23 結婚発表
「お帰りなさいませ。」
拠点に戻ると、戦乙女隊が迎えてくれた。
「現在、王女殿下とシイカ様は王都でパーティのため、屋敷で生活しております。」
王族の娘は大変だな。
「悠弥!」
サラが抱き着く。
「サラ、元気してたか?」
「あなたがいなくて、ずっと寂しい夜を過ごしていたわ。」
「悪かったな。今から、王都に飛ぶけど、一緒に行くか?」
「あら、私が参加してもよろしいのですか?」
「別にセルザインは、魔王国と敵対しているわけじゃない。行っても問題ないだろうさ。」
「なら、行くわ。」
休憩もそこそこに、俺たちは王都の屋敷に飛ぶ。
-王都セルズ・屋敷-
俺が自室で考え事をしていると、オリビアとシイカが部屋に来た。
「悠弥、お帰りなさい。」
「悠弥、おかえり。」
二人とも元気な様子だ。4人でソファに座り、情報の交換を済ませる。
オリビアの暗部が調査した結果、現時点で怪しい国は、西側のブレイン聖国とその北西に位置するラナ王国。ラナ王国は、初めて聞いたが、昔からブレインとは属国のような関係があるらしい。ヒシム教を国教とはしていないものの、ヒューマン至上主義である。
魔法石の産出国で、ブレインへの輸出がここ数年、増加傾向にあり、ブレインの国家状況と照らし合わせても消費量の計算が合わないみたいだ。
魔法石を貯蔵すること自体は珍しい事ではないみたいだが、かなり高価であるため、過剰在庫を持つ国は、産出国以外はありえないらしい。そこから推測できる事は、大規模魔法に使用するためなのだとか。
「あと、懸念点は、王国にもブレイン聖国と個人的に懇意にしている貴族が複数確認できました。ブレインは、かなり排他的な性格をしているので、王国貴族と付き合いがある事自体が珍しいので、今も私の暗部で監視しています。」
「それは王国に戦争を仕掛けるという意味か?」
「いえ、まだ決まっていませんが、前回と同様であるなら、魔王国に仕掛ける場合に、王国の動きを抑えるためかもしれません。」
「軍事力の問題か。」
「そうです。魔王国と我が王国以外は、召喚者が1人か2人いれば、それほど難しくありません。召喚者はそれほどの力を秘めているのです。」
「イブリスでもそれは警戒しているわ。ブレインには先の大戦で煮え湯を飲まされていますから、この300年はずっと監視していますの。最近、その兆候が出始めているので、父も悩んでいましたわ。」
そこに現れたのが俺だったわけか。自国の姫を預けるほど悩んでいたわけだ。俺はどの勢力にも加担しないと決めているが、自分の手の届く範囲にいる仲間の勢力を見捨てるほど、ドライにもなり切れない。
最初は、乗り気でなかった女性関係にしても、オリビアやシイカ、サラは真っすぐに好意を向けてくれる。それが嬉しくないわけがない。そういう部分を狸爺たちに看破されたんだろうが、それは仕方ない事だと思った。
「当面は、ブレイン聖国とラナ王国への監視か。」
「そうですね。あと悠弥が違和感があったと言うエルフたちですね。元々、何を考えているか分からない種族ではあるので、詳細は分かりませんが、ヒューマンの悠弥に対して、好意的だった事が私も気になります。暗部で監視させます。」
「オリビア、頼んだ。」
「では、次の話です。悠弥、明日からのパーティに一緒に出てください。」
俺は困った顔をしていただろう。
「出ないとダメか?」
「それはもちろんです。男性のエスコートがない女性は、会場で浮いてしまいます。とても寂しい思いをしているのですよ。未だに私を口説こうとする貴族もいます。」
「まだ信用されてないって事か。」
「そうです。だから、今回のパーティで、大々的に公表すると、お父様はおっしゃっていました。」
「なら、行かないとダメか。」
「サラも、このパーティに参加してください。魔王陛下も出席されているので、喜んでくれると思います。」
「分かりました。明日からのパーティには、私も出席いたしますわ。」
サラは、ドレスを選びますわと言って、出て行ってしまった。
「シイカも、明日は私の護衛としてではなく、悠弥の妻とて、出席してください。悠弥がいれば、護衛は必要ないですから。」
-王城内-
俺たち4人は、パーティ会場で貴族たちの挨拶を受けながら、食事を楽しんでいた。
「本日は、王国交流パーティに参加いただき、誠にありがとうございます。国王より皆様への挨拶ならびに発表がございます。」
司会が階段辺りで声をあげた。
拍手と共に、バルフェルトが姿を現す。
「皆の者、私はセルザイン王国国王バルフェルトだ。此度は、パーティへの出席、感謝する。」
凛々しく演説を始めた。
「そして、我が娘オルリベイラの結婚を発表する。」
会場から拍手が沸き起こった。
「相手は、王国の国賓である悠弥殿である。皆で祝福してほしい。」
さらに拍手は大きくなった。それから、オリビアの王位継承権が破棄された事、王女としての公務は続ける事も伝えられ、パーティは順調に進んでいるかのうように見えた。
「悠弥よ、王女殿下との結婚を破棄し、この国から出て行ってもらおう。」
案の定、絡まれた。彼は、セルザイン王国の金鷹級貴族フォルク家当主トーマスだ。
「それは、あなたが決めていいことなのか?」
「貴様、私は金鷹貴族だぞ!そのような口を聞いて、良いと思っているのか?」
「じゃぁ、聞くが、俺は虹色なんたらって立場なんだが、形式上は俺のが上だと思ったんだが?」
「そんな名誉階級で、私に逆らうなど許されんぞ!」
