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【連載】異世界における特異点  作者: とぐさ
第一章 今より少しマシな未来へ
24/47

24 龍騎傭兵団

 朝、二人で部屋を出ると、食堂にはシイカとサラがいた。


「おはよう、みんな。」


「・・・」


 シイカは、頬を膨らませ、怒っている。

 サラは怒っているようには見えないが、いつもより口数は少ない。


「おはようございます。」


 オリビアの挨拶で、シイカが口を開いた。


「殿下、昨日はどこで寝ましたか?」


「えっ、、、」


 オリビアは言葉に詰まる。


「あれほど、抜け駆けは無しだと、約束したではありませんか?」


「シイカ、えっと、、、」


 こんな朝っぱらからするような話ではない。


「悠弥!」


「お、おう。」


 そりゃ、俺も言われるわな。


「私と何か月も旅をして、何もなかったのに、帰ってきて早々に、殿下と関係を持つとはどういう事だろうか?」


「いや、オリビアは、あれだ、正妻だしな。」


「では、次は私という事でいいんだな?」


 おっと、こういう話題は苦手かと思っていたんだが、シイカも意識するところはあったのか。

 それは、俺が悪い。悪いのか?


「そうだな。今夜は、シイカと一緒に寝るか。」


「えっ、あっ、は、、、はい。」


 自分が何を言っていたのか気付いたようだ。


「では、私はその次でよろしくてよ?」


 サラ、ややこしくなる。しかもお前は付いてきただけで、婚約も何もない。


「なぜです?前にも言いましたが、我ら魔族は、強き者に魅かれ、求めるのですわ。これは自然な事だと思いませんか?私は、悠弥に惹かれていますから、何も問題ありませんわよ。」


 野生動物か。


「お前の場合、まず魔王に聞かないとダメだろ。」


「まぁ、無駄な事だと思いますけど。」



 翌日、魔王に連絡をする。


「はっはっはっ、そうか。サラの事は、貴公に任せておる。好きにしてよい。他の伴侶同様に扱ってくれ。」


 何とも軽い感じだった。自国のお姫様だろう。


 こうして、3人の妻との話し合いの結果、ローテーションで俺と過ごす事が決定された。

 ただし、未来に起こる勇者召喚をきっかけとする事件が落ち着くまで、子供は作らない方向で約束させた。


 それから3ヶ月、俺たちは戦乙女隊と共に森でモンスターを狩りつつ、各国の情報を集めた。



「悠弥!大変だ。」


 執務室で各国の情報を確認していると、シイカが慌てて入ってきた。


「フォルク家がこちらに兵を向けている。」


 その情報はオリビアの諜報部隊が掴んでいた。

 3か月前のパーティから、フォルク家が私兵団を招集していた事は分かっていた。

 傭兵団に依頼を出し、全ての準備が整うのは2か月~3か月だろうと踏んでいた。

 こちらも迎撃のために準備は怠っていない。


「やっぱり来たか。貴族ってのは、どうも面倒だな。」


「今の速度だと、到着予定は2週間後だと思う。どうする?」


 シイカがテーブルに地図を広げる。


「来るならやるだけだ。戦力はどうなってる?」


「フォルク家は私兵団が300、傭兵団が50だ。こちらは、戦乙女60と悠弥だ。」


「感覚で言うと、その戦力だと、俺一人で十分だな。」


「私もそう思う。情報では、陛下は何度も止めるように意向を出したのだが、フォルク家はそれを無視したらしい。」


 おいおい、国王の意向を無視って、どんだけ傲慢なんだよ。


「気になる情報は、傭兵団だ。悠弥はこの世界の事をあまり知らないだろう。奴らは”龍騎傭兵団”だ。依頼料は高額になるが、どの傭兵も一騎当千と言われている。その中でもソウザは、至天級のヒューマンだ。」


 シイカの話だと、至天級は、戦士に送られる称号のようなもので、最上位らしい。

 国家が至天級を保持している場合は、最高戦力と言っても過言ではない。

 シイカは、至聖級らしく、至天、至聖、至帝、至王があり、前者ほど強い。


「悠弥はすでに人類の域を超えている可能性があるから、どうなるか分からない。」


 俺を人外みたいに言うな。チートスキルのせいで、少しは自覚はある。


「だとすると、私兵団は戦乙女を当てて、傭兵団は俺とシイカが対処するか。」


「それがいいと思う。戦乙女も至王級に近い者たちも出てきている。悠弥が用意してくれた武器と防具、森での訓練のおかげだな。」


 迎撃地点は、拠点から少し離れた平原とした。戦乙女の戦力にもよるが、今の彼女たちなら十分対応できるとのことだ。



 2週間後、俺たちは平原で向き合う。どうやら、他の貴族も合流しており、その規模は2000まで増えていた。

 

