、これからも自身の成長に励んでいただけるよう最大限の支援を惜しみません。よろしくお願いします。」
セイルは、何か含みがある笑みを浮かべた。
大聖堂を出ると、特に何もなかったように4人は分かれ、各自の部屋に戻っていった。
(絶対に何かおかしいよ。変だよ、、、)
霧島は皆の様子に恐怖を覚えつつも、解決策もないまま部屋に戻るしかなかった。
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