最初から怒りマックスだな。そして、バカなのか。俺とオリビアが結婚を破棄した場合、オリビアは正式に王女に戻るため、結婚相手は、政治で決まるようになる事に気付いているのか?今のオリビアが特別なだけで、元に戻ってもチャンスは無いと思う。
「では、俺からも言わせてもらうが、優しくしている内に引いた方がいい。短気なほうじゃないが、何でも許せるほど、お人好しでもないんでね。」
「貴様、どうなっても知らんぞ!」
むしろ、危ないのは、そっちだと思うんだが、、、
「トーマス様、この度は、パーティにお越しいただき、ありがとうございます。」
オリビアが来た。
「これは、王女殿下。今宵もその美しさは、随一ですな。」
「ありがとうございます。ところで、私の夫が何か失礼を?」
「この男は、私に楯突いたのです。殿下にはもっと相応しい男性がいるという私のアドバイスを無下にしたのです。」
「それはご忠告ありがとうございます。ですが、私には、悠弥ほどの男性を知りません。もし、ご存じでしたら、ご紹介いただきたいです。」
「なんと!?このような貴族の礼儀も知らぬ男以上の男性など、この会場を見廻しただけで、幾人もいるではありませんか?」
男は、声高らかに、大げさな素振りを見せる。
「そうですか。それでは皆様は、自分の立場がどうなろうと、王族が悪しき政策を取った場合は、意見できる方々なのですね。」
「な、、、そ、それはもちろんでございます。」
「では、我が兄ケイルが横暴な振舞いを続けていた時、なぜ誰も止めていただけなかったのでしょうか?」
先程まで注目していた貴族どもが視線を逸らす。
「そ、それは、、、」
俺は、自分のやりたいようにやっていただけだ。貴族がどうとか、悪政がどうとか考えていない。
「己の地位を守る事しか考えられない者に、悠弥を非難する資格などありません。」
会場は静かになり、オリビアは一礼する。
「し、しかし、殿下!」
「まだ何か?」
オリビアの冷たい視線がトーマスに刺さる。
「くっ、、、いえ、、、」
トーマスは何も言えなくなり、引き下がったが、俺を睨みつけている。
「悠弥、行きましょう。」
オリビアは、俺の腕を取り、バルコニーに出た。
「主賓がこんな所にいていいのか?」
「良いのです。主要なお客様には、挨拶を済ませています。」
「そうか。」
「悠弥、もう少し貴族の振舞いを覚えてください。」
俺への説教が始まった。
「善処する。」
「それはやらないと言っているようなものです。私は心配なのですよ。もう、、、」
「俺は、召喚者でさ。この世界の事は、まだ何も分かってない。貴族だとか平民とかってのもイマイチ分からない。」
オリビアは静かに聞いてくれている。
「この力だって、自分で身に着けたものじゃない、、、でも、この力が手に入った時に思ったんだ。この人生は、自分の思った通りに生きようって。前世みたいに人の顔色ばかりを見て、生きるような事はやめようって思ったんだ。」
「それでは敵を作る事のほうが多いです。」
「そうだな。でも、今はオリビアがいてくれるだろ?」
「そんなの運任せも良いところです。」
「そうかもしれん。あの時、オリビアが友達になろうって言ってくれた時、嬉しかったんだぜ。」
「そ、、、それは、、、あの時は、あなたとの繋がりを切るわけにはいかなかったから、考えて出た結果です。」
オリビアは、赤くなった。
「それでもだよ。前世は散々だったからな。森で好き勝手に生きて、最後は誰にも知られずに、静かに死のうって考えてた。」
「そんな、、、」
「そういうもんなんだよ。」
「きゃっ」
俺はオリビアを抱き寄せた。
「な、、、何ですか、、、」
彼女は、下を向いている。
「もう一人で死ねなくなった。」
「あ、あたりま、、、んっ、、、」
オリビアの唇をふさいだ。
――――――――――彼女の唇は、温かく、優しかった。
-王都・屋敷-
俺の寝室にオリビアが入ってきた。
「悠弥、今日、一緒に寝ていい?」
俺の返事を聞くまでもなく、彼女は俺のベッドに入ってくる。
「これで私たちは、正式に夫婦になれたのですね?」
俺は、彼女を抱きしめる。
「そうだな。今まで待たせて、すまなかった。」
これまで王都からは、伝玉で何度もパーティ参加の打診があったが、それよりも先に済ませなければならない事案があったため、そちらを優先していた。
最初は、俺との縁を繋ぐための政略的な結婚だと思っていたが、バルフェルトの思惑とは裏腹に、彼女はまるで恋する乙女のようだった。
彼女は、俺のやる事には必ず傍にいようとする。
常に腕を組もうとする。
色々と文句は言うが、最後は許してくれる。
こんなに器量よしの女性は、前世を振り返ってもいなかった。
政治のために、俺に押し付けられた彼女を最初は哀れに思っていたが、数か月を共に暮らす内に、その考えも変わっていった。
何事にも一生懸命な彼女に、俺は惹かれていた。
「最初は嫌われていると思っていました。政治的意味合いの強いこの結婚に、あなたは嫌悪感を抱いていると、、、」
「そうだな。」
「私もこれはお父様の政治的判断だ、とすぐに気付きました。でも、一緒にいる時間はまだ少ないですが、あなたが私たちを大事に思ってくれている事は分かります。」
彼女は、俺の胸に顔をうずめた。
「大事に思ってるよ。もうお前たちのいない生活は無理だ。これからも家族として、一緒にいよう。」
俺は、彼女の額に軽くキスをして、彼女と見つめ合い、口づけを交わした。
「愛しています。あなたを愛しています。」
俺たちは、お互いの気持ちを再度確認するように、愛し合った。
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