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【連載】異世界における特異点  作者: とぐさ
第一章 今より少しマシな未来へ
22/47

22 カンセス自治区

 カンセス自治区。

 エルフ、ドワーフ、ロギアマキナの3種族3地区に分かれている。

 特に決めたわけではないが、自然と種族同士で集まり、今の町を形成し始めた。


 各種族ともに共通しているのは、ヒューマン種に差別や迫害を受けていたこと。

 特にエルフは、他の種族と違い、魔力が強いこと以外に強みが無かったため、その度合は酷いものだった。

 ドワーフとロギアマキナは、鉱石や武器、防具などの生産品が有用だったため、比較的緩いものだった。


 各国の自治区に対する思想は、以下の通りである。

 セルザイン王国は、保護を目的とした交渉による平和的合併を目指している。公国もこれを支持している。

 ただし、他国からは、領土拡大を目的とした侵略だと揶揄されているため、積極的な行動に出れない状況ではある。


 イブリス魔王国は、一切の興味を示さない。


 ブレイン聖国は、国教が一神教のため、宗教観の違いから、自治を認めていない。

 正確には、自国の宗教しか認めていないため、ほぼすべての国と関係が良くない。


 今回、オリビアとシイカは、拠点か屋敷で待機してもらっている。

 ヒューマン種が少ないこの地域で、ヒューマンが集団を組んでいると、目立つため、不要なトラブルを避けるためだ。



-カンセス自治区・エルフの町-


「珍しいね。こんな町にどうしたんだい?」

「ご飯、食べてくかい?」


 町を歩いていると、人々に話しかけられる。


「あんた、こんな町に何しに来た?」


 若い男に話しかけられた。


「俺は、エルフのロジン。この町の代表をしている。」


「悠弥だ。ヒューマンで、旅人だ。」


 握手する。


「悠弥は、この町に観光か?」


「あぁ、色んな世界を見ようと思ってな。」


「何もない町だが、ゆっくりしていってくれ。」


 そう言うと、ロジンは去っていった。代表が町をブラブラか。たぶん、様子見だろうな。

 俺は、宿を取り、部屋に入った。


(特に変わった様子もない町。ヒューマンからの弾圧や差別があったという割りに、ヒューマンを嫌悪するような感じもない。そんなに浅い因縁なのか、、、)


 少し嫌な予感がした俺は早々に町を出た。



-カンセス自治区・ドワーフの町-


 ドワーフ種は、俺の認識とズレる事はなく、採掘と鍛冶の町だった。


「おぉ、坊主、珍しいな。」


 いかにもな男が近づいてくる。


「この町に武器でも探しに来たのかい?おっと、俺はダジムだ。町で鍛冶屋をやっておる。」


「悠弥だ。この町は、活気があるな。」


「そりゃそうだ。ここは鉱山があり、それを扱うドワーフがおる。世界中から、武器や防具を求めて、商人が来るんじゃよ。だが、おぬしは見た所、商人には見えん。そういう客は珍しいからな。」


「そうなのか。じゃぁ、ヒューマンとはある程度、交易があるんだな。」


「お得意さんじゃな。悠弥も何か探しに来たのか?」


「俺は、色々な世界を見てみたくてね。各国を渡り歩いている。」


「では、この町に来たら、酒じゃな。ドワーフは、酒に目がないからな。」


 やっぱりか。俺はあまり酒が好きじゃない。でも、何かの役に立たないかと思って、酒は数種類製造している。


「なら、珍しい酒があるんだけど、どうする?」


「どんな酒じゃ?」


「ここで出すと、騒ぎになりそうだから、どっか店に入ろうか?」


 俺たちは、個室のある店に入った。


「これは、何という酒じゃ、、、」


「これはウィスキーだ。」


「おぬしの故郷の酒か?」


「そうだ。」


「よし、買った。いくらだ?」


「別に金はいいよ。楽しく飲もうぜ。」


「今日は、いい日じゃ。このような酒に出会えるとは!」


 ダジムは、手放しで喜んでいる。


「悠弥は、ヒューマンにしては、変わっているのぉ。」


「そうか?他のヒューマンは、同じじゃないのか?」


「悠弥は知らんのか。昔からヒューマンなんてのは、自分たちの種族以外は軽蔑してるからのぉ。エルフなんてのは、ヒューマンとさほど変わらんのに、迫害はひどいもんじゃった。今もエルフ地区には、ヒューマンが入ると、軽蔑の的じゃ。」


「じゃぁ、エルフ地区は、行かないほうがいいな。」


「やめとけ、やめとけ。そもそも奴らは、同じ自治区のワシらでさえ、避けておる。」


「ドワーフは、違うのか?」


「ワシらは、酒とそれを笑い合う仲間がいれば、それで良い。そんな奴がおらんわけじゃないが、いいモンは邪な心じゃ打てんからな。忘れてはならんが、引きずってはおらんよ。」


「豪快なんだな。」


「はっはっはっ、みんなバカなんじゃよ。好きなもんに一生懸命なだけじゃ。」


 そう言って、彼は笑う。気持ちいい種族だ。


 こうして、ドワーフの町で一夜を明かした。



-カンセス自治区・ロギアマキナの町-


 ロギアマキナ(以下、マキナ)。

 HUDの説明では、どういう仕組みで動いているのか分からない機械仕掛けの”種族”らしい。

 

 なぜ種族と定義しているのか?


