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【連載】異世界における特異点  作者: とぐさ
第一章 今より少しマシな未来へ
28/47

28 無拍子

 修行を始めて、3ヶ月が経過していた。


(この野郎!!)


 影の突きを刀でいなすと同時に、斬りかかるが、影もそれを躱す。


 そして、またいつもの位置に戻り、二人はにらみ合いを続ける。


「ここまでですな。」


 その合図で今日も修行が終わる。


「大したものですな。この3ヶ月で反撃できるようにまでなるとは思いませんでしたぞ。」


「どっかの爺さんが、厳しいおかげでな。」


「いやはや、良いジジイもいるものですなぁ。この調子で修業を続けましょうぞ。」


 ザクジの満足な顔が腹立たしいが、自分でも少し成長したと感じている。

 確かに厳しい試練だが、魔道具の効果なのかギリギリで耐えれている。


 そして、勇者召喚が実施される3か月前、


 以前より心が揺れる場面が少なくなった。目の前に切先があろうとも思考が滞ることはなくなった気がする。


「長い付き合いだっただな。」


 目の前にいる影がなぜか戦友のような感じを受けた。


 影が動いた。


 その切先は


 速く、


 鋭く、


 静かに俺の首元を狙う。


「ありがとう。」


 俺は刀を振り下ろした。


-シィィィィン-


 高く乾いた音だけが、その場に響く。


 影は左肩から真っ二つに割れた。


「悠弥殿、とうとうやりましたな。まさか一年程度で、この領域まで到達するとは、、、」


「出来過ぎだな。」


「何を言います。これはもはや天稟でしょうな。悠弥殿にはその才能があったのでしょう。もうスキルを使われては、私も勝てないでしょうな。」


「まだソウザの領域には辿り着けてない気もするけどな。」


「1年前までは、お伝えするか迷ったのですが、今なら良いでしょう。」


「それは楽しみだ。」


「ソウザとの戦いの内容を聞いた時、ソウザが使っていた技は、”無拍子”だと考えられますな。」


「無拍子?」


 HUD:無拍子/相手の意図、タイミングをずらす事。


「これは剣術や体術において、一つの到達点ですな。生物は、何かの動作には必ず予備動作や予兆があるものです。その瞬間は、一瞬の隙になるのです。ソウザも至天級です。その域に達していても不思議ではないですな。」


 HUDの説明では、分からない事だらけだな。


「では、悠弥殿。私と一本やりましょうか。」


 このスパルタジジイ。ついさっき、修行が終わったばっかりだぞ。少しは休ませろ。


 ザクジは、気持ち浮かれているようにも見える。

 が、向き合った瞬間、その雰囲気は微塵も感じられる事はなかった。


「では、いきますぞ。」


 今回は短剣か、、、いや、こっちが本職か。やっぱり忍っぽいな。


 と考えた瞬間、ザクジが動いた。


-キン-


 ザクジの攻撃を刀で受ける。


「最初から首を狙ってくるなんて、少々、厳しくはありませんかね、し・しょ・う!」


 俺は蹴りを繰り出したが、躱される。


「よいですぞ。よく見えておられる。だが、次はどうですかな。」


 ザクジが景色に消えた。


 なんだ、そのスキルは、、、


-キン-


 今度は足かよ。


 俺は刀で短剣を止め、そのままザクジの手首を取り、投げ飛ばす。


「これは驚きですな。まさかこの技も見破られるとは、それどころか投げ飛ばされるとは、、、いやはや、やはり悠弥殿には、驚かされますな。」


 楽しそうだな。


「何を楽しそうに。こっちの反撃も軽くいなしてるくせに。」


「何を言いますか。手加減をしてくださっていたのは、分かっております。でなければ、一合目の蹴りで私は戦闘不能になっていたでしょうな。」


「ほんとにクソジジイだな。」


「はっはっはっ、誉め言葉として、受け取っておきます。」


「誉めてねぇよ。」


 こうして、俺たちは勇者召喚を待つだけとなった。

 友好国への交渉は、すべてコウショウに任せている。彼なら、うまくやってくれているだろう。

読んでいただきありがとうございます。


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