22 カンセス自治区
カンセス自治区。
エルフ、ドワーフ、ロギアマキナの3種族3地区に分かれている。
特に決めたわけではないが、自然と種族同士で集まり、今の町を形成し始めた。
各種族ともに共通しているのは、ヒューマン種に差別や迫害を受けていたこと。
特にエルフは、他の種族と違い、魔力が強いこと以外に強みが無かったため、その度合は酷いものだった。
ドワーフとロギアマキナは、鉱石や武器、防具などの生産品が有用だったため、比較的緩いものだった。
各国の自治区に対する思想は、以下の通りである。
セルザイン王国は、保護を目的とした交渉による平和的合併を目指している。公国もこれを支持している。
ただし、他国からは、領土拡大を目的とした侵略だと揶揄されているため、積極的な行動に出れない状況ではある。
イブリス魔王国は、一切の興味を示さない。
ブレイン聖国は、国教が一神教のため、宗教観の違いから、自治を認めていない。
正確には、自国の宗教しか認めていないため、ほぼすべての国と関係が良くない。
今回、オリビアとシイカは、拠点か屋敷で待機してもらっている。
ヒューマン種が少ないこの地域で、ヒューマンが集団を組んでいると、目立つため、不要なトラブルを避けるためだ。
-カンセス自治区・エルフの町-
「珍しいね。こんな町にどうしたんだい?」
「ご飯、食べてくかい?」
町を歩いていると、人々に話しかけられる。
「あんた、こんな町に何しに来た?」
若い男に話しかけられた。
「俺は、エルフのロジン。この町の代表をしている。」
「悠弥だ。ヒューマンで、旅人だ。」
握手する。
「悠弥は、この町に観光か?」
「あぁ、色んな世界を見ようと思ってな。」
「何もない町だが、ゆっくりしていってくれ。」
そう言うと、ロジンは去っていった。代表が町をブラブラか。たぶん、様子見だろうな。
俺は、宿を取り、部屋に入った。
(特に変わった様子もない町。ヒューマンからの弾圧や差別があったという割りに、ヒューマンを嫌悪するような感じもない。そんなに浅い因縁なのか、、、)
少し嫌な予感がした俺は早々に町を出た。
-カンセス自治区・ドワーフの町-
ドワーフ種は、俺の認識とズレる事はなく、採掘と鍛冶の町だった。
「おぉ、坊主、珍しいな。」
いかにもな男が近づいてくる。
「この町に武器でも探しに来たのかい?おっと、俺はダジムだ。町で鍛冶屋をやっておる。」
「悠弥だ。この町は、活気があるな。」
「そりゃそうだ。ここは鉱山があり、それを扱うドワーフがおる。世界中から、武器や防具を求めて、商人が来るんじゃよ。だが、おぬしは見た所、商人には見えん。そういう客は珍しいからな。」
「そうなのか。じゃぁ、ヒューマンとはある程度、交易があるんだな。」
「お得意さんじゃな。悠弥も何か探しに来たのか?」
「俺は、色々な世界を見てみたくてね。各国を渡り歩いている。」
「では、この町に来たら、酒じゃな。ドワーフは、酒に目がないからな。」
やっぱりか。俺はあまり酒が好きじゃない。でも、何かの役に立たないかと思って、酒は数種類製造している。
「なら、珍しい酒があるんだけど、どうする?」
「どんな酒じゃ?」
「ここで出すと、騒ぎになりそうだから、どっか店に入ろうか?」
俺たちは、個室のある店に入った。
「これは、何という酒じゃ、、、」
「これはウィスキーだ。」
「おぬしの故郷の酒か?」
「そうだ。」
「よし、買った。いくらだ?」
「別に金はいいよ。楽しく飲もうぜ。」
「今日は、いい日じゃ。このような酒に出会えるとは!」
ダジムは、手放しで喜んでいる。
「悠弥は、ヒューマンにしては、変わっているのぉ。」
「そうか?他のヒューマンは、同じじゃないのか?」
「悠弥は知らんのか。昔からヒューマンなんてのは、自分たちの種族以外は軽蔑してるからのぉ。エルフなんてのは、ヒューマンとさほど変わらんのに、迫害はひどいもんじゃった。今もエルフ地区には、ヒューマンが入ると、軽蔑の的じゃ。」
「じゃぁ、エルフ地区は、行かないほうがいいな。」
「やめとけ、やめとけ。そもそも奴らは、同じ自治区のワシらでさえ、避けておる。」
「ドワーフは、違うのか?」
「ワシらは、酒とそれを笑い合う仲間がいれば、それで良い。そんな奴がおらんわけじゃないが、いいモンは邪な心じゃ打てんからな。忘れてはならんが、引きずってはおらんよ。」
「豪快なんだな。」
「はっはっはっ、みんなバカなんじゃよ。好きなもんに一生懸命なだけじゃ。」
そう言って、彼は笑う。気持ちいい種族だ。
こうして、ドワーフの町で一夜を明かした。
-カンセス自治区・ロギアマキナの町-
ロギアマキナ(以下、マキナ)。
HUDの説明では、どういう仕組みで動いているのか分からない機械仕掛けの”種族”らしい。
なぜ種族と定義しているのか?
