20 魔王ガンダル
「話を聞こうか。」
魔王を上座に、俺たちは座る。さっきまでの魔王とは、少し雰囲気が違う。
「勇者について、どう思う?」
周囲がざわつく。
「召喚者か。300年前、やつらには好き勝手やられた。先代は、今の我より強かったのだが、その召喚者にあっさりと負けてしまった。あれは、この世界にあってはならん存在だ。」
相当嫌われてるな。
「その召喚者が、あと数年で現れると言ったら?」
「そのような事が、、、?だが、なぜ貴公がそれを知っている?」
「あんたは召喚者を嫌っているようだから、信用を前提で話す。俺は、あんたの嫌いな召喚者だ。」
「悠弥!なぜそれを!!」
シイカは慌てる。魔王の側近たちが、武器に手を掛ける。
「やめよ。貴様たちが武器を抜いたところで、あやつに捻られるのがオチよ。我とて、できるなら、今すぐにでも、悠弥の首を撥ねてしまいたい。」
「ならば!」
「やめよと言うておる。魔王の間で起こった事は、我の油断でも慢心でもなく、実力差だ。我には見えなかったのだ。悠弥がその気になれば、この国など、簡単に滅ぼせるであろう。のぉ、悠弥?」
その問いに俺は応えなかった。
「で、我らにどうせよと?」
「えらく素直じゃないか。」
「ここは魔王国。強い者が全てだ。我は、貴公に従うほかあるまいて。」
正直に話して正解だった。
「俺たちと協力体制を取ってもらいたい。」
「セルザイン王国とか?元々、交易はしておるぞ。」
「国同士じゃない。魔王と俺とでだ。」
「それは何故じゃ?」
「人払いを頼めるか?」
魔王は、側近たちに手振りをする。
「しかし、、、」
「よい。そろそろ貴様たちも認めよ。」
「かしこまりました。」
「じゃぁ、見せるぞ。」
俺はゲートを開いた。
「これは何じゃ?」
「ゲートというスキルだ。俺しか使えないが、ある地点とある地点を繋ぐことができる。」
魔王は言葉を失っている。
「さすが魔王だ。これが理解できたみたいだな。」
「さすがの我も、100年は寿命が縮んだわ。本当に、貴公しか使えないのだな?」
「あぁ、俺の認識ではそうだ。このスキルを使った疑いのある暗殺とかも聞かないからな。」
「今、貴公を追い出さなくて良かったと、心から思っておる。」
「仲良くなれそうだな。」
「仲良くするしかあるまいて。ちなみに、これはどれほどの輸送が可能か?」
「制限は大きさだけだ。馬車くらいが限界だ。騎乗竜まで大きいと、無理だな。」
「それでも、、、」
「あぁ、それでもだな。だが、これを戦争に使うことはない。さっきも言ったが、俺とあんたとで協力体制を持ちたい。俺はセルザイン王国の国民でも、臣下でもないからな。」
「では、その女は、なぜ付いてきておる?」
「シイカか。俺の妻だ。」
「それは、セルザイン王国と繋がってると同じではないのか?」
「俺も交渉事は、得意な方じゃないからな。狸爺が一枚上手だっただけだ。」
「私はお荷物なのか?」
「そんなことないよ。もう何日も同じ生活圏にいるんだ。嫌だったら、とっくに追い出してるさ。」
魔王は咳払いを1つ。
「すまん。このゲートは、性能上、行った場所にしか開くことはできない。だから、魔王国に来た。」
「なぜ、そんな回りくどいやり方をする。貴公なら、このスキルと強さを武器に、脅迫でもすれば、良かろう?」
「嫌いなんだよ。今、この世界を戦乱に落としたいやつがいる。このままだと、世界は戦禍に見舞われる。それが気に食わない。戦乱は起きる。だが、クソみたいな未来を、ほんの少しマシな未来に変える事はできる。俺は、そういう存在らしい。」
「分かった。貴公に協力する。」
「そんなに簡単に決めちまっていいのか?」
「貴公は、嘘を言っていない。魔力に淀みがない。それが一番の信頼だ。もし、それを隠せるだけの技量を持ち合わせているなら、我らは既に、この世におらんだろう。」
「そいつはどうも。これを渡しておく。」
俺は、伝玉を渡す。
「これは?」
「遠くにいても、魔力さえ流せば、連絡が取れる魔道具だ。ここに来る時には、そいつで連絡する。」
「本当に、後悔しないで済みそうだ。」
「喜んでもらえて、良かったよ。じゃぁ、俺たちはこれで戻る。」
「悠弥よ、これでは、我々だけにメリットが大きすぎる。我らに、これに値する魔道具などないが、せめて、受け取ってくれ。」
魔王が、「サリスフィア!サリスフィア!」手を2回叩いた。
「負け犬お父様、お呼びでしょうか?」
「ぐっ、サラよ。お前は、悠弥と共に行き、彼を支えよ。」
「はい。かしこまりました。」
はっ?またか。
「ちょっと待ってくれ、別にこれは、俺が勝手にやってることで、対価を求めてるわけじゃない。」
「あら、悠弥と言ったかしら、私は強い男が好き。そして、あなたは強い。これ以上に何か理由が必要かしら?」
サラは、妖艶に迫ってくる。
「いや、、、ちょ、、、」
「悠弥!」
シイカが割って入る。
「サラ殿、彼には既に、殿下と私がいる。ここは遠慮願いたい。」
「なぜ?2人も妻がいるなら、私で3人になっても同じでしょ?それとも、あなたは、私に負けるのが怖い?そうよね~、剣を持っているところを見ると、脱いだら、筋肉カチカチで、私のような体じゃないでしょうから。」
「なっ、私だって、体には自信がある!あっ、悠弥、、、今のは忘れてほしい。」
シイカは、赤面して、黙ってしまった。
「悠弥よ、娘もこう言っておる。まずは、一緒にいてくれるだけで構わん。どうか娘をよろしく頼んだぞ。」
まじか、、、
「ふふふ、悠弥、絶対にあなたを虜にするわ。」
シイカは怒っている。俺の脳裏によぎるのは、オリビアの説教だった。気が重い。
「じゃぁ、俺たちは帰るから、何かあったら、連絡をくれ。」
俺たちは、拠点へ戻った。
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