 プレハブ指令室に偵察隊が来た。


「悠弥、フォルク家から使者が来ました。」


「分かった。対応する。」


 指令室の中を見せるわけにはいかないので、俺とシイカは外に出た。


「フォルク軍司令トーマス・フォルク様より、通達である。」


 これでもかと尊大な態度で馬に乗る兵士が叫ぶ。


「セルザイン王国無知の森の不法占拠、王国への叛意、国王陛下ならびに王女殿下への脅迫等の罪により、主犯・悠弥を国家反逆罪とする。抵抗の意思なく、投降する場合、減刑も考慮する。返答を求める。」


 この世界のルールに疎い俺は、対応をシイカにお願いしている。


「私はシイカ・ベントである。戦乙女軍指揮官だ。」


 シイカとみて、伝令の男が汚くニヤつく。


「こちらに叛意はない。国王陛下より許可も頂いている。そちらの要望はすべて無効な訴えである。よって、従う事は出来ない。」


 シイカがかっこいい。


「ほう、この戦力差で一戦交えると?」


「それもやむを得ないと考えている。」


 男は、シイカの体をイヤらしい目付きで嘗める。


「これは個人的な提案だが、貴殿が我が妻となるなら、悪いようにはしない。」


 そりゃ、うちのシイカは綺麗だ。分かるけども、ちょっとおイタが過ぎないか。


「き、貴様、何をこのような時に!即刻、この場から立ち去れ!」


 この戦力差だ。負けることなど考えてもいないだろう。

 シイカが怒るのも無理はない。


「返答、承った。では、残りの時間を楽しまれよ。」


 男は去っていった。


「なんと無礼な輩なのだ。これではフォルク軍も底が知れる。」


「シイカ、すまない。嫌な思いをさせたな。」


「いや、あの程度の事、日常茶飯事だ。気にすることはない。」


 シイカの頭をポンポンと撫でる。

 彼女は照れながら、全軍の前に立つ。


「戦乙女よ!日ごろの訓練の成果を見せる時が来た!戦力差は一目瞭然だが、誰も我々の勝利を考えているものなどいないだろう!だが、それはもう過去の話となる!見せよ、戦乙女の誇りと信念を!!」


 空気が震えるほどの鬨の声が響く。


 その数分後、相手陣営でも声が上がり、大量の矢が飛んできた。


「シールド展開!」


 シイカの声と共に、魔法防壁が展開し、矢を弾く。


「まだ魔法は使って来ないのか?」


「魔法は本来、戦場では切り札のようなものだ。そう連発できるものでもない。」


 作戦会議で魔法について教えてもらった事は、最初に弓兵の応戦、次に歩兵と騎馬の接近戦。

 随時、戦況を読みながらの魔法戦で、決着を決めるということだ。

 俺のように、魔法を連続で使用できる者は非常に少ない。だが、戦乙女は訓練で詠唱魔法を練習し、魔力の消費を固定したことにより、専属の魔法部隊を編成しなくとも、それと同様の効果をもたらす存在になった。


「相手は怯んでいる!戦乙女ヴァルキリー突撃チャージ!」


 戦乙女が一斉に前進する。彼女たちの装備するブーツには、速度増加と疲労軽減が付与してある。疲労無効化を試みたが、人体の性質上、無効化は出来なかった。

 騎馬よりも速く進む戦乙女に、混乱するフォルク軍。矢を打つ頃には、元の場所にいないため、指揮系統が機能していなかった。


「悠弥!右翼より傭兵が来る!戦乙女の右翼後方は、右側の傭兵どもに魔法を浴びせてやれ!」


 シイカはよくやってくれている。


「「「風刃カッター!」」」


 真空の刃が傭兵たちに襲い掛かる。傭兵団を切り裂くように魔法は命中したが、まだ戦意を失っていない。


「シイカ!俺が行く!」


「危険だ!私も行く!」


「お前は、ここをもたせてくれ。」


 俺は右翼に飛び出し、傭兵団の前に出る。


 俺は地面に手を当てる。


 "地盤崩壊クエイク"