肉体は明らかにヒューマン種と異なる見た目をしているのに、”意思疎通”が可能だからだ。
お互いで意思疎通を行い、自分たちで考え行動している。
生物として定義するには、不足している要素はあるが、文化的な生活を営んでいる。
「どうも、こんにちわ。ファクターリアの町へようこそ。」
町に入るとすぐに、ロギアマキナに声を掛けられた。
「そうですか、旅の方なのですね。どうぞ、お楽しみください。」
町を見ると、宿屋、食堂など、彼らには必要が無さそうな施設が並んでいる。
「旅の方、クレイボアの串焼きはいかがですか?おいしいですよ。」
屋台では、香辛料の匂いを辺りにばら撒く料理が売られている。
何とも不思議な町だ。
宿屋に入り、併設の食堂では、様々な料理が提供される。
俺が、料理を楽しんでいると、一人のマキナが話しかけてくる。
「やぁ、旅人さん。俺はロギアマキナのジークだ。どうだい、俺たちの町は?」
「あぁ、悠弥だ。飯もうまい。宿もそこそこだ。良い町だな。」
「そうだろう、そうだろう。俺たちは、もてなす事が好きなんだ。そうやって、俺たち以外の種族が喜んでくれるのが、嬉しい。」
「そいつはありがたいね。」
「よし、俺が町を案内してあげるよ!」
陽気なやつだ。
「ここは、細工屋だ。ドワーフから鉱物を仕入れて、アクセサリーとかを売ってる。で、こっちが、、、」
ジークに案内され、町を一通り歩いた。キリのいいところで、宿屋に引き上げる。
この違和感は何だ?町の住人にずっと監視されているような感覚だ。特に何かをされるわけでもない。町に入ってから、ずっと視られている感じがする。
ヒューマンが珍しい?いや、多くはないが、マキナ以外の種族は存在する。
何か警戒されるような振舞いがあったか?この町に来て、散策しているだけだ。それが逆に疑念を抱かせた?
考えれば考えるほど、全てに疑いが生じる。ダメだ、、、一旦、冷静になろう。
翌日、町を何気なく散策しながら、周りの様子を伺う。
何をしてくるわけでもない。ただ、遠巻きに何かを視ている感じはする。
「逃げろ!」
遠くから、声が聞こえる。俺の気配察知にはまだ反応はない。
「何があった?」
向こうから逃げてくるマキナを捕まえた。
「鉄喰が出ました。至急退避してください。」
HUD:メタルイーターは、主に金属を主食とするモンスター。体は非常に強固であり、
並みの攻撃では、傷を付けることも難しい
現場に到着すると、すでに犠牲者が出ていた。
「おい、あんた!こんな所にいたら、あいつに殺されるぞ。」
逃げるヒューマンの男は言う。
向こうで4足歩行の金属の塊が暴れていた。見た目は、ロボットに見える。
俺は刀を握り、メタルイーターに斬りかかった。
-キンッ-
と鋭い音をあげ、足が落ちる。
奴が俺を見た。赤い目が光る。俺を敵と認識したみたいだ。胴体部分から伸びる2本の腕を、交互に振り回し、俺に攻撃してくるが、それほどのスピードでもないため、軽く躱し、胴体を斬りつけた。
-ガタンッ-
大きな音と共に、真っ二つに割れた。やつはそれ以上動かなかった。
「早く非難してください!」
どうやら、まだ数体いるみたいだ。切断面を見たが、中身は配線やら、何かの装置やらで詰まっている。俺の気配察知に引っかからないのは、こいつが生物じゃないからか。
そんな考察をしている間にも、避難を呼びかける声がする。
「強くはないが、気配察知に引っかからないのは、やっかいだな。」
俺は、声のする場所まで走り、メタルイーターを数体、切り崩した。
町は静かになり、マキナたちは何事もなかったかのように、平然としている。
「悠弥、強かったんだな。助かったよ。あいつら、たまに降りてきて、町をめちゃくちゃにしやがる。今回は、悠弥がいてくれて、助かったよ。」
ジークだ。
「旅人だからな。一人でここまで来たんだ。それなりにやれるよ。」
引っかかる。メタルイーターなどの脅威が存在しているのに、町に防衛機能が存在しない。そんな事あるのか?
「ジーク、あいつらが来た時は、いつもどうしてたんだ?」
「あぁ、それなら、戦女神隊がいつもは来てくれるんだけど、今日はどうしたんだろうか。」
そりゃいるよな。だからこそ、なぜ今回いなかったのかは、疑問が残る。
「あいつらは、頻繁にやってくるのか?」
「いや、一回来ると、しばらくは来ない。」
「そうか。俺はそろそろ旅に出ようと思う。」
「そうなのか。また俺たちの町に来てくれよな。悠弥なら、いつでも歓迎だ。」
「ありがとう。そう言ってくれるとありがたい。」
俺たちは握手を交わし、町を出た。
これで主要な地域には訪れることができた。
あとは、2年後に召喚される勇者を迎え撃つ準備だ。
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