28 無拍子
修行を始めて、3ヶ月が経過していた。
(この野郎!!)
影の突きを刀でいなすと同時に、斬りかかるが、影もそれを躱す。
そして、またいつもの位置に戻り、二人はにらみ合いを続ける。
「ここまでですな。」
その合図で今日も修行が終わる。
「大したものですな。この3ヶ月で反撃できるようにまでなるとは思いませんでしたぞ。」
「どっかの爺さんが、厳しいおかげでな。」
「いやはや、良いジジイもいるものですなぁ。この調子で修業を続けましょうぞ。」
ザクジの満足な顔が腹立たしいが、自分でも少し成長したと感じている。
確かに厳しい試練だが、魔道具の効果なのかギリギリで耐えれている。
そして、勇者召喚が実施される3か月前、
以前より心が揺れる場面が少なくなった。目の前に切先があろうとも思考が滞ることはなくなった気がする。
「長い付き合いだっただな。」
目の前にいる影がなぜか戦友のような感じを受けた。
影が動いた。
その切先は
速く、
鋭く、
静かに俺の首元を狙う。
「ありがとう。」
俺は刀を振り下ろした。
-シィィィィン-
高く乾いた音だけが、その場に響く。
影は左肩から真っ二つに割れた。
「悠弥殿、とうとうやりましたな。まさか一年程度で、この領域まで到達するとは、、、」
「出来過ぎだな。」
「何を言います。これはもはや天稟でしょうな。悠弥殿にはその才能があったのでしょう。もうスキルを使われては、私も勝てないでしょうな。」
「まだソウザの領域には辿り着けてない気もするけどな。」
「1年前までは、お伝えするか迷ったのですが、今なら良いでしょう。」
「それは楽しみだ。」
「ソウザとの戦いの内容を聞いた時、ソウザが使っていた技は、”無拍子”だと考えられますな。」
「無拍子?」
HUD:無拍子/相手の意図、タイミングをずらす事。
「これは剣術や体術において、一つの到達点ですな。生物は、何かの動作には必ず予備動作や予兆があるものです。その瞬間は、一瞬の隙になるのです。ソウザも至天級です。その域に達していても不思議ではないですな。」
HUDの説明では、分からない事だらけだな。
「では、悠弥殿。私と一本やりましょうか。」
このスパルタジジイ。ついさっき、修行が終わったばっかりだぞ。少しは休ませろ。
ザクジは、気持ち浮かれているようにも見える。
が、向き合った瞬間、その雰囲気は微塵も感じられる事はなかった。
「では、いきますぞ。」
今回は短剣か、、、いや、こっちが本職か。やっぱり忍っぽいな。
と考えた瞬間、ザクジが動いた。
-キン-
ザクジの攻撃を刀で受ける。
「最初から首を狙ってくるなんて、少々、厳しくはありませんかね、し・しょ・う!」
俺は蹴りを繰り出したが、躱される。
「よいですぞ。よく見えておられる。だが、次はどうですかな。」
ザクジが景色に消えた。
なんだ、そのスキルは、、、
-キン-
今度は足かよ。
俺は刀で短剣を止め、そのままザクジの手首を取り、投げ飛ばす。
「これは驚きですな。まさかこの技も見破られるとは、それどころか投げ飛ばされるとは、、、いやはや、やはり悠弥殿には、驚かされますな。」
楽しそうだな。
「何を楽しそうに。こっちの反撃も軽くいなしてるくせに。」
「何を言いますか。手加減をしてくださっていたのは、分かっております。でなければ、一合目の蹴りで私は戦闘不能になっていたでしょうな。」
「ほんとにクソジジイだな。」
「はっはっはっ、誉め言葉として、受け取っておきます。」
「誉めてねぇよ。」
こうして、俺たちは勇者召喚を待つだけとなった。
友好国への交渉は、すべてコウショウに任せている。彼なら、うまくやってくれているだろう。
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