 肉体は明らかにヒューマン種と異なる見た目をしているのに、”意思疎通”が可能だからだ。

 お互いで意思疎通を行い、自分たちで考え行動している。


 生物として定義するには、不足している要素はあるが、文化的な生活を営んでいる。


「どうも、こんにちわ。ファクターリアの町へようこそ。」


 町に入るとすぐに、ロギアマキナに声を掛けられた。


「そうですか、旅の方なのですね。どうぞ、お楽しみください。」


 町を見ると、宿屋、食堂など、彼らには必要が無さそうな施設が並んでいる。


「旅の方、クレイボアの串焼きはいかがですか?おいしいですよ。」


 屋台では、香辛料の匂いを辺りにばら撒く料理が売られている。

 何とも不思議な町だ。


 宿屋に入り、併設の食堂では、様々な料理が提供される。

 俺が、料理を楽しんでいると、一人のマキナが話しかけてくる。


「やぁ、旅人さん。俺はロギアマキナのジークだ。どうだい、俺たちの町は?」


「あぁ、悠弥だ。飯もうまい。宿もそこそこだ。良い町だな。」


「そうだろう、そうだろう。俺たちは、もてなす事が好きなんだ。そうやって、俺たち以外の種族が喜んでくれるのが、嬉しい。」


「そいつはありがたいね。」


「よし、俺が町を案内してあげるよ!」


 陽気なやつだ。


「ここは、細工屋だ。ドワーフから鉱物を仕入れて、アクセサリーとかを売ってる。で、こっちが、、、」


 ジークに案内され、町を一通り歩いた。キリのいいところで、宿屋に引き上げる。


 この違和感は何だ?町の住人にずっと監視されているような感覚だ。特に何かをされるわけでもない。町に入ってから、ずっと視られている感じがする。


 ヒューマンが珍しい?いや、多くはないが、マキナ以外の種族は存在する。

 何か警戒されるような振舞いがあったか?この町に来て、散策しているだけだ。それが逆に疑念を抱かせた?


 考えれば考えるほど、全てに疑いが生じる。ダメだ、、、一旦、冷静になろう。


 翌日、町を何気なく散策しながら、周りの様子を伺う。


 何をしてくるわけでもない。ただ、遠巻きに何かを視ている感じはする。


「逃げろ!」


 遠くから、声が聞こえる。俺の気配察知にはまだ反応はない。


「何があった?」


 向こうから逃げてくるマキナを捕まえた。


鉄喰メタルイーターが出ました。至急退避してください。」


 HUD:メタルイーターは、主に金属を主食とするモンスター。体は非常に強固であり、

    並みの攻撃では、傷を付けることも難しい


 現場に到着すると、すでに犠牲者が出ていた。


「おい、あんた!こんな所にいたら、あいつに殺されるぞ。」


 逃げるヒューマンの男は言う。

 向こうで4足歩行の金属の塊が暴れていた。見た目は、ロボットに見える。

 俺は刀を握り、メタルイーターに斬りかかった。


-キンッ-


 と鋭い音をあげ、足が落ちる。


 奴が俺を見た。赤い目が光る。俺を敵と認識したみたいだ。胴体部分から伸びる2本の腕を、交互に振り回し、俺に攻撃してくるが、それほどのスピードでもないため、軽く躱し、胴体を斬りつけた。


-ガタンッ-


 大きな音と共に、真っ二つに割れた。やつはそれ以上動かなかった。


「早く非難してください!」


 どうやら、まだ数体いるみたいだ。切断面を見たが、中身は配線やら、何かの装置やらで詰まっている。俺の気配察知に引っかからないのは、こいつが生物じゃないからか。


 そんな考察をしている間にも、避難を呼びかける声がする。


「強くはないが、気配察知に引っかからないのは、やっかいだな。」


 俺は、声のする場所まで走り、メタルイーターを数体、切り崩した。


 町は静かになり、マキナたちは何事もなかったかのように、平然としている。


「悠弥、強かったんだな。助かったよ。あいつら、たまに降りてきて、町をめちゃくちゃにしやがる。今回は、悠弥がいてくれて、助かったよ。」


 ジークだ。


「旅人だからな。一人でここまで来たんだ。それなりにやれるよ。」


 引っかかる。メタルイーターなどの脅威が存在しているのに、町に防衛機能が存在しない。そんな事あるのか?


「ジーク、あいつらが来た時は、いつもどうしてたんだ?」


「あぁ、それなら、戦女神隊セクメトがいつもは来てくれるんだけど、今日はどうしたんだろうか。」


 そりゃいるよな。だからこそ、なぜ今回いなかったのかは、疑問が残る。


「あいつらは、頻繁にやってくるのか?」


「いや、一回来ると、しばらくは来ない。」


「そうか。俺はそろそろ旅に出ようと思う。」


「そうなのか。また俺たちの町に来てくれよな。悠弥なら、いつでも歓迎だ。」


「ありがとう。そう言ってくれるとありがたい。」


 俺たちは握手を交わし、町を出た。

 これで主要な地域には訪れることができた。

 あとは、2年後に召喚される勇者を迎え撃つ準備だ。

読んでいただきありがとうございます。


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