 地鳴りと共に、広範囲の地面が崩壊していく。予想もしない現象に奴らは体勢を崩し、地面に叩きつけられる者、体勢を何とか保ち、無事な者もいたが、足止めには成功した。


「面白い魔法を使うな。」


 先頭の男が剣を抜いた。助かった何名かも武器を取る。


「ソウザ、ここは私たちに任せて。」


 双剣の獣人族の女が前に出た。その周りに様々な武器を持った傭兵が集まる。


「いいのか?俺の相手していると、本隊が敗けるぞ?」


「そうでしょうか?私たちがいなくとも、この戦力差では貴方たちのほうが無謀だと思いますよ。」


 さすが傭兵か。場数が違うな。いくら戦乙女たちが強いと言っても、それはあくまで人類の中での話だ。個人で戦場をひっくり返せるほどの能力は無い。

 傭兵どもにここを突破されて、援軍に向かわれると、少々都合が悪いか。


「ご忠告どうも。今回の戦いは、戦乙女の実力を知るためのいい機会だと思っていたんだが、あんたらをどうにかしないとか、、、」


 俺は刀を抜いた。

 6対1か、、、少々不安もあるが、この馬鹿どもが起こした騒動は早々に解決したい。


「でやぁ!」


 思考を巡らせていると、斧の男が襲ってきた。剣筋が直線的過ぎて、少し戸惑ったが、それを躱すと奴の後ろから双剣の女が姿を現す。


「せぃ!」


 女の連撃をいなしながら、横目で周囲の様子を窺う。杖の獣人女が魔法を準備しているようだった。

 どんなイメージをしているか分からないが、炎が頭上に集まっている。味方ごと焼くつもりか?

 すぐさま、俺は杖の女に詰める。


「えっ!?」


 遅い。俺は獣人女を蹴り飛ばす。杖女は後ずさりし、腹部を押さえ、しゃがみ込む。

 そんなに強く蹴った覚えはないんだけどな。


「セツナ!」


 双剣女が俺を追いかける。セツナの近くにいた大剣男が横薙ぎ一閃、俺を襲うが、難なく躱し、大剣男の横っ面を殴りつけた。


「つぅぅぅっ。」


 男は盛大に吹き飛んだ。


「メンゲル!」


 双剣女は俺のスピードに翻弄されている。俺はそのまま槍男に向かい、


「この野郎!」


 突いてくる槍を斬り、奴の後頭部を掴み、地面に叩きつけた。

 ”ゴンッ”と鈍い音を立て、槍男は動かなくなった。


「貴様!」


 双剣女が飛び上がり、斬りかかってくる。


「どっせい!!」


 斧男も同時に襲い掛かる。


 が、どれもそれほどのスピードでは無かった。斧男との距離を詰め、奴の柄を掴み、斧を振り回すと、奴は耐えきれず、斧から手を離し、飛んで行った。


「ぐわっ。」


 斧男は体が大きい分、地面に叩きつけられた時に自重に耐え切れなかったようだ。

 双剣女は、着地と同時に地面すれすれを滑るように向かってきた。


「よくも!」


 その剣で俺の首を狩りに来る。


「遅い。」


 俺は刀で、双剣を弾き飛ばし、女の腕を取り、地面に制した。


「情けのつもりですか!」


「そんなつもりはないが、こんな詰まらん争いで、命を落としてもくだらねぇって思ってるだけだ。」


 女は悔しそうに俯いている。危険察知が反応した。


-ガキーーンッ-


 防いだ刀が重さを感じた。


 何かが飛んできた。魔法じゃない。


 向こうで長剣を持ったソウザと呼ばれた男が、剣を振りぬいたような姿勢でこちらを見ている。


「これを見切るのか。貴様、どこでその力を身につけた?」


「えらくご挨拶だな。こっちは、女性とデート中だってのに、横から入ってくる男は嫌われるぞ。」


「ふん、このような戦いで負けるような戦士など、この龍騎にはいらぬ。」


 ソウザは、少しずつ距離を詰めてくる。

 俺に掴まれている女の腕が震えている。


「随分な言い様だな。仲間だろ。さっきの攻撃も仲間ごとやろうしただろ?」


「ソウザ!私ごと斬れ!!」


 女が叫ぶ。


「心配するな。元よりそのつもりだ!!」


 速い!


 今まで見たどれよりも速い。


 ソウザは一気に距離を詰め、上段から振り下ろす。


「お前!」


 剣筋には女がいるが、お構いなしだ。

 俺は彼女の手を離し、やつの剣をいなしながら、横に身をかわす。女はその隙にその場を離れた。


「これで邪魔は入らんか。クレハ、手は出すな。久しぶりの強者だ。俺がやる。」


 決闘がお望みか。戦況も気になるが、今はこのソウザという男をどうにかする事が先決か。


「そっちの兵は戦闘不能なんだがな。素直に退いてはくれないか。」


「なぜ退く必要がある?龍騎は、まだ俺がいる。さぁ、命を燃やそうではないか。」


 奴は長剣を俺に向けた。


「ごちゃごちゃうるせぇなぁ。後悔すんなよ!」


 俺は、ソウザとの距離を一気に詰め、奴の右側から刀を振りぬいた。


「!?」


 反応できていない。これで終わりだな。

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